聖騎士の卵 | ナノ


▼ 8 騎士Cの卵

聖騎士四人との交わりを終えた後、俺は父親としてセアム、キリアン、ヘクターの卵をそれぞれ一緒に温めることが許された。

日替わりで部屋を訪れ、騎士たちと代わりばんこに抱卵にいそしむ。
大忙しだが充実した日々を過ごしていた。

何よりベッドの上で騎士が横になって丸まり、お腹に卵を抱えて温めている姿はなんとも微笑ましく、幸せな気分をもたらした。

しかし事件は起こった。
一人目の騎士セアムの卵がそろそろ孵化するという頃合いに、俺は神官によりその瞬間に立ち会うことを禁じられ、離れ離れにされてしまったのである。

それは全騎士たちと俺になされた、残酷な仕打ちだった。
のうのうと大広間に現れた神官を問い詰めると、「神鳥王さま、しばしお待ちを。運命の卵を判別するために預言者の調べが必要なのです」と言い諭された。

俺たちの卵をどうする気だ?

強い憤りから力ずくで抗おうとするも、帯同した魔術師らによって一時的に魔力を封じられてしまった。

この連中、ここまできな臭い奴らだったのか。
今まで欲望の赴くままに聖騎士と交わってきたが、俺は最初からただの種馬としての価値しかなかったのかもしれない。

しかし、もはや運命とかどうでもいい。
俺と騎士にとっては、すでにかけがえのない子なのだーー。

卵の行方に気を揉む中、監禁されている大広間を護衛の騎士が訪れた。
聞けば最後の聖騎士、団長のディルクが出産の兆しだという。

全ての卵を自ら取り上げると決めていた俺は、再び湧き出た希望とともに騎士のもとへと出発した。



部屋の扉を開けると、仏頂面をした黒髪黒目の長身イケメンが立っていた。
広い肩をいからせ、腕組みをして怒っている。

「ディルク、会いたかったぞ。お腹の調子はどうだ?」
「俺もてめえに会いたかったぜ。腹は最悪だ」

憮然と述べた騎士は、すぐに俺を壁際に押し付け、ぎろりと鋭い目を向けてきた。
身ごもっているとは思えない団長の貫禄である。

「おい、どうしてくれるんだ。お前の子を孕んじまったんだが?」
「おめでとう。まあたくさん愛し合ったからな。俺はすげえ嬉しいぞ」

にこりと笑い、騎士の硬い腹筋を愛情込めてさすさすする。
怒りで顔を上気させた騎士を、すかさず熱い口づけで封じ込めた。

「ん……ッ」

途端に騎士の力が抜けるのを感じ、背中を抱きとめる。
この男は威勢はいいが、聖騎士の中で最も敏感な体質なのである。

「なぁディルク。お前は妊娠して腹立たしいかもしれないけど、その子に罪はないだろ? ちゃんと可愛がってやってくれよ」
「ああ? この野郎、もっともらしい事言いやがって……。ふん、当たり前だ。こいつは俺の血を引いてんだ。種馬がおかしな鳥人だろうが、一生面倒は見てやるよ」

苛立ちの中で放たれた言葉にも、確かな責任感がこめられており、その男気に惚れ直しそうになった。

「いい男だな、お前。でももちろん俺も一緒だぞ。その子の父親だし」
「……へえ。だがお前にはすでに三人ガキがいんだろ。そっちに構ってやれよ」

俺は一人で平気だ、と付け足した騎士の物言いはあっさりしていた。
こっちとしては素直じゃない奴だ、と思ってしまう。

俺の手から離れ、居間のソファへどさっと腰を下ろす騎士に寄り添った。

「四人とも大事な子だ。平等に愛すると決めている。騎士たちも含めてな」
「そうかよ。調子のいい野郎だ……」

つれない態度の騎士の首筋にくんくんすると、びくっと体を跳ねさせた。
鋼のように鍛えられた腹筋に手をあて、再び優しく撫でる。

「おいてめえ、何やってんだ、触んじゃねー……」

咎める声とは裏腹に、かすかに息を上げている。
俺はもうちょっと騎士と仲良くしたいのだ。

「この子はどんな子になるんだろうなぁ。楽しみじゃねえ?」
「……さあな。顔はお前に似たほうがいいんじゃないか。綺麗だし」

さらっと言われ目を見張ると、不敵に笑いかけられた。
こいつ、さすが元々俺様タイプの男だ。飴と鞭の使い分けに翻弄されそうになるんだが。

しかし団長の意外性はそれで終わりではなかった。

「スグル」

初めて名を呼ばれドキリとする。
顎を取られ、突然唇にキスをされた。

「俺お前の顔好きなんだよな。……あー、くそ。俺が掘りたかったのに。なんでこうなった?」

呆れたように呟き、首を傾けてまた口づけをしてきた。
ねっとり深いやり方に一瞬ぼうっとしそうになるのを恐れた俺は、すかさず手を下の方に伸ばした。

「おい、調子乗んなよディルク。お前が俺の子を身ごもったんだ。これからもそれは変わらないぞ?」
「くっ、あぁっ」

焦り顔ではぁはぁ息を荒げる騎士を捕まえ、頬や首筋に口を押しつけ、ズボンの上の膨らみを撫でる。

「……てめえ。俺は妊娠してんだぞ。分かってんのか」
「からかっただけだよ。この辺で止めとくか。お前が一番大事だからな」

機嫌を取るように頬を撫で、ちゅっとキスをすると、騎士は挑戦的な顔つきをした。

「別に止めろとは言ってねえだろ。なぁ」

にやりと目を細め、俺の下半身を手でまさぐってくる。
ぐっと肩を抱き寄せ迫ってくる騎士はこの上なく魅力的だが、流石にまずいだろう。

しかし静止も虚しく「ベッドでしようぜ」と誘われてしまい、とりあえず言われるがまま寝室へ向かう。
速攻服を脱いだ騎士は俺にも脱ぐようにいい、仕方なく従った。

騎士が何を考えてるのか知らないが、妊娠中は紳士を貫く俺は、少し触り合って終わるつもりだった。
四人目ということもあり、慣れと加減の仕方がだいたい分かっていたのだ。

「ディルク。お前のここ、全然萎えないな。なんで?」
「分かんねえ……ずっと勃ってやがる」

騎士を半ば強引に寝そべらせた後、勃起した逸物を手に包んだ。
じっくり緩急つけてシゴいてやると、騎士が少しずつうめき出す。

「くっ、う……あッ」

ぴくぴく震える胸筋をもう片方の手で揉みながら、そっと舌を這わせる。
乳首を舐めると予想通り激しく上体をのけぞらせた。

「感じやすいなぁお前、可愛い。ちんぽシゴきながら舐められんの好き?」
「……うる、せー……黙れ変態……っ」

悪態をつかれつつ責め続けていると、騎士はシーツに埋めていた頭を上げ、予期せぬことを言い出した。

「はぁ、はぁ、……スグル」
「ん? なんだ」
「……なぁ、しゃぶってくんねえ?」

動きがぴたりと止まる。
顔を赤く染めた屈強な騎士の「俺のフェラしろ」発言。
最高極まるぞ。

俺は速攻で巨根を口に含み、持てうる限りのテクで騎士を快楽へと誘った。

「っく、あぁ、やべえ、舌気持ちい……っ」
「……っむ、……はっ、……あんま動くな、体に障るだろ」
「誰のせいだよ……ッ、くそ、あぁ、すげえ、……んっ、まて、スグル……っ」

動かないように腰を優しく固定しながら、口の動きを強め吸い上げる。

「ふ……お前の、口ん中でもっと育ってくるなぁ、ディルク」

時々言葉で虐めてやりながらフェラを続けていると、騎士は我慢できなくなったのか、上半身を大きくびくつかせた。

「っあぁ、もう、出すぞッ」

掠れた声で男らしく言い放ち、腰を揺らした後、俺の口内に大量の精を吐き出した。
イッたあとも胸を上下させる騎士の逸物は、しかし全く形を変えず大きいままだった。

「あれ、ディルク……お前まだ全然イケんじゃん、どうした」
「…はぁ、はぁ……あ……? 知らねえよ、なんで……勃起したまんまだ……」

汗ばんだ額を拭い、ぼすっとベッドに体を倒そうとする。
危険に感じ慌てて起き上がった俺が背を抱えると、騎士の顔色が変わった。

「んっあ……ッ」

近くで見つめ合う黒目がとろんとしてきて、呼吸も浅くなる。
腰をもぞもぞし、騎士は窮屈そうに身じろいだ。

まさかーー。

「あ、あぁ、スグル、腹……苦しい」

急に縋るように体にしがみつかれる。
やっぱりそうだ。卵に違いない。

俺はすぐさま騎士の足を開かせ、腰の下にクッションを入れて準備した。
止めろ馬鹿!と恥ずかしそうな声を上げる騎士をなだめ、顔の近くで汗を拭く。

「んっ、あぁ、……くそっ、お前、何したんだ……ッ」
「ごめんな、つらいか? でももうすぐだ、俺の赤ちゃん生んでくれ、頼む」

快感に悶えながら喘いでる騎士に真剣にお願いする。
申し訳無さと愛情を込めて、優しくお腹をさすり続けた。

「ああああっ」

いよいよだ。
間隔がわりと短いことから、順調だと分かる。

「駄目だ、スグル、俺また、イッちまう……ッ、んぁ、ああぁあッッ」

騎士が叫んだその時だった。
膝をついていた俺の近くに、黄金色の卵がすんなりコロッと現れた。

えっ?
マジで早かったんだけど。

俺は心臓の高鳴りを感じながら即座に手を伸ばし、それを両手で掴み上げた。

「すげー! 出たーー! ディルク見ろ、お前安産だ! よくやったぞ!」

最後の卵を迎え、もう大興奮である。
はしゃぎすぎて、すでに息を落ち着かせ俺を見ている騎士に気付かなかった。

「……出たってなんだ……今ので終わりか?」
「そうだよ。ありがとう、ディルク。ほら見ろ、俺達の卵だ」

手に包んだものを差し出すが、騎士はまだ呆然としていた。

「今感動とかあったか……? 俺ただ、恥ずかしい格好で喘いだだけじゃねえか」

それを言われると結構つらい。
冷静に述べた騎士は想像以上に正気だった。

「嬉しくないのかよ? 俺はすげえ幸せだぞ」

不安に思い顔を覗き込むと、騎士は少し眉を下げて困った顔をした。
しかしすぐに俺の頬を手で包み、自分の唇を重ね合わせた。

「……嬉しいに決まってんだろ。ちょっと拍子抜けしただけだ。……そんな顔すんなよ」

ぼそりと呟き、顔を赤らめる。
なんだ、照れてたのか。

「可愛い奴だなぁ、お前。良かった、お前も嬉しくて。一緒に育てような」
「ああ、そう…だな。……つうか可愛いとか言うんじゃねえ、調子のんなっ」

俺の頭をぐしゃぐしゃとかき回し、照れ隠しをしている。
やっぱりこの騎士、認めたがらないけど可愛らしいとこ満載じゃないか。

心の中でこっそり笑みをこぼしながら、二人で卵をそっと撫で、喜びを分かち合った。



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