短編集 | ナノ


▼ 兄貴に勝てない

いつものように、夜勤明けの兄を車で迎えに行き、俺達は自宅に帰ってきた。
古い一軒家のダイニングキッチン。テーブル前に猫背で座る兄に、出来立てのインスタントラーメンを差し出す。

金髪をチャラつかせた不良のくせに、食べ方は綺麗な兄貴をじっと眺めた。

「なあ、さっきのことだけどさ」
「おい。頼むから食事中にセックスの話はやめろよ。俺今食べてんだからね」

夜勤明けで疲れてるんだと言われ、その通りだとは思う。
だが俺はまだ奴がどれだけ本気なのか信じられなかった。

車内で自分の気持ちを暴露させられてから、兄に「責任を取ってやる」と告げられ、なぜか腕相撲に勝った方がケツを掘るという約束を取りつけた。

勝負はもちろんガタイの良い俺が勝った。
しかし胸のうちはじりじりと焦らされたままだ。

「だってよ、気が変わるかもしんねえだろ……」

聞こえないように呟くと、兄貴はニタァと不愉快な笑みを広げる。

「可愛いなあお前は、でっけえ図体して。心配すんなよ後でやってやるから。兄ちゃん嘘つかねえだろ?」
「お前嘘つきだろうが!」
「てめッ、また言いやがったな、今度「お前」って言ったらもうアレだから、今回の話無しにするからな! あんま調子のんじゃねえぞくそガキ!」

激昂されて俺は一転大人しくなる。無しになったらいやだ。

その後も食べ終わるまで健気に待ち、食器を洗う横でビールと雑誌を楽しむ男を観察していたが、やがてリビングでくつろぎ始めたので諦めた。



自室へ帰り、一眠りしようと思いベッドに寝転がる。
目覚めたら夢だったとかやめてくれ、そう未練がましく祈りつつ眠りに落ちた。

どれぐらい時間が経ったかは分からない。しかし、寝てたら兄貴が乗ってきた。

「えっなに」
「やんねえのか? 早く来いよ」

低い声で見下ろされて飛び起きる。顔をさすって目を覚まそうとした。

「俺の部屋じゃ駄目なの?」
「やだ。俺自分のベッドじゃねーと無理」

残酷な奴だなと思ったが、いざ奴の寝床に着いたら興奮した。もう何年も中までは入ってない。というか部屋がごちゃごちゃしている。

「きったねえな片付けろよ、なんでゴミの日にちゃんと出さねえんだよ」
「別にいーだろが。つかそんな所で突っ立ってねえでこっち来いよ。なんだ、緊張してんのか」

にやにやしながらベッドの端に座り、煙草に火をつける。
俺はそれを取り上げて灰皿で消した。覆い被さって見下ろす。

あああ、ズボンに張りつくちんぽが硬い。
深呼吸をしようとしたら、股間を掴まれた。

「なあ、すげえガチガチ。お前ほんとに俺に興奮してんだな」

余裕の顔つきで頭を起こし、品定めするように見てくる。
俺は奴の後ろ髪をがしっと掴み、耳近くの襟足に鼻をよせた。肩がびくっとする。

「っ、にすんだよ」
「いい匂いすんな。風呂入ったの?」
「当たり前だろ。これからセックスすんのによ。俺は綺麗好きなんだよ」

まるで説得力がない。
本当は兄本来の匂いのままがよかった。

奴の長いTシャツを脱がし、胸にしゃぶりついた。
まったいらなのにどの女よりも興奮する。
薄い色の小ぶりな乳首もそそられる。こんなに吸いついたのは初めてだ。

「くくっ。お前は赤ちゃんになっちゃったのかな?」

くすぐったそうに笑う兄の前で恥ずかしくなる。
顔には出すまいと身を屈め、脇腹を舐めた。

指先で触れながら舐めると感触がよく、感じているのが分かる。
邪魔なズボンを下着ごと剥いでちんぽを露にさせた。

「半だちじゃねえかよ。感じやすいの?」
「っせーな、……ちょ、何すんだてめえっ」

俺は躊躇なく口を開け咥えた。
明らかに悶え始める兄の下で、一番声が聞こえてくる。想像通り止まらなくなった。

「ああっやべえ、俺フェラ弱えんだよ、あ、くそッ」

咥えてる間も兄はペラペラ喋る。
したことがないけど無我夢中でしゃぶった。
好きな相手ならなんでも出来ることを知る。むしろ何でもしたくなった。

「まて、おま、出る、あ、あぁっっ」

兄は俺の口に普通に出しやがった。
促したのは紛れもない自分であるから、俺も飲み干した。くそマズイ。

「はあ、ハア、何も飲むことねえだろお前、どんだけ俺が好きなの?」
「うるせえむちゃくちゃ好きだよクソ野郎ッ」

色んな思いと精液が混じり合い、切れながらキスをした。
柔らかい口内はちんぽより良い。離したくない、離れたくない。とまらない。

舌をからめ口内を犯して吸い尽くす。俺のことだけ考えさせて、感じさせたくなった。



俺だって普段なら段取りを守りたいタイプだ。
だがこの男の前では、何もかもがしっちゃかめっちゃかになる。

「お前さあ、その盛りの年でゴム持ってないとかありえねえんだけど。なに、ナマ派? 最っ低だね、俺ぜってーゴム無しじゃ女とやらねえから。どんな目に合うかもわかんねえしよ」
「うっせえ! 必要無かったんだよしょうがねえだろッーーっつうかどこにあんだよ!」
「あ。そこの引き出し」
「早く言えよ!」

屈辱を味わいながらイラつき最高潮で奴の棚をガサガサあさる。
やっと見つけた薄い箱の中にはゴムが二、三個しか残ってなくて更に腹が立った。

再びベッドに乗り上げ膝立ちでチャックを下ろし、無心で装着しようとする。
すると前から不躾な視線を感じた。

「あ? 何笑ってんの?」
「……いや? 笑うだろ普通に。目の前で弟が必死にゴムつけてたらよ」

俺はマゾなのだろうか。
年上の男に嘲りを受けてちんぽがさらに怒張するとは。

奴の両肩を掴みシーツに押し付けた。一瞬びっくりした阿呆面の兄だが、俺は目をじっと捕らえたまま優しく指をそこに這わせた。

すでにジェルで濡らしたおかげで、すんなり中に入る。「…アッ」という短い声も聞こえた。

「おまえ無言で突っ込んでんじゃねえよ!」
「ああわりいな、指入れんぞ」
「もう入れてんだろ! ……なあ、なんか言えば?」
「今真剣なんだよ、何言やいいんだよ」
「……さあ? ここがいいか、とか大丈夫?とか」

本当にウルサイ兄貴だ。
普段はそんな風にいちいち声をかけてるのかと想像して心に打撃を負う。
しかし冷静を装い必死に胸を静めさせた。

「今それを探ってんだろ。……どうだ?」

男のアナルの具合を至極真面目に確かめようとするなんて、こいつでなければ絶対にやらない。

もうすぐ、もうすぐ手に入る。
だがそう確信した俺に、まったく予期していなかった災難が降りかかった。

赤らんで小さな息を小刻みに吐く、奴の顔つきだ。
それは穴の気持ち良さをもとより「知っている」風に感じていた。

うそだろ。

「なあ、どこがいい?」
「……えっ? 知らねえよそんなのお前が見つけろや」
「いや、ここだろ……今完全にビクッてしてたぞ」
「あーあーじゃそこだよそこ! 分かったんならもっと攻めろよ!」

なんの色気もなく認める男に焦らされる。
俺は額の汗を気づかれないように拭った。

「ここ……初めてじゃねえんだな?」

わざとらしく視線をずらす兄の頬を掴み、自分に向けさせた。
珍しく奴は乾いた笑いとともに焦り顔だった。

「んな怒んなよ。女の子にちょっとお願いして弄ってもらってただけだろーが。いや、わりといるよ? そういう男」
「いねえよ変態ッ、つうか女だけだろうな!?」

気がつくと涙声になっていた。
俺が挿れるほうなのに、始める前からのこの敗北感はなんなのだろう。もういっそ全面的に降伏してしまえたらーー。

「なあ早くちんぽいれてみろよ、ずーっと兄ちゃんにいれたくてたまんなかったんだろ? お前」

こいつのこの、ぶち犯したくなる余裕の面はなんなんだ。
血管が切れそうなまま亀頭を押しあて、ぐっと腰を前にいれた。

「あぁアッ、てめっ、もっとゆっくりしろ!」
「……早くって言ったの兄貴だろ……ッ」

やばい。繋がっていく光景を見下ろして感動にうち震える。
俺のが完全に兄の中を埋めて、占有している。

「待て待て待て、でけえんだよお前! ぐっ……まだ動くなっつうの…ッ」
「ああ、悪い……止まってるから……」

両手をついて耐える。処女とやったことがないから言うことを聞くしかない。

「もういいか?」
「いいわけねえだろッまだ5秒しか経ってねえぞ!」

ジェルの滑りで大方挿入できたため、中の熱さを感じる。
動いてないのに奴の柔い肉壁に包まれて、どんどん気持ちよくなる。
こんなの、腰を振っちまったらどうなるんだ?

「なあ、もういい……? 頼む兄貴……、動きてえ……」

たまらず覆い被さると悲鳴が聞こえた。真下の顔を見下ろして、苦し紛れに頬を撫でる。
兄は恐々としているが、触れている頬は紅潮させている。

俺は奴の唇を塞いだ。両手を脇についたまま、舌をねじ込んで貪る。

「んっ、んうっ、ふ、ぁ、あぁっ」

腰を前後に引いて、揺らし始めた。
ゆっくりだが着実に中で律動させる。

「あ、アァ、んぁ、キール、くっ、あぁ!」
「……兄貴、……兄貴……ッ」

信じられない。いま、兄とセックスをしている。
これは夢だろうか?
良いことが起こりすぎている。俺は明日、ちんぽを失うのかもしれない。

「……くッ、……おい、お前、ちゃんとこっち見ろ」
「……え?」

幸福の最中いきなり相手に話しかけられ、俺は我に返った。

「気持ちいいか?」
「う、うん……」
「ならいいよ」

頭を抱かれて、子供みたいにぽんぽんやられた。
なんだこの、恥ずかしい雰囲気は。さっきまで獣のように腰を振っていたのに。

「あのな、俺別に、童貞とかじゃねえから」
「いや俺が処女だったんだからお前も童貞のようなものだろう」
「は? 意味わかんねえし」

っていうか処女って。自分で言うなよ。
またちんこがギチギチに硬くなってきた。

「おい、ちょっとバックでしたい」
「……はっ? おい乱暴にすんな!」

抜いて転がしてまた上にのし掛かる。
綺麗な白い背中を覆って手の甲を握り、後ろからまた突き始める。

「あ! やめっ! あ、あぁっ!」
「……あー……良いぜ、兄貴……」

真正面だと顔を見られて負けそうになるから、こっちのほうが全部俺のもの感があってもっといい。
兄貴の声もやたら艶がかっている。

「んあっ、まじで、やべえ、キール、一回ちんこ抜けっ」
「なんで? 気持ちよくないの?」
「……いや、イイんだよ、だから、抜けっ!」
「やだね、いいから我慢しないでイケよほら、イキそうなんだろ?」

中が相当慣れきって卑猥な音を出していたから、遠慮なく奥を突く。
体をぎゅっと抱きしめ突いて突いて揺さぶると、密着する兄からやらしい声が連発した。

兄貴も俺のちんぽで感じまくっている。自分よりでかい弟のちんぽで。

「ああ、やべえ、そこすげえ、いく、イッちまう、キール!」
「いいぜ、俺もイキそう、一緒にイク?」
「んっ、うん、い、イクぅ……ッッ」

脱力する寸前まで、ゴムの中に飛び散る精子。
本当は兄貴の中にぶちまけたかった。

「信じらんねえ、ほんとに中でイキやがった。思ったよりすげえエロい体してんだな兄貴」
「……お前な、いっぺん突っ込まれてみろ……。というか俺をもっと尊敬しろ、初めてなのにガンガン掘ってんじゃねえてめえ! つうかいい加減ちんぽどけろ!」

もう可愛いげのない真下の兄に怒鳴られるが、俺はこいつが思うよりも繊細なんだ。
出してすぐに離れるなんていうのは、嫌だ。

長めの金髪に鼻を近づけ、匂いをかぐ。
抜かないでまた後ろから抱きしめた。

「なに? なに甘えてんのお前。お兄ちゃんもう一発は無理だぞ」
「……分かってるよ。ちょっとぐらいいいじゃん。このままでも」

不思議だ。
終わった後にもっとくっついていたいと思うのは、やっぱり兄貴が初めてだった。

珍しく弟のわがままを聞いてくれていた兄だったが、そのまま二人でベッドにごろんとなった。
感慨深く思いながらゴムをしばる。
真っ裸で天井を見つめる汗ばんだ兄の体に、また手を伸ばしたくなるが、こらえた。

「マジでやっちまったな。俺たち」
「ああ、そうだな。……謝らねえぞ」
「んだよそれは。お前まさか定期的にヤりたいとか言い出すんじゃねえだろうな」

ムードもクソもない言い方にうんざりした。

「そのつもりだけど。別にいいだろ?」

身を乗り出して奴を挑戦的に見下ろす。

「胸を触るな胸を! このエロガキ!」
「兄貴が出してるからわりいんだろ。じゃ隠せよほら」

シーツでくるませてまた抱きしめた。
もうこいつは俺のもんだ。離すものか。

そんな小さいガキのような心もお見通しだったのか、兄貴は深いため息をついて、俺の頭を何度か優しく触ったのだった。


prev / list / next

back to top



×
「#甘々」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -