愛すべきもの | ナノ


▼ 23 夢の時間 ※

僕は雪を初めて見た。テレビの中では見たことあるけど、こんなに真っ白で手触りがさくさくしてて、なのに柔らかくて冷たいとは。

「おもしろーい、楽しい、雪!」

森林を覆う一面の雪の上で、獣姿の自分が走り回る。
対してクローデはうんざりした顔で「一日でこんなに積もりやがって…」と恨み節だった。

確かに冬の到来を示す雪、というだけでも大事なのに、ここで野宿するのは人間にはつらいはずだ。実際、これまで元気だったクローデの体に異変が出始めていた。

「ねえクローデ。声がかすれてるよ。時々咳もしてるし……心配だな」
「ああ……平気だよ。お前も暖かくしてろよ」

彼のことを尋ねたのに、反対に毛布をかぶされて穴蔵の中で抱えられる。
最近積もり始めた雪のせいで、狩りにも時間がかかるようになった。あまりに足場が悪いときは、僕らはベックからもらった食料に手をつけて腹を満たした。

僕はたまに人化してクローデの黒髪をそっと分けて、額に手を当てた。いつもより体温が高い気がする。心配が募り、僕は真剣に提案した。

「あのおばあさんの小屋、行ってみようよ。あと四日だけだし」
「大丈夫だって。あともう少しなんだから、問題ねえ」

彼は本当に強情なハンターだ。あくまで試験の方針に従って生活すると誓ってるようだった。
でもそれから二日経ち、面白いことが起きる。
彼の症状が収まってきたかと思うと今度は僕がくしゃみをし、カエサゴの小さな鼻から鼻水まで垂らし始めた。

試験が終わるまであとちょびっとだし、彼が頑張っているのに弱音は吐けないと思い、素知らぬフリをしていると、彼が僕の体を慎重に調べ出す。

「オルヴィ。人化しろ」
「え、ええっ。どうして?」
「熱があるかもしれないだろ。心配だ」

どの口が言うのだろうと思ったけれど、彼は僕がほんの少し熱っぽいというだけで、あっさり小屋の鍵を荷物から取り出した。

「行くぞ」

あれだけいいと言わなかったのに、彼は僕を抱き上げて、最小限の荷物を肩に担ぎ、穴蔵から出た。
外は凍えるように寒く、雪が吹雪いていた。幸運だったのは、あのカエサゴ家族が教えてくれた小屋の場所がそれほど離れてないことだった。

しかも、到着して驚く。密集した木々の裏手にある隠れ家感もそうだが、その木製の家は僕らの想像よりとても綺麗な保存状態で、内部も掃除や用具の手入れが行き届いていた。

「うわあ、すごいよ! これ、暖炉でしょう? 台所もあるし……ベッドもあるよ、クローデ!」

僕はすぐに人化してはしゃいで駆け回る。風邪気味なのを忘れて家族がゆったり過ごせるほどの広いログハウスを見て回った。
クローデも安心したようで、ひとまず暖炉に薪をくべて火をつけてくれた。

久々に屋根の下で眠れることに、野生動物の僕まで嬉しくなってしまい、顔が緩まる。僕とクローデは暖炉の前で毛布にくるまり、ぬくぬくと休むことが出来た。

「はあ。やっぱり家がいいや、僕……」
「……そうなのか?」

まるで寮のアパートにいたときみたいに、後ろから僕を抱きかかえて座る彼の声が聞こえた。自信をもって「うんっ」と返事をすると僕は向きを変えられ、彼と正面になった。

「どうしたの? なんか変なこと言った?」
「いや……。俺は、お前が野生のほうが気に入るんじゃないかと思っていた。もしかしたら、……そのまま帰りたくなるんじゃないかってな」

予想外の思いをこぼされて、僕はぐいっと顔をよせる。なんだかクローデがふいに気弱な様子に見えたのだ。

「ううん。そんなことなかったな。森も楽しいけど、僕は早くクローデの巣穴に帰りたいなって思ってたよ、ほんとは。あっ、僕達のおうち、だね」

へらりと笑って獣耳を触った。明後日に試験が終わるのでつい本音が漏れてしまう。クローデの青い瞳は暖炉の炎を映して、ゆらめいていた。
すぐにしゃべらない彼に僕は心臓の音が少しずつ迫ってくる。
彼は僕のおでこに自分のをくっつけた。熱が伝って暖かくなる。

「クローデ……?」
「わりい。喜んでいいのか分からないが、嬉しいんだ……」

彼はそのまま僕の背中に両腕を回し、抱きしめた。強い力を通じて、彼の色々な気持ちまで伝わってきた。
頭を撫でられて、気持ちよくて、僕はただ身を任せる。
すると体を離されて、彼が僕の唇に自分のを重ね合わせた。

「んっ……」

お願いする前にされるキスは、もっと嬉しいかもしれない。
ちゅ、ちゅっと静かに繰り返す口づけが、しかし段々僕の体を熱くしすぎてしまった。

カエサゴにとって冬は繁殖の季節だという。僕の発情はなぜか今みたいに獣人化してるときのほうが顕著で、獣でいた森の生活のほうが抑えられていた。

本当に僕は、クローデが好きだから人化してる時にそういう気分になるのだとつくづく感じた。

彼と交尾したい。今までずっと我慢してきたんだし、もう限界だ。
キスで全身が疼いてきてしまい、口に吸い付かれている間も一生懸命彼の首に掴まる。
僕はあぐらをかく彼の上にまたがっていた。やや下の目線からクローデが息を浅くする。

「オルヴィ、舌出せ」

命じられてドキドキしながらも僕は言う通りに口を開ける。
見せた舌を彼は人差し指で触れた。やらしい手つきで撫でるように確かめられ、びくんびくんと腰まで快感が伝わる。

口の中をなぶられたあと、彼は自分の舌を僕のに這わせた。
もっと互いが絡むのが見えるように、えっちなキスを続ける。

もうペニスが苦しくなってきて、僕は自然と腰を彼の股座に擦り付ける。彼のも硬くなっていた。大きくて、主張している。

「あ、ぁあ、もう欲しいよ」
「ああ……俺もお前がほしい、ベッドに行くか…?」
「や、だ、ここでいい、して、クローデ」

今すぐに彼のペニスが欲しくなった僕は懇願する。すると彼は目元を染めたまま、僕のズボンを下ろし触ってほしいとこに手を添える。もうそこは濡れていて、好きな雄のものが入るのを今か今かと待っていた。

「ひぁ、あ、きもちいい、指」

大好きな彼の指にいじられてすぐにとろとろになっていく。彼はそこを少しずつ攻めながら僕の上も脱がせておっぱいに吸い付いた。
僕は雄だしまったいらで面白くないかもしれないけど、彼はいつも優しく美味しそうに舐めてくる。

「あ、あぅ…だめぇ、吸わないで…っ」
「でもな……こうするの好きだよな? やらしいぜ、ここ…」

段々恥ずかしくて訴えても意地悪な彼はやめてくれない。僕が感じてしまってるのを知ってるからだ。
体の小さい僕が一方的に色々されてしまう時間は続く。
しかしもう繋がりたくてたまらなくなった僕は彼の上着に手を伸ばした。

下に着たTシャツも脱がそうとしたが、筋肉が張っていてうまく出来ない。この森で生活するようになってから、彼の肉体はさらに引き締まり、見惚れるほど逞しくなっていた。
見かねたクローデが笑い、脱ぐのを手伝ってくれる。

「格好良いな、クローデの裸。僕もこうなりたい…」
「ははっ。本当かよ」
「なんで笑うの? 僕、もしかしてこのままのほうがいい?」
「そんなことはない。もしお前が俺よりムキムキになっても抱いてやる」

彼は甘い声音にのせて楽しそうに言った。そんな自分の姿はまるで想像出来ないけど、彼の優しい言葉に僕もほわっと嬉しくなった。

ちょっとした普通の会話もすぐにおしまいだ。僕はズボンから彼が取り出した大きな雄のペニスに視線を落とす。
僕が最近ひそかに夢にまで見ていたもの。すでに魅力的な彼がもつさらに強大な兵器。

僕らは二人座ったままくっついて、ようやく交尾を行うことが叶った。

「はぁ、はあっ、んあぁ、おおきい、よぉ」

またがった体勢で挿入されたペニスが、僕の濡れそぼった中を行き来する。お尻を両手でしっかり持った状態で、クローデは下から突くように打ち付けた。

「あっ、あっ、ああ!」

がくがくと腰が揺れ、きゅうっと締まる内部が彼を離さぬように、僕も夢中で掴まって挿入を受け入れた。

「オルヴィ、……ああ、いいぞ…!」

クローデの低い声が暗闇に響き、僕の快感をさらに押し上げる。
彼のペニスは大きいだけでなく長くて、僕のもうそれ以上入らないって奥まで届き突いてくる。
そこを何度も突き上げられたら僕は気持ちよさにおかしくなる寸前で、眉をひそめ焦点も合わず、「イク」ってことを何度もしてしまう。

「……あっ……ああ!……ん、んあ……ッ」

彼に貫かれ、体が小刻みに揺れたあと、一気に全身が脱力した。
今僕は達してしまった。知らずに自分のペニスからも射精していて、彼の指先がいとおしそうに触れてくる。
全身が敏感に反応してしまい、ふらりと後ろに倒れそうになる。

しかし彼の腕に支えられ、また密着するように抱き寄せられる。
クローデは甘い瞳で見つめてきて、知ってるくせに「イッたか?」と確認してくる。
頷くと、彼は目を細めて僕に口づけし、それが深くなるにつれまた腰を揺らし始めた。

だが体勢が変わった。今度は僕を毛布が敷かれた暖炉前に押し倒し、彼が上になった。
足を大きく開かされて彼が間に入ってくる。僕の両腕はあげられ、手が彼の両手指に絡めとられてきつく拘束される。

「う、んん、なんか恥ずかしい」
「どうして? お前、前からするのやなのか」

汗ばむクローデが少しだけ笑んで尋ねてくる。その間も上で腰を揺らしながら。
嫌ではないけど、動物は普通後ろからするものだから、僕にとっては結構羞恥を誘うポーズなのだ。何度か達して濡れた自分のペニスも見えちゃってるし。

「だって仰向けなんだもん、獣にとっては降参のポーズなんだよこれは…っ」
「ふふ。可愛いな。確かに全部丸見えだ。俺は気分がいいぞ」

まるで王様のように逞しい体躯の雄は僕を笑顔で見下ろした。僕は彼の一挙一動に目が奪われ、見惚れて、時が止まりそうになる。

クローデは僕と違って人間なのに、交尾のときも勇ましくて、やけにフェロモンを出してくる。
だから僕は覆い被さる彼に掴まりながら、必死に問いかけた。

「ねえっ、クローデも僕に発情してくれてるんだよね?」

よほど変な質問に響いたのか彼はぴたりと動きをとめて揺れる瞳で見返す。

「そう…だろ、分かるだろうほら、こんなでけえんだから」

ぶっきらぼうに言う彼がうっすら赤く染まっていくのが分かる。
僕は説得力のある答えが嬉しすぎてはしゃいだ。彼は中断されて頭をうなだれた。

「本当の番だ、僕たちは! 嬉しいー!」
「オルヴィ……ムードを考えろっつうんだ、お前は…」

照れ隠しに密着した彼に熱いキスで塞がれてしまった。
本当に照れてしまったのか彼はその後僕の体を裏返しにする。そして茶色でふわふわの長いしっぽの根本を優しい指できゅっとされた。

「んあぁっ! なんでえっ、そこだめえっ」
「お仕置きだ」
「うそだぁ! 前にしないって言ったのにぃ!」
「……冗談だよ、でもびくびく感じてるなお前」

くくっと笑い寝そべった僕の中にゆっくり自身を挿入する。
尻尾を触りながら床の毛布に僕をおしつけて、背中には彼の胸板がくっつき、お尻には勢いよく彼の腰がぱんっぱんっと当てられる。

「あ、あっ、はぁっ、クローデっ」

やっぱり後ろからされると僕は途端に野生に戻りへろへろになってしまう。ペニスが容赦なく奥まで入ってきては、何度も貫かれて敏感になった中をぐちゃぐちゃにかきまわしていく。

「いいよぉ、きもち、良い、いく、いくぅ!」

口を開けてキスを求めるとクローデもそうしたかったのか、僕の頬を引き寄せ後ろから唇を重ねた。
僕はもうこの雄に完全に惚れている。何から何まで彼のものだ。
そして彼も、もう全部、僕のものなのだ……。

「オルヴィ、一緒にイクか?」
「んんっ、いく、いかせて、クローデ……!」

後ろからぐっと抱きしめられて、僕の体が小刻みに痙攣するのと同時に彼自身も大きく脈を打った。
流れ込む彼の精を受け止められたことに、深い深い幸せが、体の隅まで浸透していく。

「はあぁ……」

くたりと床に伏せる僕の上で、まだ何か足りないのか背中に唇をつけてくるクローデ。優しくさらに求めてくるような愛撫が心地よくて、僕は眠気に誘われた。

「オルヴィ?」
「なあに……」
「お前まさかまだ寝ないよな?」
「眠いよ……クローデのちんちん、気持ちよかったぁ…」

素直にこぼすと僕はまた寝返りを打たせられる。
彼はこの長旅の疲れを微塵も感じさせず、まだまだ力強い雄のパワーを見せつけるつもりらしい。

「……ん? ……あ! ああ、まずい。そういやお前熱っぽかったよな。悪い、オルヴィ」

しかし途端に気づいたことに焦り始め、悔いの表情を浮かべ悩み出す。
僕は全然違うよと急いで起き上がった。

「ううん、むしろ元気が出たみたい。たぶん風邪気味だったのも、大好きなクローデの精が入ってなかったからだよ。ねっ?」

道理にかなっていると思い胸を張ったのだが、彼は目を丸くしたあと、ふっと笑って僕の頭を撫でた。
今日は一段とクローデの笑顔に会える。外は一面雪だけど、僕らはこんなにも互いを暖めあえる。

「クローデ、好きだよ……」

僕は床に腰を下ろす彼に抱きつき、いつもあふれでている思いを伝えた。
彼の両腕が僕の体を捕まえ、安心が広がる。そして頬を確かめるように撫でられ、せつなげに見つめられる。

「俺もお前が好きだ」

彼のその台詞だけで、僕の幸福は約束されていた。
それなのに。僕はまた信じられないほど素晴らしいものを送られる。

「俺と、家族になってくれないか? ずっとずっと、お前を大切にする。約束するよ……オルヴィ」

クローデが僕にそう言ったとき、泣き虫の僕はすぐに涙を流した。
ひとつ、ふたつ、こぼれていく涙を今度はからかわずに、彼の指が静かに拭っていく。

「なる。クローデの家族になるんだ、僕……っ」

言葉にしてさらに気持ちがあふれていった。

巣穴から出て、初めて彼の顔を見たときを思い出す。僕は、見知らぬものに触れる怖さを感じていたはずなのに、心のどこかで安心していた。

この人なら、大丈夫。僕を愛してくれる。
僕を受け入れてくれる。
僕の、家族になってくれるーー。

そんな願いがたった今、二人のもとに確かに落ちてきて、僕とクローデを繋げた。



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