▼ 焼きもちルカ
こうして11才で僕は、半分大人の男になった。
すると、それまで僕が兄の治療をする先生だったのに、今では兄が僕のおちんちんを治すようになってしまったのだ。
母が仕事で遅くなった日。兄お手製の晩ご飯を食べ終わり、僕たちは二人でアニメを見ていた。
お兄ちゃんは後ろから僕を抱えて、ソファに座っている。
でもほっぺたに何度もちゅってしてきたり、手でいろんなとこを撫でたりしてくるから、あんまり集中できない。
「あぁぁ……だめえ……気持ちよくなっちゃうよ」
「なっていーよ、ルカ。もっとここいじる?」
「んやぁ……っ」
弟が射精できることになって、興奮しているのかもしれないけど、僕は前にも増して簡単にビクビクってイッちゃうから困っていた。
「もう出ちゃう、ティッシュ取ってお兄ちゃんっ」
「んー、はいはい。出していいよルカ」
甘い声で囁かれて、待ち構えた紙の中に僕は白いとろっとしたのを出してしまった。
「はあはあルカのミルク」と嬉しそうなお兄ちゃん。
僕は息づく口をまた塞がれて、しつこく吸われる。
その時、テレビから「もう、変態!」という声が聞こえてきた。ハーレムアニメの女の子が、ちょっとえっちな主人公に怒ってるみたいな台詞だ。
「ねえねえ。もしかしてお兄ちゃんも変態、なの?」
「えっ?」
僕が後ろを向いて見上げると、兄の顔は赤くなっていった。
わざとらしく首をひねりながら、腕を組んでうなり始めている。
「まあ否定はしないけど、男は皆変態っつうかな……ていうかルカ、もう一回言ってみてそれ」
「お兄ちゃんの変態っ」
「……あー、いいかも……」
ぼうっと遠い目をしたかと思えば、僕のことをまた大きな体が抱き締めてきた。
やっぱり兄の喜ぶことって、子供の僕にはよく分かんないかも。
そんな日常が続く中。いつものように学校にいた僕は、初めての出来事に遭遇する。
「あっ、お兄ちゃんだ!」
お昼休みに皆と校庭で遊んでいた僕は、外で兄を見かけた。
お友達と笑って歩いてる兄を目で追うと、後ろから女子が出てきて、手を引っ張って行き、二人で建物の裏に消えてしまった。
「わあ、なに今の、ルカのお兄ちゃんじゃない?」
「ほんとだ! すげー、高校生ってもう彼女がいるんだ!」
一緒に見ていたカールくんとジェイクくんの声に、体の力が抜けていく。
お兄ちゃんの……彼女?
じゃないよね?
「僕そんなの知らない……」
消えてしまった兄にショックを受ける。二人でなにしてるんだろう。
高校生の世界では、こういうの普通なの?
僕はその後もずっとモヤモヤして、学校にいる間もお兄ちゃんのことで頭がいっぱいになってしまった。
その日は三時半頃に帰宅して、僕は一人でリビングにいた。
するとこんな日に限って兄は三十分後に帰ってきた。
「お、もうルカがいる。ただいま〜」
何事もなかったように僕のそばに飛んできて、頭を撫でてくる。
その瞬間、なんとなく悲しみがムカッとしたものに変わった。
「おかえりお兄ちゃん」
いつものハグもキスもしないで、僕は宿題を続けた。
変に思ったのか、兄は横に腰を下ろして「分かんないところある? 教えるよ」とか「ルカおやつ食べる?」なんて喋りかけてきたけれど、僕はクールな態度を取り続けた。
夕方に母が帰ってきて皆で食事をし、一家団欒の時間になる。
子供の中の子供の僕は、兄と目が合うとプイッと時々そらしたりした。
「ルカ、ご飯おかわりする? ついであげるよ」
「いらないよ。もうお腹いっぱいなの」
冷たい態度を取るたびに、兄の悲しそうな顔が目に入ったけど、僕はその後にとどめを刺してしまった。
「なあ一緒にお風呂入ろっか。今日はルカの好きな入浴剤使おうぜ」
「ううん。僕あとで入るから大丈夫。お兄ちゃん行ってらっしゃい」
「……え、ええ。なんで? もう一緒に入ってくんないの? 嘘でしょ?」
その光景を見ていたお母さんがけたけたと笑い声をあげた。
「悲しいねーダッジ、ルカもやっと兄離れか〜」
「っせえ! そんなわけないだろ母ちゃん! なあルカ!」
僕はまた横顔を向け、歩き出して母の隣のソファに座った。
こっそり振り返ると、寂しそうな背中が浴室に向かうのが見えたけど、心を鬼にする。
だって、いつもと同じ顔してるんだもん。女の子と手を繋いでたのに。
その時テレビでついていた母お気に入りの恋愛ドラマから、「もう知らない、この浮気男!」という台詞が聞こえてきた。
僕の心はさらに沈んでいき、どんよりと暗いものになった。
その夜は早めにベッドに入って、布団をかぶって丸まった。
しばらく眠れないでいると、ドアがゆっくり開かれる音がした。
すぐに誰か分かった僕は、本当は少しだけ嬉しくなって、でも意固地なまま顔は見せなかった。
「ルカ、どうしたの? 大丈夫か?」
心配する声に胸がちょっぴり痛む。
僕は今まで兄とほとんど喧嘩なんかしたことないし、あんまり怒らないタイプだからおかしいと思ってるんだろう。
今だって、勝手にむすっとしてるだけだけど。
「大丈夫だよ。おやすみお兄ちゃん」
「……本当かよ? おやすみなんて言わないで、もうちょっとお話しようよ」
兄が勝手に布団の中に入ってきて、後ろから抱きついてくる。
柔らかい金髪が首に当たって兄の匂いがして、今日はくっついてなかったから、僕は一人でドキドキしてきてしまった。
「お兄ちゃん、治療したいの? 今日は休診ですよ。一人でしてください」
聞かれてもないのに、強がって言って振り向くと、兄が悲しそうに眉毛を下げた。
「ごめんね。最近俺が先生役やってたから怒っちゃったの? しばらく我慢するから許して」
「違うもん」
「ルカぁ……」
甘えても駄目だよって顔をする。僕が怒ってる理由がまだ全然分かってない。
「どうしたら許してくれる? じゃあお兄ちゃんに何でもお仕置きしていいから」
「……えっ? どんなこと?」
「うんとな……俺のちんぽ好きにしていーよ」
茶色の瞳がキラキラし始める。それってお兄ちゃんが嬉しいことじゃない?
そう思ったけど、僕はまだ怒ってるふうに厳しい視線を向けた。新しい感情に押されて、ズボンの上からおちんちんを強めに握ると、兄はもっと赤面した。
「うあっ、それ気持ちいいだけ、ルカ」
「じゃあどうして欲しいのお兄ちゃん」
「………えっと、そうだな、ルカのちっちゃい足でぐいぐいしてみてくれる?」
よく分からないことを言われたけれど、何故か僕はまたムッときた。
「もう、僕の足ちっちゃくないもんっ」
「あああっ」
起き上がり、むぎゅって足でつっついたら、寝そべる兄が悶えた。
これ……好きなのかな。そう思って恐る恐る続けてみる。
「あ、あっ、ルカ、もっと押していいよ」
「ふうん。これがいいの?」
「ああ! すげえ、気持ちいい……っ」
こんなの、お仕置きになってないよ。
その後もリクエストされて、僕は裸足になってやってみた。こんなことしていいのかな。ひどい感じもするけど、兄は喜んでるし……。
結局お兄ちゃんはいつもよりも多めにビクビクして、お腹に出してしまった。
兄をじとっと見ていると、抱きよせられてキスをされる。
「ルカ……まだ怒ってる?」
「ん、んっ」
「今度はルカの気持ちよくしようね」
されるがままに魔法の手で擦られる。大きな手のひらと長い指はとっても気持ちよくて、僕も兄の上にくっついて、おちんちんを震わせてしまった。
ぐったりして、二人の精液が仲良く溶け合う。
僕はなんで怒ってるのか、分からなくなっちゃった。
その後体を拭いてくれて、まとわりついてくる兄の顔を見ていると、だんだんもういいかなって気持ちが揺らいでくる。
「……ああ、ごめんルカ。俺、お前と一緒にいるとやっぱ暴走しちまうわ……ダメな兄ちゃんすぎるな……」
反省をする兄の胸に掴まり、僕は首を振った。
「違うよ。僕お兄ちゃんと触り合いっこするの好き。怒ってたの、そうじゃないの」
「んっ? 違うの?」
「うん。だってお兄ちゃんが、浮気したから」
「えっ!?」
なにそれ、なんのことっ?と兄は大慌てで問いただしてきた。
もう黙ってることが出来なくなった僕は、今日見たことを教えてあげる。
「いや、違うよ、それ、っつか見てたのか、マジでそういうんじゃないから」
「じゃあなあに?」
「ええっと、……ただ告白されただけで、違うクラスの女の子にね、……」
しどろもどろで怪しい。
兄が女の子って言うのもなんとなくズキンとした。
「やっぱりお兄ちゃんって、モテるんだ。格好いいって思ってるの僕だけじゃないんだね」
ぷくっと膨らませたほっぺたが、兄の指でつつかれてしぼむ。
「俺はルカだけにそう思ってもらえれば満足だけどね」
「……本当に?」
「うん。本当だよ」
いつの間にか抱っこされて、髪の毛を優しくといてくる。
心配する僕とは違って、見つめてくる目はなんだか嬉しそう。
「じゃあ、他の人にべたべたしちゃダメ。お兄ちゃんは僕のお兄ちゃんだもん」
この前誕生日を迎えたばかりなのに、僕は小さな子みたいにわがままを言って、兄の首に腕を巻きつけた。
「かっ、かわいいー……ああっ、そんなふうに俺を縛りつけるルカ見たことない……っ」
感激したみたいな声で背中にぎゅっと両腕を回された。
縛ってなんかないんだけどな。
「僕、まじめに考えてるんだよ」
「うん。ありがと、ルカ。あと大丈夫だよ、心配すんな、ちゃんと断ったからな」
「ほんと?」
しっかり頷く兄の微笑みを見て、ようやく僕は安心から肩の力が抜けちゃったのだった。
「よかったあ」
背中をぽんぽんと触られて考える。
僕たちって、なんなんだろう?
僕はまだ子供だし、二人は兄弟だけど、兄が他の子と近くなったら嫌だなって思って、焼きもちも妬いちゃう。
こういう気持ちって、普通なのかな?
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