反抗少年 | ナノ


▼ 4

学校で先生に股間を触られてから、俺は正直、先生を意識してしまっていた。
別にあの男が好きとかそういうことじゃない。
ゲイならではの怪しげな話術にかかり、ただ体が反応したのだ。
俺は、ホモじゃないのに。父ちゃんとは違う。

でも、ちょっとの間ちんぽを撫でられて、男の大きい手って結構気持ちいいんだなって、思ってしまった。


そんな先生は今、俺の家にいる。
月曜日に誘って以降、校内で出くわすたびに断られそうになった。
その都度俺は無視した。なぜなら本気で続きをしようと思っていたからだ。

いつも生徒を気にかけてくれる先生は優しくて、きっと放っておけないだろうと、ずるい考えがあった。
そうして本当に土曜日の夜、来てくれた。

「田中、風呂頂いたぞ。悪いな、今日は飯までご馳走になっちゃって」

風呂上がりの先生が髪をタオルで乾かしながら、居間へと戻ってきた。
ソファの背もたれに埋めていた頭を起こした俺は、返事をして立ち上がった。

だが目の前の男の姿を見て、思わず吹き出す。

「……あっはっは! なんだよそれ、なんで上下のパジャマセットなの? まだ八時だぞ。もう寝んのかよ先生」
「そんなに笑うことか…? 風呂上がりは普通寝間着だろうが」
「ふうん。まあいいけどさ。そうだ、ビール飲む?」

笑いをこらえながら何気なく尋ねると、いつも穏やかな先生の眉がつり上がった。

「おいお前な、生徒の家で飲酒なんかするわけないだろう。というかお前まさか飲んでんじゃないだろうな」
「俺のじゃないよ。親父のビールケースがあるから聞いただけだって」

正直に言うとため息を吐かれたが、注意をされるといかにも教師っぽくて若干どきどきした。
それに俺はビールの苦味は好きじゃないし、酒にもとくに興味は湧かなかった。

二人で居間のソファに腰を下ろし、テレビの音量を落とす。
興味深く先生を見ていると、いつもの黒渕の眼鏡をしていないことに気がついた。

「なあ、眼鏡はどこ?」
「ああ、あれは伊達メガネだ。数学教師っぽいだろ。誰にも言うなよ」

真剣な顔で釘を刺す男に、再び爆笑してしまう。先生はじとっとした目つきで俺を見やっては、また小さな息を吐いた。

見計らったように俺は隣に向き直り、じっと瞳を覗く。すると更に強い眼差しで見返された。

「田中。何度も言ってるけどな、俺は遊びに来たんじゃないんだぞ。分かってるのか、どんだけの勇気を持って俺がお前の家にお泊まりしているか」

確かに先生が来たとき、黒い帽子を深くかぶり、大きなリュックサックを背負って近所の目を気にしていて、かなり怪しかった。

「……そうか? 先生、そのわりにはすごく俺んちでくつろいでるよな。……それに、遊びに来たんじゃないの?」

もったいぶるように問いかけて、少し身を乗り出した。
先生の体に一瞬緊張が走ったのを感じる。

と思ったのだが、俺の足に長い腕が伸びてきた。膝の上に手のひらを置かれ、今度は俺が意図せず動きを止める。

「なんだよ……先生」
「……それはこっちの台詞だ。お前、何考えてるんだ? この前ので、何にも学んでないのか?」

低いトーンで言われてどきりとした。

「学んだから先生のこと誘ったんだろ」

膝の上で動かない男の手に意識が集中する。それを感づかれたくなくて、平気な顔をした。

「お前な……ちょっとしたお父さんへの仕返しのつもりなら、やめた方がいいぞ。田中、俺にとってもお前は大事な生徒なんだから、酷いことは出来ないよ」

俺に触れていた手が頭へと向かい、子供にやるように軽く撫でられた。
胸がちくりと痛むのと同時に、失望の気持ちが広がっていく。

先生の言葉ははっきり言って、図星だった。
親に傷つけられたのだから、俺だって同じぐらい傷つけたい。17にもなって俺はそんな幼稚な考え方しか出来ないのだ。

……でも、本当にそれだけだろうか?
先生の近くにいて何故か体が熱くなるような感じがするのは、一体どうしてなんだろう。

「先生。セックスって酷いことなのか? この前言ったことと全然違うよな。俺をすげー気持ちよくしてくれるって、あんたが言ったんだろ」

挑発的に反発すると、目の前の教師が一瞬怯む。
その隙を見て、俺はもっと体を近づけた。先生を覆うようにソファの背に手をつき、顔を寄せる。
わずかに傾けて唇を重ね、少しだけはむようにキスした後、また離した。

先生は何も言わず、すぐには表情を変えなかった。

「……何やってんのお前。教師にキスって……しちゃだめだろ普通に考えて」
「気持ちよかった? 先生」

まだ体の距離が近いまま、尋ねる。
すると先生は耳たぶだけほんのり赤くなっていた。いつもより無防備な状態だからか、眼鏡もないし余計に若く見える。

「まあ……そりゃ17才にキスされちゃうとね……興奮はするよな」

率直に告げながらやんわりと俺の肩を持ち、遠ざけようとする。
だが俺は引かなかった。熱が、明らかにのぼっていた。
先生もそうなんじゃないかと、ひとりでに考え始めていた。

しかしこの人は腐っても俺の教師で、10個以上も年上の人間だ。

「田中、お前に聞きたいことがあったんだけどさ」
「……なんだよ」
「この前俺がお前のこと、撫でてやっただろ? 覚えてるよな」

いつの間にか体勢が変わり、俺に向き直った先生によって、背もたれに押し付けられていた。
男の声で強めに言われると、同性なのに、なぜだか恥ずかしくなる。

「それが、なに? 覚えてるけど」
「……お前さ、その日の夜、絶対自分でしちゃったよな?」

薄く目を細めて、囁かれた。
カッと顔が熱くなった俺は、すぐに答えられなかった。

目を伏せて考えていると、先生の手がふたたび俺の膝の上に伸ばされた。
さっきとは違い、這った指先がどんどん真ん中に近づいてくる。

「……そんなこと、先生に、関係ないだろ」

やっとの思いで絞り出すと、小さく笑う声が聞こえた。
顔を上げた俺の頬をそっと撫でてくる。

「じゃあしたんだな? 本当のこと俺に教えろよ、田中」
「う、うるせえな。……っしたよ、別にいいだろが!」

ムキになって叫び、恥ずかしさのあまり髪をぐしゃりと掻き上げた。
先生の腹立つ笑みは止まない。

なんでこうなったんだ? こっちが先に主導権を握ろうと思っていたのに。

バレてしまったから白状すると、先生に触られたあの日の夜、ベッドの上で二回自分でした。
時々していた時よりも何故か興奮が治まらなくて、量も長く止まらなかった。

俺の意思じゃなく、勝手にそうなったんだからしょうがないだろ。
悔しく思いながら開き直る俺に、先生の信じられない台詞が浴びせられる。

「お前がもし、まだ俺とエッチなことしようとか考えてるなら、俺が目覚まさせてやるから。な? ……じゃあ田中、今から自分でしごいてみろ。先生の前でな、ちゃんとパンツ下まで脱いで。出来るだろ? ほら、お前のもうこんなに硬くなってんだからさ」

先生の人差し指が俺のズボンの膨らみを、下から上までゆっくりなぞっていく。
そんなことをされて、俺のは、硬くて熱くて、どうしようもなくなってしまった。

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