ハイデル兄弟SS | ナノ


▼ 弟の虜

俺は今、弟の部屋に備え付けられた浴室で、とんでもなく気持ちいい目に合っている。
弟の泡まみれの長い指がそこに触れられる度、はしたない喘ぎを存分に漏らしてしまうのだ。

「あ、ああっ、すげえ、気持ちいい」
「……そんなにこれがいいのか? 兄貴」
「うん……まじで、最高ー……」
「へえ、そうか……」

何故かクレッドの声は不満げだ。俺がこんなに感じているというのに、何が気に食わないんだよ?
小さな風呂場用の椅子に座っている俺は、前にある鏡越しに弟の姿を見た。
手にたくさん泡をつけて、かいがいしく俺の世話を焼いている。

「なあもっと、ぎりぎりの弱さで優しくやってみて」
「……は?」
「いいだろ別に。今日俺の言うこと何でも聞いてくれるって、お前が言ったんじゃねーか」

そう言って奴の胸板に自分の背を押し付けて、半分顔を後ろに向けた。
すると自然に弟の顔が近づけられ、頬にちゅっとキスをされる。しかしその口は、すぐにまた不埒なことを言い出した。

「でも兄貴、俺はそろそろ別のことがしたいんだけどな。……こことか」

クレッドが手を俺の下腹部に伸ばして、やらしい手つきで弄ぼうとしてくる。
俺は即座に体をよじり、拒否を示した。何故ならまだ俺の希望が無事に完遂されてないからだ。

「それは後だ! 早く続けろよ!」
「……はいはい」

なんだその不服そうな返事の仕方は。けれど文句を言うのは後にしよう。今は弟から与えられる手と指の快感に酔いしれることに、俺は忙しいのだ。

「ああーやっぱ良い……お前の手、超すごい……」
「それは良かった」
「んあ……もっと……ゆっくりなぞって……」
「……兄貴。そういう事はベッドの上で言ってくれないか?」

また手が止まってる。なんなんだこいつ。鏡越しに睨みつけると、頭から突然お湯をばしゃんとかけられた。全部泡が無くなって、気持ちよさが一瞬で消え去ってしまった。
ああ、俺の至福の時間がーー。

「ばか! 何すんだよ酷いぞ!」
「もう髪洗うのは終わりだ。早くお風呂から上がろう。……それとも兄貴、ここでしたいのか?」

振り向くと鬼畜の面で俺を見下ろしている弟がいた。俺はふくれっ面でせめてもの反抗を示そうとする。
するとクレッドは小さいため息をついて、苦笑いをした。

「そんな顔するなよ、兄貴。今度また洗ってやるから」
「……ほんとに?」
「ああ。でも条件がある」
「なんだよ?」
「二人でしてる時も、同じぐらいかわいい事言ってくれ」

突然の要求に俺はぐっと言葉を詰まらせた。はあ? 無理に決まってんだろ、そんな恥ずかしいこと。こいつ馬鹿か。
再びキッと睨みつけると、楽しそうな顔を向けられ、今度は俺が大きなため息をついた。

……まあ、確かに長時間拘束し過ぎたかもしれない。だってこいつ優しいし、結構丹念に洗ってくれるし。
でもああ、早くまた頼みたい。今度っていつだろうーー。俺はいろんな意味で、すっかり弟の虜になっていた。



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