騎士団員おいしい。 | ナノ


▼ 9 団長に要求された

この男にとって、交接は愛し合う者がする行為なのだという。
人間の言うことはよく分からない。
悪魔の俺には、セックス=快楽を伴う食事だからだ。

「……だからあんたは、俺としたくなかったのか? ベリアス。じゃあどうしたら俺のこと、愛してくれるんだ?」

ベッドの上で、俺の上に裸で覆いかぶさる男に問う。
金の瞳だけが揺れる騎士の無表情が崩れ、ぐっと顔を迫らせてきた。

「ルニア。お前は俺とヤりたいから、俺に愛してほしいのか」
「? そうだよ。初めてした時からずっと、あんたが欲しかったんだ……」

腕を掴み、ねだるように腰をすりつける。
浅黒い肌に十分な肉厚をもつムキムキの体躯、早く互いに汗をまとわせて、混じり合いたい。

ベリアスは溜息を吐き、憐れみを含んだ目を向けた。

「それしか頭にないのか? お前は順序がめちゃくちゃなんだよ。……いや、悪魔に文句を言ったところで、馬鹿げてるか。何故俺はこんな奴をーー」
「なにぶつぶつ言ってんだよ? 俺としたくないの? なぁ早くっ」
「……俺はお前のように邪気のない魔族を、見たことがないと言ってるんだ」

今度は俺を貶し始めた。
邪気がないだと? 悪魔として、最大の侮辱だ!
精一杯睨みつけていると、頬を大きな手で覆われた。

「そんな顔するな。いくらお前が阿呆でも、分かり合えなくても、俺はお前を手放す気はない」

全くもって理解に苦しむ。
抱くつもりがないなら、なぜ俺を手元に置く必要がある?
難解な男だ。付き合っていられない。

「じゃあ早くきて。今日はしてくれるって、あんたが言ったんだろ?」

広い背中に腕を回し、腰に足を絡め、抱きついた。
吸いつくような肌から滲む、野性的なフェロモンをくんくん吸い込む。

ああ、こいつの匂い好き……

目元を潤ませ、ちょろっと舌を出して下唇を軽く舐める。
淫魔の本領発揮とばかりに、誘惑の腰つきをする。
これで堕ちない男など、いるはずがないのだ!

ベリアスは俺の顎をぐっと掴んだ。
同時に唇をうばわれる。

「んっんぅぅ」

触れたとこが熱く痺れ、だらんと力が抜ける。
されるがままに口内を舐め取られ、わずかな息つぎのあと、すぐにまた塞がれた。

何度も何度も繰り返す。
俺の中も外も、トロトロになってしまった。

「……はぁ、はぁ……なんで……一日一回、だけだろ?」

ぼうっとした頭を整理しようと、息を切らし、どうでもいい事を尋ねた。
ベリアスもわずかに呼吸を荒げて、鋭い目つきで俺を見る。

「精気を与えるためじゃない。お前を抱くからだ、ルニア」

そう言ってまた、熱烈なキスを施した。

この男の言うセックスの仕方は、俺の想像とまるで違った。
他の人間のように、性急さを表さない。
こんなに大きく俺を包み込むような体躯で、見る者を圧倒し期待させる逸物をチラつかせながら、俺を焦らし続けたのだ。

「んあぁ、もう、やだぁ、それ、いいからッ」

熱く執拗な舌が、ずうっと俺の体を這い回っている。
男の短い金髪を両手で押さえ、ぐしゃぐしゃと動きを止めようとする。

首や肩、鎖骨に口を吸いつかせ、そのまま乳首をもてあそばれる。
俺は無限地獄に耐えていた。

「へえ、お前でも嫌なことがあるのか」

ベリアスが体を起こし、にやりと笑い見下ろしてきた。
俺のチンポは先走りのせいですでにベタベタだ。
それを一生懸命、男の硬い腹筋に、擦りつけようとする。

「何してんだお前。勝手なことをするな」
「あんたが、触ってくれないから、だろっ」

ああ、もう、イク……!!

叫びながら腰を揺らすと、体を離され、チンポの根本をぎゅっと握られた。

「んあぁぁッ、なに、やめろぉっっ」
「まだいくな。今こっちをしてやるから」

達する寸前だったものが、ひりつく痛みと共に快感を堰き止められる。
この騎士は、鬼畜だったのか?
普段なら喜ぶ状況のはずが、ベリアスと一緒にいると、欲求を我慢できない。

「入れ……て、お願い、早く、あんたの……」

涙をじわりと見せながら懇願すると、ベリアスが体を反転させてきた。
やっとブチ込んで、犯してくれるのか。
心から安堵した時、両脇を抱えて持ち上げられた。

ベッドに座るベリアスの上に、後ろ向きで跨がる。
腰をがっしりと掴まれ、膝立ちになった。

「なあ、なんでお前のここは、もうぐちょぐちょしてんだ?」
「あ、ああっ、気持ち、いいっ」
「まだ指しか入れてねえぞ」

太い指で中をほじくり回される。
無造作に見せて、いい所を探るようにぎゅうぎゅう押してくる。

「あ、んぁあ、もう入れて、前も触って、イキたい!」
「どっちかにしろよ、ルニア」

耳たぶをかぷりと噛まれる。
痛気持ちいい感覚に悲鳴をあげると、指が引き抜かれた。
尻に奴のモノが充てがわれたと同時に、いきなり最奥を貫かれる。

「あああぁぁぁんッッ」

さっきまでの焦らしが嘘のように、下からガンガン突き上げてくる。
太く、大きい、男の肉体と同じく逞し過ぎるそれは、俺の心を奪ったあの日よりももっと、奥深くを狙い定め、俺のすべてを犯し尽くす。

俺はベリアスの胸板に背中をくっつけているしかなかった。

「だめ、はぁ、んぁ、あんたのチンポ、すごい、あぁッ」
「おい。勝手に自分のを触るな」

中の肉棒を感じながら前を弄っていた俺の手を、後ろから掴み上げる。
どうして? いちいち禁止してくるんだ?

「あ、あっ、やだぁ! さわ、りたいっ、触って!」
「駄目だ。我慢しろ」

何度お願いしても突き立てられ揺り動かされる。

「あ、あぁ、ベリアス、もういく、イッちゃう! んあぁ、ああぁぁぁっっ!」

びゅるびゅるッ

尻だけの刺激で、先端から勢いよく白い液が飛び出てしまった。

「あぁぁ……」

ベリアスは俺の腹についた精液を手のひらで拭った。
触ってくれたーー
うっとりと感動していると、俺の口に突っ込んできた。
やはりこの騎士は、鬼畜な面が入っている。

夢中になる俺に指をしゃぶらせたまま、イッたばかりの尻もぐちゅぐちゅと運動を再開した。

「ん、ふっ、……んぅ、む、……ンンッ、んーッ!!」

口を責められながらの突き上げ。大好きだ。
するとベリアスも信じられないことに、同じ言葉を告げてきた。

「ルニア。俺はお前に指を舐められるのが、好きみたいだ」

珍しく甘やかな声音に、耳元がぞくぞくと止まらない。
その囁きだけで達してしまいそうだった。

「おい、出すぞ」

やがて告げられた言葉は、今度は無骨な男そのものだった。
俺は下から揺さぶられ喘ぎながら、「出して、出してえ……!」としか懇願できなかった。

「……くッ」

短く漏れたベリアスの声とともに、長い間待ちわびた精気が、俺の全身に染み渡る。

一度食べたら忘れる事のできない、心技体を兼ね備えた、濃厚かつ甘美な味わい。
ああ、これはもう、唯一無二と言っていいほどの存在ーー

半開きの口を、後ろにぐいっと向けられ、力強いキスをされる。

「んぅ、ふ……ぁ……ベリアス……」

そのまま俺たちは何度も交わり続けた。

兄上に勝るとも劣らない、技巧。モノのデカさと耐久力。
なんといっても、俺のことを焦れったく扱いながらも、我が物顔でふるまう絶倫具合。

「ああっ、また、イク、だめッ、やだぁぁっっ!!」
「何が嫌なんだ、お前が毎日毎日ヤりたいって言ったんだろ?」

言葉責めを受けながら、何回も出され、何回も射精した。
俺は快楽と満腹感のせいで、ヘトヘトだった。

「んぁぁ……もう、あんたので、お腹いっぱい……」
「それは良かったな。けど俺はまだ満足してねえぞ」

こいつは人間じゃないのかもしれない。実は魔人だと言われても納得できる。
こんなことは、地上に来て初めてのことだった。

果てた体をベリアスの胸に預け、がっちりと抱きかかえられる。
ああ、気持ちがいい。
一度この男の味を知ってしまえば、もう戻ることなど出来ない。



「ルニア。なんでお前は、毎回俺の淫紋をいとも簡単に破るんだ?」
「……え?」

ベッドに寝そべり天井を見つめる騎士に、ぴたりとくっついていた。

「お前の体、呪印か何かが施されてるんだろ?」

鋭い。
さすがは魔術を扱える剣士だ。
正確には主に性的な意味で、俺を縛りつける魔印だが。

「よく分かったな。そうだよ。小さい頃に入れられたんだ」
「誰に?」
「家族だ」
「そうか。ガキに対して惨いことをするな。……そいつがお前の、本当の所有者なのか?」

ぎくりとする。
でも何故だかこの男に嘘はつけない。
男漁りに関する嘘ならば、いくらでもついてみせるのに。

「そんな様なもの……かもな」

所有者というのは正しい。
俺は兄上なしには存在できない。
柄にもなく神妙に考える俺の前で、ベリアスが鼻で笑う声が聞こえた。

「お前は本当に素直な悪魔だな。自分の弱点をあっさり認めるとは」
「……あ? どういう意味だよ。あんた、ムカつくぞ…!」
「怯えるなよ。俺はお前らにとって、ただの人間だろ? 食料に過ぎないはずだ」

なんだ。分かってるのか。
さっきは愛がどうのとか言っていたくせに。
この男だって、性欲が満たされればあんな戯言、言わなくなるんだ。

「でも俺はそんなこと認めねえぞ、ルニア。言っただろ、お前を俺のものにする。いいか、俺以外をお前の中に入れるな」

断言され、命じられた言葉が理解できない。
人間ごときに、ぐるぐると思考が乱される。

「あんた、何言ってんだ……?」
「俺が欲しいんだろ。いくらでもくれてやるよ。毎日でもな。だがそれは、お前が俺との約束を守れたらの話だ」

そんな。
確かに俺は、この男の美味しくて気持ちの良い肉体を、心の底から欲している。
これきりなんて、絶対に耐えられない。

けれど俺には、兄上との約束がある。
色々な男の精気を集め、自分の体を差し出さなければならないのだ。
それはこの男が知れば、さらに逆上して、俺の餌が遠ざかってしまうほどの事実ーー

バレてはならない。
でも、どうすればいいんだ?

「守れよ、ルニア」

ベリアスは優しい口づけをした。
俺はすぐに葛藤など忘れて、その気持ちよさにのめり込む。

淫魔に貞操を守れなどと命じるなんて、この男は人間のくせに、やっぱり正気じゃない。



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