俺の呪いをといてくれ | ナノ


▼ 54 譲らない兄弟 ※

騎士団宿舎に帰ってから依然として興奮状態の弟に、俺は無理やり奴の部屋へと押し込まれた。
大きなベッドの上で、されるがまま肌を重ね合わせ、すでにどれぐらい時間が経ったのか分からない。

「……はあ、はあ、……クレッド……一回、抜いて……」
「駄目だ、まだ……足りない」

覆いかぶさっている弟が、ずうっと俺に目線を合わせながら、自分の腰をゆっくり打ち付けてくる。
何か言いたげな、責めているような蒼目を、俺は見つめ返して懇願する。

「なんで、……もうずっと、お前の、入ったまんまだ……」

下にくる振動に耐えながら、その行為を咎める。でもクレッドの反応はそんな俺を楽しんでいるかのようだった。
にやっと笑って、さらに体重をかけてくる。

「ああっ、なに、や、やめろっ」
「……止めろ? もっと、だろ? 兄貴……」

足を持ってさらに開かせられ、奥にねじ込んでくる。弟の汗ばんだ厚い胸板が、俺の上半身にぐっと押し付けられる。

「んあ、まって、深い……っ」

弟がすでに知り尽くしている、俺の気持ちよくなる所ばかり攻めてくる。

「ああ! やだ! クレッド!」

駄目だ、さっき達したばかりなのに。際限がないことはもう知っているのに、どうしようもならない。
俺の力が抜けてるのも気にせず、弟はしつこく動いてくる。

「やだ、止めてっ、もうイッたから、ああっ」
「それは知ってるが……俺はまだだぞ、兄貴」

弟が偉そうな口調で宣言してきた。何言ってんだ、もう何度もしたくせに。

「……兄貴、また……出すぞ」

ああ、またやって来るのか、あのとめどなく襲いくる快感が……
俺は弟の肉体の支配下に置かれながら、心の内で恐怖に震えていた。

「…………イ、く…ッ」

クレッドが短い喘ぎを漏らし、ぶるるっと腰を震わせる。その瞬間、温かい液体が奥深くに流れ込むのを感じた。
さらに重い体をどさっと俺の上に乗せてきて、心臓の音が直接ドクドク響いてくる。

「何回、出すんだよ、おまえっ」

半分涙声で、息を上げている弟を責める。するとクレッドはゆっくり頭を起こし、俺の目をじっと見てきた。
優しい蒼い瞳がわずかに潤んでいる。なんだその、満ち足りた顔は。

「兄貴、かわいい……」
「……は? ふざけんな早く抜けっ」

精一杯、自分の状態を悟られないように弟をなじる。
だってもう、俺の中にはたくさん奴のアレが出されて、疼きが止まらなくなっていた。一刻も早く掻き出さないと駄目なのだ。

「なあ、俺の……そんなに気持ちいい?」

果てたばかりだというのに、もう疲れた様子を見せずに、楽しそうに尋ねてくる。

「黙れ……っ」
「だって兄貴、いつも掻き出してって、うるさいだろ?」

うるさい、だと? この野郎。お前のせいだろうが。
キッと睨むが、奴はにこにこしている。この男、性格悪くないか?
でもしょうがない。ここは下手にでるしかない。

「だから、早く中の……出して」

屈辱を飲みこみながら、奴の二の腕をつかんで頼む。
すると弟が少し目を細め、その端正な顔立ちに愉悦の笑みを浮かばせた。

「しょうがないな……」

俺の頬を愛おしそうに撫で、けれど興奮した面持ちで告げる。
その上から目線の言葉に、腹立たしさをぐっと堪える。だいたいなんで俺が頼むんだよ、こいつのせいなのに。

「じゃあ俺の上に跨って、膝立ちになって」

……は? 
よく意味が分からず呆然とクレッドを見ていると、奴は俺の体をゆっくりと抱き起こした。
座る弟の目の前で、言うとおりに膝をついて、肩に両手を置かされる。

「この体勢、嫌だ。俺疲れてるんだけど」
「わがままだな、兄貴は……じゃあ、俺にしがみついてていいぞ」

目線が下になった弟に聞き捨てならない発言をされるが、仕方がなく肩につかまって奴の指の動きを受け入れることにした。

「ん、ああ……ん、んう、あぁっ」
「すごい、柔らかい……たくさん俺の……入ってる」

なんで説明してくるんだ、この変態。
ぴちゃぴちゃと卑猥な音が耳に響き、耐え難い羞恥が生まれていく。

「あんまり、動かすな……んあぁ……」
「何言ってるんだ。動かさないと、全部掻き出せないだろ?」

それはそうかもしれないけど、こいつの不自然な動かし方が信用できない。

「あ、んんっ……お前、……ただ掻き回してる、だけじゃないかっ」
「そんな事ないぞ。……ほら、兄貴のことも気持ちよくしてやるから」

やばい、言わなきゃよかったかもしれない。
尻に入り込んでいる長い指が、さらに奥深くを探り当てるような動きをしてきた。

「ん、あ、ああ、なに、やめて」

そこばかり指の腹でぎゅうっと押され、反応を楽しむように緩急つけて撫で上げられる。
たまらず弟の首にしがみつき、快感を紛らわせようとする。

「ここ? 気持ちいい?」
「……ち、ちがう……やだ……」

否定してもバレていることは分かってる。だって俺の弟は、俺のこと何でも知ってるんだ。
 
「兄貴、俺の体に、自分の押し付けてる……」

クレッドが俺の耳の近くでまた腹立たしい事を言ってきた。確かに自分のが勃っていることは、気付いていたけど。

「うるさい、いいだろ別にっ」
「駄目なんて言ってないだろ?」

奴の胸の少し下あたりにぴたっとくっついて、ちょっと押し付けてるかもしれない。だってこいつが、変な動きでずっと尻を弄ってくるからだ。

「兄貴、自分でしてみせて……」

不意に発せられた弟の言葉に耳を疑い、俺は体をすぐに離して奴を侮蔑の目で見下ろした。

「ふざ、ふざけんなよお前」
「どうしてだ? ……中に入ったもの、全部掻き出して欲しいんだろ?」

は? こいつ俺を脅してる。本当なら甘い雰囲気になるはずだった、大事な営みの最中に……

「いやだ! そんなこと出来ない!」
「じゃあ一緒にやろう? ほら、こうして……」

弟の手が俺の手を上から握り、そのまま性器に伸ばされる。
有無を言わせない視線と、いまだに続く後ろの快感に追い立てられるように、前にも手を這わされた。

「んあ、あ、はぁっ」

もうやだ。なんで俺、こいつの目の前で自分の扱いてるの?
前もこんな事はあった。鎧姿の弟から、ひどい尋問を受けた時だ。でもあの時より今のほうがもっと恥ずかしい。

「兄貴、そんなふうに、自分でするのか……?」

信じられない質問をしてきた弟の手が、不意に俺の手の甲から離された。
完全に一人で握っている状態になり、一瞬で顔がカッと熱くなる。

「なんで、バカ! やめろ!」
「止めろって何だ? 俺は何もしてないぞ」

俺が自分のから手を離そうとしたら、手首をがしっと掴まれた。くそ、やっぱり強要してきた。

「駄目だ、続けて兄貴」
「やだ……したくない……」
「じゃあ後ろも、このままでいいのか?」

ひ、酷すぎる。今日のこいつは何故こんなに強気に攻めてくるんだ。
色々溜まってるのかな? 師匠の事とかがあったから。だってこいつ、あのおっさんに凄い対抗してたもんな。

「何考えてるんだ? 兄貴、集中しろ」

はっとするような厳しめの声で言われ、奴の監視のもと手の動きを再開する。
俺の兄貴としての誇りとか、もうなくなったんだけど。
恨めしい雑言が沸き起こるのに、何故か俺は弟の命令を大人しく聞いていた。

「あ、ああっ、クレッド、もう、だ、だめっ」
「ん? もうイキそう……?」

膝で立っているのも限界だ。性器を擦る振動に合わせて、後ろもぐちゃぐちゃ指でもどかしい快感を味わい、我慢しても腰が動いてしまう。

「いいぞ、イッて、兄貴」

そう言われた瞬間、下から覚えのある感覚がじわっと登り詰めてきた。
ああ、だめだ、もうーー
俺はすぐにクレッドの首に片腕を回してしがみつき、奴の顔をぎゅっと自分の胸に埋めさせた。

「ああ、で、出る……ん、んんっ、ああぁッ」 

腰をびくびく痙攣させ、手の中に自分の精液を思う存分吐き出してしまう。
力なく腰を落とし、クレッドの肩に頭をつけて、ぜえぜえと息を整える。

「はあっ、はあっ、はあ……」

我に返って顔を上げると、何故か口を半開きにした弟と目が合った。驚いたような、うっとりした目つきで俺を見ている。

「……すごくかわいい、兄貴」

甘やかな言葉とは裏腹に、奴の蒼い瞳がどこか時折見せる邪な輝きを放っていた。
俺の手を持って白濁液を丹念に舐めとってくる。
赤い舌がやらしく動いて体がビクンとする。……やめろこの変態男っ。

「気持ち良かった?」
「……うるさい、もう指抜けっ」
「ひどいな。そんな風に言われたら、余計に抜きたくなくなる……」

拗ねたような顔をしてるけど、口元が笑って見える。こいつ、また何か企んでいるのか。

「兄貴が俺の欲しいっていうまで、このままだぞ?」
「なに、言ってんだ! 俺は言わないぞ!」
「……そうか? 我慢出来るかな?」

クレッドが俺の腰をさらに自分のほうに引き寄せて、肩に舌を這わせてきた。
出したばかりで敏感になっている体が、否応なしに反応してしまう。

「ん、ん、やだっ」

また少し腰を持ち上げられ、胸の先を舌で舐めながら時々吸ってくる。
視線のすぐ先に弟の顔があって、耐えられず押し返そうとするけど全然動かない。
悲しいけど俺ももう、力が残ってないみたいだ。

「なあ、兄貴……欲しいって、言って」

挿入させた指を飽きもせず弄り回しながら、頬をほんのり赤く染めた弟が頼んでくる。
いつもだったらさっさと降参していたかもしれないが、今日はムカつく。
この流れでこいつの望みを聞き入れたくない。

「嫌だ、勝手に入れろよっ」
「ひどいぞ、それ……」

俺を責める言葉を述べてるのに、顔は笑っている。くそ、いつまで続くんだ、このくだらないやり取りは。
そう思っていると、弟の顔が近づいてきた。耳たぶをいきなり唇にぱくっと挟まれ、全身がぞわりと震える。

「んあっ、やめろバカっ」
「……俺のこと、欲しがって、兄貴」

色づいた声で告げられ、体がぶわっと熱くなる。もうやだこいつ……すごく諦めが悪い。俺もだけど。

「ほら、腰揺らしてる……指だけじゃ足りないんだろ?」
「あ、あぁっ、はあっ」
「正直に言えよ、兄貴」
「やだぁっ、もうっ、分かったから、やめ、んあぁっ」

動きをぴたっと止めて、俺を真っ直ぐ捕えてくる。
俺がやめろと言ったから止めたわけではないことぐらい、分かってる。
何故か不思議そうな顔つきをされ、途端に恥ずかしさが募ってくる。

「ん? じゃあ教えて、何が欲しいんだ?」
「…………欲しい……」
「なに? もっとはっきり言って」
「早く、お前の、入れて……っ」

あんなに拒んでいたのに結局言わされてる。色んな思いが混じって、顔がさらに火照るのを感じた。
すると弟の顔が急に真剣な顔になり、間近で俺をじっと見つめてきた。

「ああ、なんでそんなに、かわいいんだ?」

……え? 一瞬思考の止まった俺の腰をがしっと掴み、突然自身をずぶっと挿入させてきた。

「んああぁッ」

下から強く打ち付けてきて、ガンガン突き動かされる。
思いもよらぬその激しさに、必死に弟にしがみついて離れないようにする。

「あ、ああっ! やだっ、クレッド!」

力が失われ、自分で体勢を取れずに足がガクガクしてきた。
クレッドがそんな俺を抱きしめるように、背中にがっしり腕をまわしてくる。

「しっかり掴まって、兄貴、俺が動いてあげるから」

こいつの体力どうなってるんだ。なんでそんな余裕なんだよ。
でも俺は文句を噛み殺し、ただ揺さぶられ快感を貪るだけだ。

「はあっ、ああっ、まって、そんな、は、速く、しないでっ」
「……でも、激しいの、好きだろ? ほら、中が……欲しがってる」
「やだぁっ、クレッド! もう、ああっ!」

何度目なのか分からないけど、またその時が来ようとしている。
力の限り弟の体をぎゅっと抱き締め、その衝撃に備える。

「あ、んああっ、い、イク…………んああぁッ!」

下腹部がきゅうっと収縮し、中で二度三度痙攣するのを感じる。それに合わせ腰もビクビクビクっと大きく震えた。

「あ、あ……すごい、締め付けてきた、今……」

わずかに息の上がったクレッドが感慨深そうに俺を見つめ、呟く。
俺はもう少しも体を動かすことが出来ずに、ただぼうっと弟を目に映していた。

するとまだ何かを言いたそうな弟が、俺の体を抱きかかえながら、ゆっくりとベッドへ押し倒してきた。

「な、に……やだ……抜いて……」

もう反抗する気力もなく、か細い声で告げる。
クレッドはそんな俺を愛おしそうに眺め、ほっぺたに大きな手を這わせた。
優しく撫でられて、ピクリと肩を震わせる。

弟がゆっくりと顔を近づけ、味わうような口付けをしてくる。
舌を絡めとられ、その気持ちよさに浸っていると、そっと口を離された。

「でも、俺はまだだぞ、兄貴……」

欲望をはらんだ笑みで言われ、体が硬直する。
その言葉、さっきも聞いたような気がするんだけど。
一体いつまで続くんだ? この弟による終わりなき支配はーー。



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