俺の呪いをといてくれ | ナノ


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その夜、二匹の使役獣と弟子の相手を終えた俺は、クレッドの部屋を訪れていた。
遠征を終えて以来だから、すごく久しぶりに感じる。

とりあえず俺は、弟と一緒にいた美女が実は男で俺たちの幼馴染だと分かり、すっかり安心していた。
けれど同時に、新たに不穏な疑問が沸き起こり、弟に問いただそうと思っていたのだがーー

クレッドは俺の話を聞く前に、すぐにベッドに押し倒してきた。
こいつも俺と同じで、ちょっと欲求不満だったんだろう。
いやちょっとじゃないな。余裕のない感じで、さっきからずっと俺の口を貪っているんだから。

「んっ、んう、っむ」

お互いにまだ服を着たまま、覆いかぶさってる弟と唇を合わせている。
あまりの気持ち良さに、俺はきっとだらしない表情をしていたのだろう。
クレッドが口を離すその度に、驚いた顔でちらっと見てくる。

でもさすがに頻繁にされると気になってきて、奴の服を引っ張り、その蒼い瞳をじっと見つめた。

「おい。なに見てるんだ……?」
「いや、思い出したら嬉しくて」

何故か遠慮気味に呟き、笑みをこぼす。俺は弟の意図することが分からず、小首を傾げた。
するとクレッドは俺のほっぺたに唇を寄せてきた。
舌先を少し這わせてちゅっと短いキスをされ、ぴくりと震えてしまう。

「だって兄貴が初めて、俺のことで嫉妬してくれたから」

弟がにこっと笑ってそう告げた瞬間、自分の顔がぶわあっと赤面するのを感じた。

「な、なに言ってんだ! もう早く忘れろよっ」
「嫌だ。忘れない」

真剣な顔をした弟に即座に断られる。
俺が目を見開いて完全にパニクった感じで責めても、全く意に介してない様子だ。

「女だと思ったらカナンだったんだぞ、馬鹿みてーじゃねえかっ」
「相手なんかどうでもいい。兄貴が焼きもち焼いたって事実が大事なんだろ?」

やたらと嬉しそうな弟の一言が、完全に俺を黙らせた。
こいつ、さっきから好き放題言いやがって。俺の恥ずかしさ分かってるのか。

「お前だって焼きもち焼きだろっ」
「ああ、そうだ。当たり前だろ。兄貴が好きなんだから」

おい。それは、そんな風に強気に開き直って言う言葉なのか?
でもまたドキドキしている。何度言われても慣れることはない。

緊張が襲ってきて、俺は再び黙ってしまう。心臓の高鳴りを抑え、弟の真っ直ぐな蒼い目を見つめ返す。
するとまたクレッドが、俺の頭をぐらつかせるようなことを言ってきた。

「だって兄貴は、俺だけのものだ。……そうだろ?」

少し強引な言い方にドキリとした。
前のような不安げな感じではなく、確かめるように問われる。
う、なんか俺……やっぱりこいつのこと、好きかも。

「そうだよ。お前のものだって、何回も言っただろ」

照れ隠しのせいで、素っ気なく聞こえてしまう。
正直、好きだってまだ自分からはあまり言ってない。クレッドもそれは気付いてるだろう。
けど中々いつ言えばいいのか、分からなかった。

「よかった……嬉しい、俺」

俺の思惑をよそに、弟から純粋な笑顔を見せられ、心にぽっと火が灯り出す。
自分の言葉でこいつをそういう気持ちにさせる事が出来る。
俺もそれが嬉しくて、もっと感情を素直に表したい、そう思ってはいるのだけれど……




そうやって、俺達はすごく甘い感じに、二人の時間を過ごしていたはずだった。
まあ正直言うと俺の好きな雰囲気にもっていけるだろう……そう目論んでいたのに。
何故、こうなるんだろう?

例のごとく肌を重ね合わせた末に、俺はまたもや弟の罠にはまってしまっていた。

「……ん、あ……もう、離せ……!」

大きなベッドの中央で四つん這いになっている俺の腰を持ち、弟が後ろからゆっくりと自身を打ちつけてくる。
信じられないポーズを取らされ、羞恥で頭がおかしくなりそう。

「兄貴……こうするの、好きじゃない?」
「いや、だっ」

中に入ったものに震えながら、言葉だけでも必死に抗おうとする。
するとクレッドは喉の奥で微かに笑いをこぼした後、さらに深く腰を入れてきた。

「んあぁっ、奥、やめ……て」

弱々しく懇願すると、ぴたっと動きを止める。
はあ、はあと息を吐く俺の背中が、弟のしなやかな指になぞられる。

「まだ、後ろからするの……嫌か?」

艶がかった声で卑猥なことを問われ、体がさらに熱くなった。
そんなこと、俺の反応見て分かってるくせに。
でも嫌じゃないなんて言えない。本当は慣れてはきてるけど……それも言いたくない。

「別に、平気だ……っ」

可愛げのない返事をすると、またぐぐっと体重をかけてきた。
その度に意図せず腰を震わせ、みっともない喘ぎを漏らしてしまう。

「平気? それだけ……?」
「んあっ、うる、さいっ」

楽しそうに尋ねられ、ついカチンとくる。
素直に言ったって、こいつを喜ばすだけだ。
俺の反応が気に食わなかったのか、クレッドが腰の動きをもっと速めてきた。

「あ、ああっ、待って」

いい様に打ち付けられ、ベッドに両手をつきながら必死に耐える。
突然クレッドの逞しい両腕が俺の腹に回された。
後ろから体をぐっと引き起こされ、膝立ちのまま抱き抱えられる。

「ああぁ! 何するんだっ」

前のめりになりそうな俺を支える弟の腕を、とっさに掴む。
さらに深く繋がった状態で足に力が入らない。

「なんで、やだ、これ……」
「大丈夫だ。こうやって、抱きしめてるから」

耳の後ろで安心させるように言い聞かせてくる。
クレッドの胸板が背中のすぐ後ろにぴったりくっついているのを感じる。
まさか、このままするのか?
不安に思っていると、弟はまた俺を弄ぶような動きをしてきた。

「うあ、まって、だ、だめっ」
「……駄目? でも、感じてるみたいだ」
「ち、ちがっ、あぁっ、クレッドっ」

激しく突き動かされ、反動で離れそうになる腰をがっしりと掴まれる。
深いとこに当てられて、さらに快感を弄ばれていく。

「ここ、好き?」
「や、やだ、奥、だめだ……っ」

熱くなったモノが自由に出し入れされてる内に、自分でも抑えきれず、腰を揺らしてしまう。
ああもう、気持ち良すぎて、おかしくなってくる。

「クレッド、もう、イクっ………ん、んっ…………んあぁッ!」

背中が大きく反り返り、その瞬間、中がきゅうっと締まった。
腰を痙攣させ、一気に襲う快感を受け止める。

「もうイッたのか? 兄貴……」

弟がお尻を撫でながら感慨深そうに言う。優しい声色なのに、俺には意地わるく響いた。
激しく息をついていると、クレッドは俺の体を抱きかかえたまま、その場に腰を下ろした。
急に大きな振動が伝わってきて、思わず悲鳴を上げてしまう。

「……なに、して……」

後ろ向きの状態で上に座らせられ、敏感になっている体がさらにビクつく。
吐息が耳のすぐ後ろにかかり、体が熱く火照ってくる。
少し身じろごうとするクレッドの腕を、俺は焦るようにガシっと掴んだ。

「まだ動いたら、だめ?」
「……だ、ダメだ」

俺の普段の言葉を想定してたのか、後ろからくすくす笑い声が聞こえた。何がおかしいんだよバカ。

「じゃあその間、キスしていいか?」

本当に動くつもりないのか……いつもだったら強引にしてくるのに。
少し考えた後、顔を半分後ろに向ける。弟の手が頬に添えられ、口が触れそうな距離まで近づく。

でも何故か中々してこないから、自分から少し顔を寄せた。すると再びクレッドの口からくすっと笑い声が漏れた。

「かわいいな、兄貴」

またドキッとするような事を呟いて、唇を合わせてくる。
与えられる気持ちよさに、つい身を委ねてしまう。
でもやっぱりこの男が、じっとしているわけがなかった。

「んんっ……んうっ……?」

クレッドの腰がわずかに揺れだしている。
な、なんで? 
この嘘つき野郎っ、俺はすぐに口を離して抗議することにした。

「ま、まだ動くなって言っただろっ」
「ちょっとだけ……いいだろ?」
「まって、んあ、ダメ……だ!」
 
全然ちょっとじゃない。いつの間にか下から強く突き動かされてる。
イッたばかりなのに、ひどい。結局待ってくれないじゃないか。

「や、やだ、動かないで」
「でも、中が温かくて……我慢できない。俺も、気持ちよくなりたいな」

クレッドの淫らな弁明が聞こえてきて、何も言えなくなる。
されるがまま下から揺さぶられていると、後ろから聞こえてくる吐息が次第に短くなってきた。

「あ、兄貴、もうイキそ、う……いい?」

余裕のない声で尋ねられ、体がびくっと反応する。そんなこと聞かれても、困ってしまう。
俺も自分の状態がまた上り詰めてることを隠しながら、わずかに頭を頷けた。

「い、いい……」

この後に襲ってくる事を考えたら、本当は止めたいぐらいだ。でもそういう訳にもいかない。
俺の言葉を聞いたクレッドは、突然ぎゅっと強く抱きしめてきた。

「あ、イ……くッ……」

かすれた声で短く喘ぎ、中で弟のものがビクビクと何度か脈打った。
その瞬間、奥に精がたくさん放たれて、それが内側にじわりと広がっていく。

はあ、はあと荒く息をついて、弟が俺の肩に額をのせている。
俺に抱きついているクレッドの手に自分の手を重ねると、すぐに握り返された。そんな仕草にもドキドキしてしまう。
気づいたら、二人の体全体が汗ばんで湿っていた。

「……クレッド、もう、抜いて」

しばらく待ってから頼んでみると、休息を取っていた弟が急に俺の腰を持ち上げてきた。
その衝撃に驚き、また短い悲鳴を上げてしまう。

一言言えよっ、心の中で文句を言いながらも、素直に抜かれたことにびっくりしてると、いきなりまた四つん這いの格好にさせられた。

「な、なにっ?」

わけが分からず混乱する俺をよそに、突然後ろに指を入れられた。
あろうことか、弟の長い指が何本か入り込んできて、自由に中を探られる。

「んああ! なに、いやだっ」
「どうして? 全部掻き出して欲しいだろ?」

表情は見えないけど、平然と問われて開いた口が塞がらない。
確かに中に出されたものを留めておくのはつらい。
でも、こんな風に後ろから見られながらなんて、耐えられない。

「やめろ、バカっ」

すぐに指から逃れ、弟のほうを振り向く。
クレッドのびっくりした顔を確認すると、俺は衝動的に奴の体に抱きついた。
首に腕を回して、強引に自分の側に引き寄せる。

「もう! こっちに来いよっ」
「えっ」

弟の驚く声が聞こえたのも無視して、無理やり引っ張った。
ベッドに二人で倒れ、仰向けで向かい合う。
クレッドは目を見開いて、大きく混乱している様子だった。

「…………な、なんだそのかわいい行動は……やばいな」

飾り気なく素直に漏れてきた感想に、俺の顔がまたカッと熱くなるのを感じた。

「あ、あんまりそういうこと言うなっ」
「だって、すごくかわいい……」

弟がちょっと笑みを堪えたような顔を向けてくる。
また何回もそういうこと言って……俺を動揺させて楽しいのか。

「ごめん。恥ずかしかったか? もうしないから」

謝っておきながら、まだ少し笑ってる。
黙って目を逸らすと、頬に優しく手を添えられ、再び口づけされた。
味わうようなキスに、性懲りもなくとろけそうになる。

「んんっ……」

ああ、でも顔が近くにあるとやっぱり安心してきた。
いつからだろう? そんな風に思うようになったのは。

伸ばされた手に髪をそっと撫でられ、どきどきしてしまう。

「……好きだ、兄貴」

口を離して囁いてくる。
またその言葉を、先に言われてしまった。
急に心を鷲掴みにされ、時間が止まったような感覚になる。

真っ直ぐと見つめてくる瞳には今、俺だけが映し出されている。
そのことに安心して、全てが満たされていく感じがした。

「俺も……好きだ。クレッド」

弟の体に腕を回し、小さな声で呟いた。
ぎゅっと抱きしめ返され、耳元で「嬉しい」と返事をもらう。

ああ、こんなにも簡単に、気持ちが押し上げられていく。
弟のキスに再び溺れながら、どこまでも落ちていってしまいそうなほど、その時の俺は幸せを感じていた。



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