俺の呪いをといてくれ | ナノ


▼ 15 はやる気持ち ※

今日は色々抱えきれないことが起こりすぎた。振り返りながら、俺は与えられた個室のベッドに身を沈めていた。
尋問中に呪術師に呼び出された際、クレッドから今日の夜、待っていてくれと言われた。あれはやっぱり、部屋に行くから覚悟しとけよという意味なんだろうか?
……もうすでに夜なんだけど。ふざけんなあいつ来ねえじゃねえか。

いや、別に期待して待っているわけじゃない。昼のことで体が疼いたりしてるわけでも、あいつと初めてしたキスを反芻してしまったりするわけでもないーー
……いや、嘘だ。実はもの凄い考えてしまっている。

「なんで、好きとか言ったんだ……」

静かな部屋に独り言が虚しく響いた。こうやってゴロゴロしていると、まどろみが襲ってくる。だって今日、いや昨日からか、本当に疲れたもんな。魔法とか久しぶりに使っちゃったし。

とりとめのないことを考えている内に、俺は知らぬ間に意識を失い始め、眠りに落ちていった。


※※※


その時、夢を見ているのだと思った。体全体がふわふわと浮いているような心地良さを感じながら、下半身の辺りに何とも言いがたい快感が走る。ああ、夢の中でしてる時みたいな、あの異常なまでの気持ちよさ……

「ん……あ……ぁあ、……っんん……」

…………ん? なんか自分の声が漏れている気がする。やばい、夢の中だけじゃなく外でも喘いでしまっているのか? 焦りながら早く目覚めろと力を入れると、急にパチっと目が覚めた。

体が肌寒い。それに、腹の辺りにふわっと柔らかい髪の毛が当たっている。
……え? どういうこと? 俺はガバっと飛び起き、周囲を見回した。

「あ……? お、前……」

そいつを見て、愕然とした。裸のクレッドが俺に半分、覆いかぶさっている。奴の息づかいを至近距離で感じ、予期せぬ事態に身をすくめる。

「やっと起きたのか? 中々目覚めないから心配したぞ」

平然と言ってのける弟に、何かを言いたいのだがぐるぐると目眩が襲い、言葉が出てこない。

「……ふ、ふざっ、お、おまっ、何やってんだよ!」

やっとの思いで口にしたかと思うと、俺はとっさに自分の下半身に目を向けた。た、勃ってるし。つうか完全に裸なんですけど。まさかこいつがやったのか? いやこいつしかいねえ。
咄嗟に奴を押しのけ、布団で隠す。憤りと悔しさが混じり合う中クレッドを睨むと、奴はにやりと笑った。

「この野郎……!」
「ちょっと舐めただけだ。寝付きがいいのか、何度呼んでも全く起きないんだな。兄貴、昔からそうだったよな」
「いつの話してんだよ! 寝込み襲うなんてサイテーだぞッ!」

ぜえぜえ言いながら弟の不埒な行いを咎めようとするが、全然堪えている様子がない。人を裸にした上、好き勝手しようとするなんて、普通に頭がイカれてる。

「先に寝てたからだろ? 待っててくれって言ったのに。……そんなに疲れたのか?」
「ああ、すげえ疲れたね。お前のせいで」
「それだけか? 呪術師になんて言われたんだ?」

クレッドは強引に布団を剥ぎ取ると、俺の胸の辺りを手で撫で始めた。久しぶりに直に触れる感触に、意図せずびくりと反応してしまう。

「……さ、触るなっ、また尋問する気かっ」
「いいから教えろよ、兄貴」

急かすように険しい顔を向けられる。どうせ本当のこと言っても怒るんだろうと思ったが、いつかバレてしまうなら話したほうがいいのかとも思った。……全く気乗りはしないが。

「別に……教会の元で働かないかとか……そんな様な事を言われただけだ。俺の力が必要だとか嘘言いやがって。くだらねーだろ」

あの呪術師、エブラルが提示した本当の内容は、俺を襲った男の調査とクレッドの秘密保持を条件に、教会所属の魔導師として活動しないか、ということだった。
なんだか、こいつに秘密にしている事がどんどん増えていく気がして、心が痛んでくる。

「……なん、だと? 兄貴にそう言ったのか」

ほらな、やっぱり不機嫌になったか。さり気なく顔を見ると、怒るというよりも、もの凄い形相で静かに怒りを溜め込んでいる、という表現の方が正しかった。
血管浮いてるし、何より目つきが悪い。綺麗な顔したやつでもこんな怖い顔できるんだな、と素直に驚いてしまう。

「……それで、何て答えたんだ?」
「いや、断ったけど頑固な野郎で……考えといてくれってさ。……な、なあ、落ち着けよ。また理不尽にキレたりすんなよ?」

不気味に黙りこくっているかと思えば、クレッドは急に俺のことを睨みつけてきた。体をさらに密着させ、硬くなった自分のモノを下に擦りつけてくる。

「ん、んぁっ、や、やめっ」
「兄貴……全然分かってないんだな」
「……っは? ……ぁあっ、……な、にが」

ぎゅっと抱きつかれ、首筋を指でなぞられる。急にそこに吸い付いてきたかと思うと、喉仏を舌で愛撫し始めた。きつく吸われ、息苦しさを感じる。
しなやかな指が今度は俺の髪に入り込み、優しい手つきで掻き上げられると、全身にぞくぞくと快感が伝わり、自然に声が漏れる。

「う、ぁ……っ……んん……」

気がつくと目の前に浅く息をつく弟の姿があった。やらしく濡れた唇が気になり、じっと見てしまう。

「なぁ、口開いて……兄貴」
「は……?」
「もっと」
「なに、言って……」
「……舌、出して」

言われたとおり口を少し開けて舌を見せると、クレッドがすぐに自分の舌を重ねてきた。

「ん……ぅあ……はぁ……」

舌先で舐め合うようなもどかしさに耐えられず、大きな背中に回す手に力をいれる。クレッドは自分の舌を離し、距離を取った。俺はぼうっとして奴の顔を見上げる。

「物欲しそうな顔だな、兄貴……」
「う、うるせえ…っ」
「キスするの、好きか?」
「………なんで、そんなこと聞いてくるんだよっ」

クレッドは再び顔をギリギリのところまで近付けて、唇が触れるか触れないかのところで止まった。鼓動が早まるのを感じ、落ち着かない。昼間はあんなにがっついてきたくせに、なんでこいつ焦らしてくるんだ。

「あの男にも……されたのか?」
「……え? ……まだ言ってんのか、お前……そんなこと……されてねーよ」
「本当に?」
「ああ」

焦りが滲むその表情に困惑する。だからそんな、子供みたいな面すんなよ。どうしちゃったんだ、こいつ……
俺はクレッドの黄金色の髪に触れ、まるであやす様にゆっくりと撫でた。なんでこんなことしてるのか、自分でも不思議だ。

「兄貴……」

クレッドが切なそうに俺を呼び、ようやく唇を合わせてきた。舌が俺の口の表面を舐めるように中へと入り込み、唾液を絡ませながら、深く口付けられる。

「んうっ、ん、ふ……ぁ、んんっ……んっ」

キスしながらクレッドの腰がゆさゆさと上下に動かされる。すでに互いに勃ってしまったものがいやらしく擦り合い、その強すぎる両方の刺激に我慢できなくなる。
俺は口を無理やり離して、弟に視線を合わせた。

「も、もう、ま、待って、で、出そう」

下に集まる快感を必死に堪え、クレッドの胸板を手で押しながら止めようとする。だが奴はしつこく動きを止めようとしない。

「……キスしながらだと、気持ちいいんだろ?」

そう言って俺の唇を奪い、さらに体を押し付けてきた。だめだ、本当にやばい、このままじゃ簡単にイッてしまう。
突然クレッドの動きが静まった。体の疼きを抑えながらじっとしていると、俺の首筋から胸に口づけが落とされる。それがさらに下の方へ向かい、手触りのいい柔らかな金髪が太ももに触れた。開かされた太ももの内側を舐め取られ、身震いする。

「は、ぁあ、んぁ……」

奴の顔がもっと下の方にいったときに、俺は焦って体を起こそうとした。だが長く逞しい腕に阻まれ、完全に起き上がることが出来ない。
クレッドは俺の勃ちあがった性器を手で包むと、信じられないことに、それに自らの舌を這わせた。

「……な、あぁ! や、やめろ……あぁ、……はぁっ」

根本から先まで赤い舌が艶かしく動き、時々吸い上げる。その衝撃的な光景に俺はどうしていいか分からず、ただ背中を仰け反らせながら喘いでしまう。

「うぁっ、あ、やめっ、く、くち、はなせっ」

だがクレッドは構わずそれを口に含ませる。温かく湿った口の中に吸い付かれ、それが上下に動き出すと、襲い来る快感の中で身悶えする。
俺のを喉まで咥える弟が時折見せる悩ましい表情に、じわじわと言い様のない感情が沸き起こる。こんなことをさせてはいけないのに、気持ちよさに抗うことが出来ない。

「は、はあっ、も、もう、クレッドっ、で、出る……からっ」

両手を後ろについて座り、腰だけ浮いてしまうような格好で、弟に自分のを舐められながら快感を貪る。
もうすぐイキそうなことを告げると、クレッドの口の動きがさらに激しくなった。

「んんっ、んあっ、イクって、もう、あっ、で、出るっ、は、はなっ、……あ、ああぁッ!」

腰を数回ビクビクと震わせ、内側から湧き出るそれを思いのまま外へと放ってしまった。ドク、ドク、と心臓が重い音を刻み、脳の奥深くまで響いてくる。

「……は……ぁっ…………ご、ごめっ……」

ぼんやりしてしまいそうになるのを堪えてクレッドの方を見ると、何かを口に含んだ状態の弟が今まさに、口内のそれをゴクリと飲み込もうとしている場面を見た。
……え、……嘘だろ……。

「お前、の、飲んだ……?」
「……ああ。当然だろ?」

茫然自失の俺の前でそう言い放ち、口についた残りを無造作に手で拭った弟に対し、俺は突然襲ってきた目眩を防ぐことが出来なかった。



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