お兄ちゃんシリーズ | ナノ


▼ 約束

転んだ膝の怪我がようやく治った頃。
この日も僕は学校にいて、下校間近のホームルームで先生の話を聞いていた。

「えー、明日から秋の読書週間が始まります。というわけで皆には、今日の放課後図書室に行って、読みたい本を一冊見つけてきてもらいます。あとから感想文を書いてもらうので、ぜひ興味のある本を選んでみてください」

教壇に立った担任の先生から告げられて、皆も「はーい」と揃って返事をする。
その後は別れの挨拶をして、解散になった。

机に準備していたリュックサックを背負う。本を読むのが好きな僕は、何にしようかなぁと考えながら、お友達とさっそく一階の図書室へ向かった。

クリーム色のカーテンに囲まれた、本棚で埋めつくされた部屋。
木の広い机が何台も並べられていて、読書や勉強をしたりしてる生徒たちがいる。

「ねえ、ジェイクくんはどんな本か決めた?」
「いやーまだ。俺漫画がいいなー」
「ええっ? さすがに漫画はダメだよね、カールくん」
「うん、ズルだよねそんなの。ルカはどうするの?」
「僕はね、やっぱり物語かなぁ。動物ものがあったらいいんだけど…」

仲の良い子たちとヒソヒソ声で喋りながら、本棚と本棚の間を歩いていた。
読みたい本が見つかるまで結構時間がかかり、二人がやがてどこかに行ってしまったとき。

一番後ろの棚に、人だかりを見つけた。よく見るとクラスの男子たちで、なにやら数人が床に座り込み、一冊の大きな本を読んでるみたいだった。

そこには前のめりになるジェイクくんの後ろ姿もあった。

「みんな、何読んでるの? 面白いもの?」
「……わっ、ルカ!」

びくりと振り返った彼のほっぺたは赤い。しかも何故か、ズボンの真ん中を両手で押さえていた。
不思議に思った僕は本を覗きこむ。すると、そこにはどうみても、男のおちんちんの絵が書いてあった。
しかも隣には、女の人の下半身のイラストもある。

びっくりして言葉を失った僕を見やったのは、その輪の中心であぐらをかいていたマックスくんだ。

「へっへっへ。これすごいよな、お前も見てみろよルカ。エロくね? エロくね?」

興奮した顔つきのマックスくんは、男子の中で一番背が高くて体の大きい、スポーツ万能な男の子だ。
同じく活発なジェイクくんとともに女子にも人気があって、言動もいつも大人っぽい。

エロいって、エッチって意味だよね。
そう思った僕は、まじまじと本の中身を見た。その間も他の男子たちは「うん、すげー」「なんかやばい」と口を揃えてはしゃいでいた。

「おちんちんってエロいの?」
「違うよ、こっちだよ。いいか。このちんぽがこうなって、あそこに入って、セックスになるんだよ」

知識が豊富なマックスくんに教えられ、皆も「へーっ」と感心している。
セックス……。
その言葉は有名だし、大人の男女がするものだって分かっているけど、僕は具体的なことは何も知らなかったから、衝撃を受ける。

イラストのおちんちんは寝ているときと、起きている時のもあって、そのどちらも僕には兄のおちんちんを思い出させた。

お兄ちゃんのおちんちんも、セックスするのかな。
よく分からないけど、女の人と…?
そんなのやだよ……!

急に胸がそわそわしてきた。すると後ろから人の気配が近づいた。

「何見てるの、ルカ? ……わあっ、駄目だよそんなの見たら!」
「カール、お前も仲間に入れよ。すごい勉強になるぞこれ」
「いいよ、ていうか先生に怒られるよっ。ねえ行こ、ルカ!」
「う、うんっ」

赤くなっているカールくんに手を引っ張られて、僕たちはその場から離れた。

「はあ。びっくりしたね、ルカ」
「うん。皆ああいうのに興味あるんだね」
「だねー。僕たちまだ子供なのに。……あれ? ジェイクくんは?」

あっ。忘れてた。でも、そういえばさっきズボンのとこ押さえてたけど、もしかして……。

とっさにお兄ちゃんのことを思い出した僕は、彼の秘密だと思ってそのことは言わないでおいた。





なんだかんだ無事に図書室で本を借りた僕は、カールくんと別れ、バスを使って下校した。
四時半頃に帰宅すると、まだ母も兄も帰っていなかった。
リビングで黙々と宿題をしていると、夕方になって母が帰ってくる。

「ただいまー。あ、ルカおかえり」
「お母さんもおかえりー!」

にこっと腕を広げられて飛び込み、ハグをされる。やっぱり家に家族が帰ってくると嬉しいし、安心だ。
でもお兄ちゃん、今日は遅いなぁ。
そう思っていたら、さっそく台所で夕飯の準備をし始めた母があることを教えてくれた。

「あのね、ダッジ今日は夜にバイト入っちゃったんだってさ。夏休みに働いてた配達店ね。店長にヘルプ頼めないかって言われたらしくて。さっき携帯にメッセージ入ってたわよ」
「ええっ、そうだったんだ」

母の隣で手伝いをしながら、大変だなぁ、大丈夫かなと心配をする。
帰ってくるのは十時過ぎるっていうから、今日は朝とちょびっとしか会えないなって、少し寂しくなった。

それからはお風呂に入って、リビングで母とテレビを見たり、お喋りしたりした。
合間に時計を何度か見たりして、まだかなーってお兄ちゃんのことを考える。

夜になってパジャマに着替えると、眠る時間になってしまった。
しょうがなく二階の自分の部屋に戻り、ベッドに潜り込む。何回も寝返りを打ってうとうとし始めた頃、玄関のドアが開く音がした。しばらくして話し声が聞こえてくる。

お兄ちゃんが帰ってきた!

すぐに目を開けた僕は起き上がろうとしたけれど、やっぱり我慢をする。
もしかしたら後で兄が様子を見に来てくれるかもと期待して、驚かせようと思ったのだ。

そしたら、その瞬間はすぐにやって来た。

「ルカ? もう寝てんの?」

扉が開いて廊下の光が差しこんでくる。僕が背を向けて布団を抱き丸まっていると、いきなり大きな体がベッドに上がり込んできて、お腹に手を回してきた。

「っはは! くすぐったいよ〜」
「やっぱ起きてた」
「もう、なんで分かったのっ?」
「いつもと寝相が違うじゃん。なあ遅くなってごめんな」

言いながらほっぺたにキスをしてきた。肩に金髪をぐりぐり押しつけて「はあ寂しかった。癒されるうう」って呟いている。

「ねえねえお兄ちゃん、僕、聞きたいことがあるの」
「いいよ。なあに?」
「あのねえ、僕もお兄ちゃんとセックス出来る?」

わくわくして尋ねると、兄の動きがぴたりと止まってしまった。

「………………ん?」

体を起こして、視線を混乱させながら僕を見下ろした。

「待っ…………えっ? セッ……なに? どこでそんな言葉覚えたんだルカっ!」
「どこって、皆そのぐらい知ってるもん」
「皆って誰? 変質者? どこの誰、なあマジで、お兄ちゃん気が動転しちゃうだろ?」

なぜか落ち着きがなくなってしまった兄に、僕は今日図書室であった出来事を正直に話した。

「なんだよ、あいつね……ったくエロガキが……」
「ねえ出来ないの? 教えてってばお兄ちゃん」

僕も起きて間近で尋ねると、どんどんゆでダコみたいに顔が赤く染まっていく。
指を絡ませたりほどいたりして、兄は口ごもっていた。

「ええと。この前も言ったけどね。……もうちょっと大きくなったら、出来るっていうか、俺はしたいなぁ……って思ってるよ正直…」
「ほんとに? じゃあお兄ちゃん他の人としない?」
「……なっ。ルカ、どうしたの?」

おでこに手を当てて、熱がないか確かめている。でもうるうる熱っぽい顔はお兄ちゃんのほうだ。

「だって心配なんだもん。僕も焼きもち妬いちゃうよ」

この前の兄を思い出し、人のことを言えないと感じながら、素直に自分の気持ちを伝えた。
すると兄はいきなり「ルカ……っ!!」と叫んで僕に抱きついてきた。

「そんなの心配しなくていーよ。ルカだけだよ。ずーっとルカのものだよ俺は」

兄から魔法の言葉をもらえて、頭の中が一瞬できらめいていく。よかったぁ、とこぼした僕は一応確認のために触ることにした。

「ああッ」
「やっぱり。おちんちんすごく硬いね。お兄ちゃんのこと信じまーす」

兄の戸惑う「え、おちんちんで信じるの?」という声が聞こえてきたけど、僕には絶対的自信があった。ここはいつも正直で、僕の前では嘘がつけないのだ。

「はあ、ああ、ルカぁ、どうするの、俺のちんぽこんなにして」
「ええ? 僕のせいなの?」
「そーだよ、愛する弟にあんだけセックスしたいとか言われちゃったら、普通我慢できないでしょ」

キスで唇を塞がれる。息があんまり出来なくて、兄の興奮度が高いのが伝わる。
でも突然ぴたりと動きが止まり、僕を抱き抱えながら、揺れ動く瞳が見下ろしてきた。

「……うーん、そうだな。いや、でも……ああっ、どうしよ……」
「なあに? どうしたのお兄ちゃん」

一人で苦しそうに唸っていて心配になってくる。
やがて兄は決意を新たにした顔つきで、僕をまっすぐに捕らえた。

「あっ。なあ、そういえばもうすぐルカの誕生日だよな。なんか欲しいもんある? 遠慮なくお兄ちゃんに教えて」

意気込んで話す兄の瞳は真剣だ。
僕は急な話題に少しびっくりしたけれど、答えを待っている兄はなぜかそわそわしている様子だった。

「今欲しいものかぁ……うんとねー、新しい靴下!」
「……る、ルカ、そんなのいつでも買えるでしょ?」

お兄ちゃんは笑みをこぼしながら僕のほっぺたを親指でなぞる。
その期待に応えようと思って、一生懸命に考えた。

「僕、誕生日はお兄ちゃんと一緒にたくさんの唐揚げとケーキが食べたいな。それだけですっごく嬉しいよ。あと、出来ればお兄ちゃんを一日中独り占めしたい!」

想像しただけで嬉しくて、気分がわくわくして、僕は我慢できずに兄に飛びつく。
がしっと受け止めてくれた兄の顔は、またさーっと赤くなっていった。

「ど、どんだけ可愛いのお前、もう……。分かった、その日はずーっとそばにいるからな。ケーキも一緒に食おうな。……あと、プレゼントの他にもうひとつ、ちゃんと考えとくからな」

ふわふわした眼差しで呟いたお兄ちゃんは、僕の口にそのあとちゅっとキスをした。

もう一つってなんだろう?
なんだか、もっともっと楽しみになってきちゃった。

「ありがとうお兄ちゃん! 僕待ちきれないよ〜」
「ん。俺もすっげえ楽しみだよ、ルカ」

そ広い腕に抱き締められ、完全に夢心地だ。
その時の僕は、まだどんなびっくりな事が起こるのか知らずに、はしゃいでいたのだった。



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