Otherside | ナノ

▼ 55 愛を感じて ※

シスタは最近素直だ。セックスにおいても従順で、ベルンホーンをよく受け入れている。

とくに出所してからは、二人とも足りなかった気持ちを埋めるように毎晩体を繋げていた。

「んっ、あ、っあぁっ!」

夜、ベッドの上でシスタを後ろから抱えるベルンホーンは、腰を動かす。
跳ねるシスタは中で達すると同時に、ペニスから射精した。

「ん……あ、あ……」

びくびくと尻肉の中まで締められ、全身で感じている最中の青年を悪魔は恍惚と見つめる。

顔を後ろに向かせ、舌を絡ませ味わいつくした。

シスタはその間、抵抗することもなく快感を享受する。
この悪魔の性の奴隷だというのは、間違っていない気がした。でも今は、強く感情が伴っている。

「……ん、ぅうっ…? ま、ま…てっ……まだ、触るな……っ」

射精したあとのペニスはまだ硬く、ベルンホーンの綺麗な指がいじってきた。
くりくりと擦られ我慢できず、シスタは腰をがくんがくんと上に突き出す。

「だっ、め、だっ、んっ、ひ、あ、ぁあぁ、あ」

精液ではない液体が吹き出し、自分の下半身とベルンホーンの太腿まで飛び散っていく。

こんなことは初めてで、濡れたシスタは羞恥で赤く染まり言葉を失った。

「シスタ? あぁ、潮を吹いてしまったか。可愛いぞ」
「や、やめっ、あぁ」

ベルンホーンはかまわず先端を指でこすり、愛撫をくりかえす。 
体は言う事を聞かず、ずっとペニスを弄ばれ刺激に屈してしまった。

「ふふ、出会った当初のお前に比べると、ずいぶんと身体も素直になったな」

青年の顔を見て律動したくなり、シーツに押しつけて大柄な体躯が覆いかぶさる。
シスタは赤らむ目元でぼうっとしており、半開きの口元がよけいに煽情的だった。

「ベルンホーン……ん、ぅ……」

キスをねだられたと思い唇を塞ぐ。
脚の間に入りこみ、腰を重ね合わせようとする。

「さあ、ハメ倒すぞ、シスタ。種付の時間だ」

見惚れるような薄っすらとした笑みを、シスタは複雑な思いで見つめた。
ベルンホーンの胸板に手のひらをぴたりとくっつける。

「お前はその言葉が好きだな……私は男だ。孕むことはない」
「……んっ?」

銀髪の男はきょとんとする。

「孕みたいのか?」
「何故そうなる。馬鹿なのかお前は」

冷たい反応でもシスタは離れがたく、胸に頬を擦り寄せてくる。
背に回った迷いの手つきから、もどかしい思いを感じとった。

「私と結婚しても、お前の子孫は残らないぞ。どうするつもりだ」

さっきまで問題なく甘く抱き合っていたはずが、シスタの気持ちは少しずつ沈んでいく。
体を重ねると頭をよぎる事柄だった。

するとベルンホーンは一旦上から引いて、隣に横たわる。
彼の黒髪を優しく撫でながら語りかけた。

「ええとな、興奮しているときの言動を説明するのは気恥ずかしいんだが、実際お前が孕むかどうかはあまり関係がない。俺はそのぐらいの勢いでお前に精を放ちたいという、心の底からの愛に満ちた欲求を表したかった。……本当だぞ」

まさかそんなふうに丁寧に釈明されるとは思わず、胸元を撫でられるシスタは熱くなってうつむく。

「そ、そうか。すまない。お前の気持ちはわかった……」

どう返せばいいか分からず口ごもっていると、ベルンホーンが今度は知りたくなる。大雑把な悪魔の自分がいつも見逃してしまう、青年の思いを。

「殿下に言われたことを気にしてるのか? 心配するな。俺は他に誰も娶る気はないし、死ぬまでお前一筋だ。子孫も必要ない」

意識的に真面目に伝えるが相手は信じてない様子だ。公爵家の三男という先入観が消えないのだろう。

「もしかして、お前は子孫を残したいのか。それは申し訳なかった」

考えた悪魔が頭をかいて謝ると、シスタは首を横にふった。
自分は遺伝性の病気があり、魔人となってからも子供を持つ気はないという意思は変わらないと、率直に伝える。

「だがシスタ、もしお前が望むならばーー」
「私のことはいいんだ。別に望んでいない。しかしお前は……」

気持ちとは別だが、本当にベルンホーンが必要ならば、女性との間に関係を結ばれても仕方ないと思っていた。
綺麗事ではなく、彼はそういう生まれだからだ。

しかし、ベルンホーンはそう単純ではない。

「正直、お前の気持ちはまったくありがたくない。もっと嫉妬しろ。俺はお前だけのものなんだぞ? 身分など関係あるか。俺は公爵家の上級悪魔だが、その前に唯一人の、お前を愛する男だ。もっと俺の心を見てくれ、シスタ」

顔を近づけて甘いキスをされる。
こうしてはっきりと言われたのは初めてな気がした。

「ベルンホーン……」

シスタの中で静かに思いがあふれそうになる。

「わかったよ。お前のいうことを信じる。……そうだな、お前は自分の気持ちに嘘をつかない、正直な男だ」
「だろ? お前も見たように、俺は自分の好きなようにしか生きていない」

彼は明るく笑うように言った。しかしシスタは否定をする。

「そんなことはない。私も含め、お前に助けられている者はたくさんいる。お前は決して自分勝手な男ではないぞ」

そう断言して抱きしめられると、ベルンホーンはまたこの青年に惚れてしまう。
こういう心に寄り添ってくれる姿に、いつもノックアウトされてしまうのだ。

「シスタ……俺を分かっているのはお前だけだ。愛しているぞ」
「……わ……私も……お前を愛して……いる」

悪魔は目を丸くする。一瞬何が起きたのかわからなかった。

「ほ、本当に? 嘘じゃないな?」
「本当だ。……そんなに驚くな。勇気を出したんだ。まだ、言うのは早いかもしれないが…」
「早いものか! 遅いぐらいだ!」

まくしたてて幸せの絶頂にのぼる悪魔を見ていると、シスタは笑みがこぼれてくる。いつも堅い自分には不似合いかと思ったが、伝えてよかったと。
   
いつの間にかベッドに押し倒され、至近距離で甘い瞳に見つめられる。
悪魔からの愛が注ぎこまれるような熱い視線だ。

「ま、まて。今真面目な話をしたのに、これ以上気持ちよくされては…覚えていられない」
「可愛いことを。俺が覚えているから大丈夫だ。……さあ、お前の愛の言葉を、この身体にも教えてくれ」

その後はやはり、興奮した悪魔に放されることはなかった。





二人は力を使った体を大きなベッドに隣り合って横たえた。
息が浅く短く吐かれ、とくにシスタにはもう力が残っていない。

「ベルンホーン……眠るのか?」
「……ん? ……あぁ、たくさん出したら眠気が襲ってきた……」

声が小さくなり、寝たいのだと思った。
だからシスタはひとりベッドから下り、離れようとする。

「おい、どこへ行く。一緒に寝るぞ」
「シャワーを浴びたい。今日はとくに汗をかきすぎた」

羞恥を思い出してとっとと浴室に行こうとするが、手首をぎゅっと握られた。振り向くともう普通に、やけに優しい笑みを浮かべているベルンホーンがいる。

「よし、じゃあ一緒に入ろうか」
「でも……お前は寝ていてもいいぞ」

しかし全裸の悪魔は起き上がり、機嫌よさそうに手を引いてシスタを連れて行ってしまった。

それからは予期していない、いや半分していたことが起こる。
温かいシャワーの下、浴室のガラスに後ろから押しつけられて
しまう。

「んっ、や、だめ、だっ、もう抜けっ」
「んんー……もう少しな……」
「寝ぼけてるのか! 起きろ!」
「寝ぼけてたらこんなに腰動かせないだろ?」

冷静に反論されて疲れが増したシスタだが、なんとか二人共達したあとに体をようやく洗うことができた。

といっても、すべて勝手にやらしい手つきで洗われてしまったのだが。

「はあ。私もお前の背中を洗ってやる」
「ふうん、ペニスも?」
「そこは自分でやれ」

やたらと浴室の中では楽しそうな悪魔にくすくすと笑われ、大きな背中に泡をつけて洗ってやった。
傷一つない綺麗な肌だ。

しかし、正面に向き直るとシスタの視線は彼の引き締まった脇腹へ向かった。
新しい傷が残り、指でなぞる。

途端に悲しく、まだ新しい記憶が蘇ってきた。

「ああ、それか。消えなかったんだ。嫌味たらしい王子だよな」

冥界の第一王子デイメラードにつけられたものだ。
悪魔が戦う場面は奇しくも多く目にしてきたシスタだったが、初めて異なる恐怖を感じた。

「どうしたシスタ。そんな顔をするな。もう大丈夫だぞ」
「……お前が負けるところを初めて見たから」
「ふむ、そうだな。実に情けないところを見せてしまった。でも言っただろう? 上には上がいると。さすがの俺も、魔王やヴェルガロン公爵クラスには勝てないのさ」

肩を竦めるがそれほど気にしていない様子だ。

「彼はそんなに強かったのか」
「ああ。本当の姿さえ見せなかっただろ? 片手で遊ばれたようなものだよ」

どれほどの力を秘めているのか、実際は誰にも分からない。冥界を束ねる冥王になる者だから当然のことだが。

シスタは悪魔に両頬を包まれ、なぜか励まされる雰囲気になった。

「俺の無敵イメージが崩れてしまったかな? お前を不安にさせたならすまない。けれどあのレベルに狙われることはもうないよ、たぶんな」

そう言って「わっ」と驚くシスタを横抱きにし、浴槽へ向かう。

「さあ、湯ができたぞ。風呂に入ろう」

後ろから抱えられて仲良く風呂に入る。かなり大きな円形の風呂だ。
良い香りに包まれたシスタは口を開いた。

「お前はずっと強いままだ、ベルンホーン。私の中でそれは永遠に変わらない。……でもあの時感じた恐怖に、やはりお前は私にとって、かけがえのない存在だということを知らされたんだ。お前を失うのは怖い、だから無茶はしないでくれ。……結婚をするのなら、この先ずっと共にいるのならば、なおのことだ」

前を向いて、肩まで赤く染まり告げられた言葉は、ベルンホーンにとってはプロポーズに聞こえた。
後ろで意識がぼんやりと遠のきそうになる。

湯の中で青年を持ち上げ自分のほうに向かせた。

「シスタ。では俺達の愛に誓おう。もう無謀な真似はしないと。……お前からももう一度俺に囁いてくれ、頼む」

手の甲を取りそっと口づけすると、二人は見つめ合う。

「お前が好きだ。愛している、ベルンホーン……もう私達が離れることは、ない……」

大好きな、青年からの口づけをされる。そのとき最上の幸せが悪魔を包みこんだ。



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