ハイデル兄弟 | ナノ


▼ 71 聖誕祭の贈り物 T

聖誕祭から年末年始にかけて、俺たち兄弟は実家に帰省することになった。
数年ぶりとなる家族そろってのイベントを迎え、俺と弟はさっそく実家の居間であることをしていた。

「うわ、すげえプレゼントの山だなぁ。これ全部で何個あんだよ」
「そうだな、家族六人だから俺達の入れたら30個ぐらいじゃないか。中々壮観だな」

二人で喋りながら、飾り付けされたモミの木の下に持参したプレゼントを並べていく。
一層おしゃれにラッピングした弟への贈り物も素早く置き、ちらっと様子を伺った。

「ん? お前なんだその一際でかい箱は。一体何入ってんだよ」

クレッドが手に持っていたキラキラ包装紙の大きさに驚き、つい尋ねると、奴は一瞬どきっとした顔をした。

「えっ。それは秘密だよ。後で皆で開けるんだから」

若干赤らんだ顔で微笑まれ、俺も「お、おう」と当たり障りのない返事をした。

なんか俺が用意したもの大丈夫だろうか。もちろん家族全員にも適当なもの見繕ったが、弟の反応が一番気になる。
気に入ってもらえるのだろうかと段々ドキドキしてきた。

そんな中、残りの家族が居間へとぞろぞろ集まってきた。
長テーブルにご馳走を運ぶ母に、グラスを手に酒の準備をする父。

そしてジャケット姿でやけにお洒落な装いの兄、シグリットがまた俺にべたべたと接してくる。

「どうだ、セラウェ。この窓から見える庭園のイルミネーション。親父と俺が手がけたんだぞ」
「えっそうなんだ、すげえ〜。無駄にど派手でびっくりしてたんだよ。なぁクレッド」
「ああ。遊園地みたいだよな。これ、兄貴が帰って来なくなってからどんどんエスカレートしていったんだよ。でも今日は一段と気合入ってるな」

三人で外を眺めながら何気なく喋っていると、弟がちくりとすることを無意識に放ってきた。
確かに四年ほど前の聖誕祭では、もっと普通のイルミネーションだった気がする。

「お前たち、そんなとこで無駄話してないで席につけ。そろそろ乾杯の時間だ」
「ちょっとルフリートったら。まだお母さん来てないじゃない」
「あっ、そうだったか。お義母さんいつもギリギリに来るからな……とはいえ俺が出迎えないと大変な目に……」

大柄で年を感じさせないほど屈強な父が、祖母の名を聞くと途端に慌てた感じになるのが笑える。
俺たちが席につくと、ちょうど屋敷のベルが鳴り、両親が玄関へと向かった。

この時期はマリアとヴィレも実家に帰っているため、本当に家族のみが集まる日だ。
遠くに住むアルベール一家は毎年聖誕祭二日目に訪れるので、会うのは明日の予定となっている。

「あら、可愛い孫たちが揃ってるわね。セラウェ、あんたも。嬉しいねえ私は」
「お祖母ちゃん。久しぶり。俺があげたピンクハートつけてきた?」
「もちろん肌身離さずつけてるわよ。まぁ買ったのは私だけどね」

高そうな毛皮に身を包んだ小柄な老婦人、オルガの登場である。
主に父に緊張が走る中、皆笑顔を浮かべて聖誕祭の挨拶をし合い、楽しげな家族団らんが始まった。

母が腕をふるった豪華な肉料理に、伝統的な大量のポテトサラダ。
特別な夕食を楽しみながら、麦酒を次々と開け、グラスを傾ける。

ああ、いい感じだ。
帰る家があるというのはそれだけで安心するし、大切に思い合う家族や、何より隣には俺の愛する弟がいてくれる。

ふっ。幸せってこういうことを言うのかな…。

すでにほろ酔い気分で横に目を向けると、なぜかクレッドはやや心配そうな顔つきをしていた。

「兄貴、飲みすぎないでくれよ、頼むから」
「へ? なんで? 今日飲まなくていつ飲むんだよ」
「……いや、だから……とにかく駄目だよ、ちょっと抑えて」

そんな甘い囁き声でお願いされたら、テンションが上がっている俺も、素直に言うことを聞いてしまう。

分かったよと肩を叩き、弟の安心した顔を確認すると、ちょうど恒例のあの行事が始まろうとしていた。

「親父、そろそろプレゼント交換の時間じゃないか。酔って何がなんだか分からなくなる前にやっておこう」
「そうだなシグリット。俺はもう結構飲んでるがまあいい。ではイスラ、頼んだぞ」
「ええ、任せてあなた。この瞬間私一番好きなのよ〜」

母がすくっと立ち上がり、皆が注目する中、軽やかにモミの木へと向かう。
プレゼントを端から順に手に取り、それを各々に一個ずつ手渡していく。包装には名前のカードがついてるため、誰宛なのか一目瞭然なのだ。

一斉に皆がガサゴソと中身を開けていく中、俺も自分あての贈り物を手にした。

「おっすげー! 絶版の古代魔術書じゃん、誰だこんなレア物くれたの。え、お母さん? ありがとー!」
「喜んでもらえて嬉しいわ。それ知り合いの魔術師に探してもらったのよ。絶対セラウェ欲しがると思って」

意外な交友関係にビビったが、さすが俺に魔法を教えてくれただけある人だ。普通に欲しいもの分かってくれてるな。

「ええっと次のやつはぁ……あれ、マフラーか? 暖かそう!」
「それは俺からだよ、セラウェ。気に入ったか? いつも身につけててくれよ」
「あ、ありがとう。シックで格好いいね。つうか俺からシグ兄さんへのプレゼントもマフラーなんだけど」

ハハハと笑いながら告げるが、兄は満足げな顔ですでに包装を開けて頷いた。

「ああ、お揃いで嬉しいぞ。お前毎年俺にマフラーくれたから、おかげでもう立派なコレクションになってるよ。だが安心してくれ、他のはつけない。一生浮気しないから」

軟派な笑顔で一体何を言い出すんだこの兄は。実は考えるのが面倒でいつも同じだったんだが、そんな大げさな物言いされても。

隣の弟が冷やっとしたオーラを放ち始めててなんか怖い。

「な、なぁ。クレッドは何もらったんだ?」
「ん? 俺は……ほら、親父と兄さんからは装備類だよ。獣革手袋と外套。そういえば毎年剣術に関するものだな。俺もあの二人にはいつも剣を贈ってる」

えっ、剣だと? いくら騎士同士だからってそんな物騒なもん贈ってんのかよ。
いやでもこいつ刀剣マニアなんだっけか。

ちらっと年上の男二人を見やると、いつの間にか弟から貰った剣を抜き出し、その場で確かめながらわいわい騎士談議を始めていた。
祖母のオルガが「ちょっと危ないだろう、あっちでやってくれよ!」とぐちぐち文句を垂れている。

「まったく、あの二人はあんた達と違って落ち着きがないね。ところで私からのプレゼントなんだけど」
「あっそうだ、開けてみるね。ていうかいつもと同じじゃないの? ……ほらやっぱり金貨だ!」

高そうな布の袋に入っていたのは数枚の金貨そのものだった。なんて現実的でいい贈り物なんだろう。

「そうだよ。年頃の男共の欲しいものなんて、私には分かりゃしないしね。それで好きなもん買いな」
「「ありがとう、お祖母ちゃん」」

俺とクレッドはハモったように仲良くお礼を言った。この人のこういう男らしいところ、結構好きだ。

その後もプレゼントのお披露目は続く。
俺は女性陣に対しては、無難にイヤリングを贈った。よく分からないのでオズの意見を参考にして選んだものだ。
二人には目を輝かせて喜んでもらえたので胸をなでおろす。

父には普段怒りっぽい性格を静めてもらおうと、リラックス効果のあるハーブティーセットを贈った。
見た目によらずお茶をするのが好きなので、ポットとカップ&ソーサーもセットにした。

「なんだ、随分可愛らしい贈り物だな、セラウェ。まあいいが……テラスで使うか」
「おっ素直じゃん親父。つうか俺へのプレゼントもありがとう。なんで戦闘用防具なのかよく分かんねーけど」
「それは特別に取り寄せた軽装鎖帷子だ。お前は特に弱いんだから任務で必要になるだろう、ちゃんとつけておけよ」

いちいち嫌味が入ってんのがムカつくが、これも頑固親父の優しさのこもった愛情表現なのだろうと納得することにした。

たくさんアクセサリーを貰った祖母と母が楽しそうに見せ合い、兄達は酒を酌み交わしながらくっちゃべっている。
よし。程よい雰囲気になってきた今がチャンスだ。

俺とクレッドの手元には、最後となるお互いへのプレゼントが残っていた。
二人で見つめ合い、どことなくモジモジしてしまう。

「あの、それ開けてみて、クレッド」
「う、うん。なんかドキドキするな」

微笑んで包みを開け始める弟を見て、俺にも緊張が走った。



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