お父さんにお世話してもらう僕 | ナノ


▼ 30 親心、恋心 前編

ロシェが十六歳になった今年、俺の母が亡くなった。
去年の秋頃、手術をした際に進行性の癌が見つかり、手の施しようがなかった。

俺はすぐに息子に病気のことを言えなかった。事故から七年が経つが、高齢の祖母であるとはいえ身内の死を予感させるものが、心にどのような影響を与えるか、不安が過ったためだ。

しかし長く隠しておくわけにもいかず、見舞いからしばらくして病状を打ち明けた。息子は大きなショックを受け呆然としていたが、それ以上に俺のことを心配した。
自分にできることは何でもすると言い、懐いていた祖母に会いにいくときは、なるべく笑顔で振る舞い、残された時間を大切に過ごしているようだった。

それから約半年が過ぎた頃、とうとう別れの日が訪れ、母の葬式が執り行われた。
本人の希望通り、自宅に親しかった人を呼ぶだけの、こじんまりとした式だ。俺とは違い明るく友人が多かった母のもとには、多くの弔問客が訪れた。

親友のセルヴァ、義父のブレットさん、義弟のギルも来てくれて、皆男泣きをしていた。俺は泣かないと決めていたが、出棺が終わり、墓に無事に埋葬された光景を見ているときに、隣に立つロシェに話しかけられた。

「お父さん、大丈夫?」
「ああ。大丈夫だよ」
「……僕はずっと一緒にいるからね。心配いらないよ」

同じく黒のスーツをまとい大人びた装いの息子に見上げられる。太陽に透けた青い瞳には強い意思が感じられた。

祖母が息を引き取ったときも式のときも、ずっと涙をこぼしていた息子だったが、俺を支えようとしてくれている。
その時だけは、冷静でいようと思っていた心が崩れ、自分も泣いてしまった。
 
母親を失う辛さは、きっといくつになっても同じで、心にぽっかり穴が空いたような喪失感を味わうはずだ。
ロシェは、九歳のときにそうなった。一緒に過ごせた時間は短く、心の準備も出来ていないうちに。
当時のことを考えて、再びどうしようもできない痛みが襲う。

けれど息子はいつの間にか成長し、人のことを考えられる人間になった。父親として誇らしく嬉しく感じる一方で、自分はどうなのかと悩ましく思う。

親はいつか死ぬ。俺も同じだ。
自分が死んだらこの子はどうなるのだろうと、誰しも一度は考えることだろう。

そう考えたとき、俺はその前に、早くロシェを手に入れたいと思ってしまった。完全に自分のものにして、より深く愛したいと、そんな願いに囚われた。

親の務めは、自分がいなくなっても子供が一人で生きていけるようにすることだと、固く考えていたはずが。
親としての感情よりも、ロシェを愛するひとりの男として、そう願ってしまったのだ。



「お父さん、お祖母ちゃんの家全部片付けるの、すごく時間かかるね」
「ああ、物が多すぎるんだよな。まったく、あれだけ捨てろって言ったのに」

葬式からひと月後、俺は息子と二人で実家に来ていた。ようやく気持ちが落ち着き、母の家の中を片し始めようと決めたためだ。
これから毎週末、少しずつ掃除をし、完全に空にする予定だった。

この一階建ての住居は元々、俺が若い頃に亡き父と共同で買ったものだ。そこに両親が住み、三人家族の俺達は今いる大きな古い一軒家へ移り住んだ。

この家はいずれ賃貸にしようと考えていたので、少し綺麗にする必要がある。
完全なバリアフリーではないため、車椅子では入れないが、息子もリビングの椅子に座り、机の上の雑多なものを整理してくれていた。

母の貴重品や形見以外、俺にとってはほとんどが不要品ではあったが、その数の多さには途方に暮れそうになる。
しかしあるものを一挙に机に運ぶと、ロシェが興味深そうに声を上げた。

「うわ、すごい量の写真だね。お祖母ちゃんの旅行のやつとか、何冊もあるよ」
「ああ。全部ごみだな。捨てていいよ」
「ええっ? 捨てちゃうのお父さん」
「いらないだろ。取っておいたら、いつかお前がひとりで片付けなきゃならなくなるんだぞ。そんなの面倒に決まってーー」

本を追いやりながら何気なく口をついた台詞に、はっとなった。
ロシェを見ると、明らかに悲しげな表情をしていたため、俺は眼鏡を直し言葉を改めようとした。

「いや、そういう意味じゃなくてな…」
「お父さん、デリカシーないよ。お父さんは、長生きするんだからね。お祖母ちゃんよりもだよ」

どこか潤みながらじっと見てくる子の瞳に、俺は何も言えなくなった。床についていた膝を起こし、立ち上がる。
ロシェの前に行き、上から肩を抱き締めた。薄茶色の髪を謝るように撫でて、実際に「悪い」と口にした。

「わかった。俺は長生きするよ」
「本当に?」
「ああ。なるべくな。お前の世話もあるしな」
「そうだよ。僕、お父さんがいなかったら何も出来ないの、知ってるでしょ」

そんなことは全く無いだろうと思いながら、珍しく自虐的な息子の主張を素直に受け止めた。
ほっぺたを撫でてやると、少しだけそこが赤らみ、誘われるように軽く口づけをする。

葬式のときは励ましてきたくせに、こいつはたまにこうやって甘える面を放出してくるから油断ができない。
見つめ合い、一瞬作業を中断して息子にかまいたくなったが、ひとまず我慢をした。まだやるべきことが山ほどある。

「……あれ? これお父さんの若いときの写真だ! 見てみて、子供のときもある〜。まだ眼鏡かけてない!」

それからしばらく片付けをしていると、突然のはしゃぐ声に手が止まった。リビングに戻れば、息子が何やら俺の昔のアルバムに見入っていた。

素早く取り上げ、中身を確認する。おかしなものがあったら見せたくはない。

「ねえ、僕にも見せてよ。可愛いね、昔のお父さん。なんか不思議」
「…そうか? 全部表情が同じだけどな。面白いか、こんなの見て」

ぼやくとロシェは「うん」と笑って楽しそうにしていた。子供時代から学生のときの俺の姿が、新鮮らしい。そこには高校時代のものもあったが、妻のミーリアとの写真はなくてほっとした。

ロシェの母親だというのに、これまで家族の写真も撮ったことはあるというのに。自分でもおかしいと感じる。

「これは捨てないでね。僕の宝物にする」
「あっ?」
「なにその顔。せっかくお祖母ちゃんが残してくれたものなんだよ。いいでしょうお父さん」
「……別にいいが。変なやつだなお前。……どうせならこれからの写真にしろよ。俺達の」

写真はあまり好きじゃないが、自分の大事な子であるロシェのものなら残したい。そんな単純な俺の思いを知ってか知らずか、息子は「うん。それも」と人一倍嬉しそうに笑ってみせた。





高校生の年になった息子は、今日も変わらず元気に支援学校に通っている。親友で三つ年上のニルスは卒業し、父親のジェフリーが営むジムで働き始めたと聞いた。

最初は寂しがっていたロシェも、クラスメイトのアーサー君を含め、新しく入ってきた生徒と交流しながらなんとかやっているらしい。

「それでね、その子僕より年下なんだけど、すごくしっかりしてるんだよ。僕もちょっとは先輩らしく振る舞いたいなぁって思ってるんだけど」
「そうか。お前年下と接することはあまりなかったもんな。お兄さんらしいロシェも、俺は見てみたいよ」
「お兄さん? はは、いいねそれ。憧れるなぁ」

目をキラキラさせながら話す息子を微笑ましく思いながら、俺は運転していた。この後行われるリハビリのために、駅近くの施設へ送っていくからだ。

「あっ。ニルスくんからメッセージだ」
「なんだって?」
「また金曜日会おうぜだって。お父さん、出掛けてもいい?」

何のやましい気持ちもなく、明るく尋ねられれば俺だって一拍の迷いを隠し「いいよ」と答えるしか術がない。
離ればなれになってもこの二人は相変わらず、親しげな仲を育んでいるようだ。

あいつは思っていたよりもマメな奴らしい。
だがどんなに距離を縮めようが息子は俺のだぞ、という何とも幼稚な思いしか、この頭には湧いてこなかった。


週に一度、二時間ほど行われるリハビリにおいても、今年に入って変わったことがある。息子が事故後からずっと担当してくれていたマーガレットさんが休職をし、その間新しい男性の理学療法士が配属されたことだ。

彼は二十代後半の好青年で、マーガレットさんとも面識がある大学の後輩らしく、それだけで親の俺にとっては勝手に安心要素となった。年上の同性だからかロシェもわりとすぐに打ち解けたようだ。

「こんにちは、ロシェ君。調子はどう?」
「うん、元気だよ。レイさんは? あ、またサーフィンに行ったの? もっと焼けてるね」

息子は人見知りをするほうだと思っていたため、まだ出会って二ヶ月ほどなのに、かなり慣れ親しんだ二人の様子には、端から見ていても驚かされた。

「じゃあ、リーデルさん。しばらくロシェ君と頑張ってきますので。また後ほど」
「はい。よろしくお願いします」

そして別れ、合間の仕事を終えて時間通りに到着した頃。五時ぴったりの時計が五分過ぎても姿が見えなかったため、俺は訓練室へと足を運んだ。

真っ白な部屋で専用の器具を使いまばらに訓練する人々の他に、ロシェとレイさんがいた。
寝台に座って談笑する息子の前で、腕を組み歯を見せて笑う若い男。
彼はこちらに気づいてすぐに会釈した。

「あっ、すみません! もう時間でしたね。ちょっと今話をしてましてーー。そうだ、リーデルさんにお願いが。いいですか?」
「はい。なんですか」

眼鏡を直し頷くと、ロシェも俺に微笑んだ。
それは驚くべきことに、リハビリの続きらしく、彼はどうやら俺にあることを説明したいようだった。

「実は、この体操を家でも行ってみてほしいんですよ。週に一度はやっているんですが、二度、三度に増やしても問題はないと思いまして。むしろ効果があるのではないかと。今からお父さんにもお教えしますので」

爽やかに言う茶髪の青年が、作業衣からのぞくたくましい腕を息子に伸ばし、太ももをがっしりと持った。仰向けに寝たロシェはリラックスした状態で、麻痺側の左足を上に曲げたり、ゆっくり下ろされたりしている。

「痛くない? 大丈夫?」
「うん、大丈夫です」

長い時間をかけて数回反復運動を行う様子を見ていたが、息子の顔は赤らみ、時おり俺のほうを見て少し恥ずかしそうにしているのが気になった。

ロシェは最近また背が伸びて、細身ではあるものの手足もすらっとしてきた。この年頃になると女性より、男性の方が体を扱いやすい面もあるだろう。

「では、こんなところですね。リーデルさん」
「えっ。はい」
「ご自宅でも行ったことがあると聞いてますから大丈夫だと思いますが、なるべく優しく伸ばしてあげて、こまめに筋肉を休ませて。互いにコミュニケーションを交わしながら、ぜひ取り組んでみてください」
「そうですね。分かりました。家でもやってみます」

真剣に療法士の動作を観察し、集中しようとしていた俺が答えると、彼は「介護者の方も楽しんでストレッチを行えるのが一番ですから」と笑顔を見せた。



それから俺はロシェと一緒に、週に二回、自宅でストレッチを行った。風呂上がりで体が温まり柔らかくなったときが良く、広いベッドがある俺の寝室で取り組むことにする。

息子の体はまだ成長期にあるため、療法士の彼もリハビリ専門医と相談しながら色々なメニューを考えてくれていて、有難いことだ。

「じゃあ、左腕は終わったから、今度は左足な。ゆっくり息はいて」
「うん…」

仰向けに横たわる息子の隣に膝をつき、両手でしっかり足首と膝の裏を持ちながら、長い時間をかけ曲げたり伸ばしたりを行う。

苦しくならないように注意をし、声をかけながら行うことが重要だ。
ロシェが小さかった頃、リハビリ当初の回復期にも似たような体操をしていたのを思い出し、懐かしみながらやっていた。

「……ん? 疲れたか。少し休むか」
「ううん。大丈夫」
「でも顔がちょっと赤いな。無理するなよ」

汗ばんだ額を軽く指でつついて、笑いかけた。ロシェは照れた表情でショートパンツから伸びる両足を折り曲げ、おとなしくしている。

俺がいる時よりも、レイさんとストレッチをしていた時のほうが笑顔が見えた気がして、ふいに上から見下ろした。

「なんか、静かだな。お前。まあ俺はプロじゃないからあれだが……おかしい所とかあったら、すぐ言えよ。なるべく上手くできるように学んでーー」
「ち、違うよ。お父さん上手だよ。僕の体のこと、一番よく分かってるし」

急いで首を振り懸命に伝えられ、やや驚いたが、思いがけぬその台詞には単純に喜びが芽生えた。

「そうか。なら良かったが。確かにそうかもな」

一番近くで見守り、世話をしてきたという自負があったせいなのだが、今この時にベッドに赤ら顔で寝そべる息子を見て、急に不埒な光景が頭をかすめる。

……ストレッチは違う場所で行ったほうがいいかもしれない。

自分の邪な想像を悟られないように、一旦起き上がろうとした。
するとロシェの手が俺の手を握る。甲に重ねられて、ゆっくり指を辿られた。

とたんにドキマギさせられ、視線がTシャツの下に隠された細い腰と、短いパンツから伸びた太もも、小さな尻の形に向かう。

「……だって、好きな人に触られたら、どきどきするでしょ。ただのストレッチでこんなこと考えてたら、僕バカだって思うけど」

うつむきがちにそう明かされ、親として同じようなことを考えたとはさすがに言えず、一瞬妙な沈黙が流れてしまった。

なんだかまずい。今日はもう止めるかと言おうと思ったが、それもロシェを傷つけるかもしれないと考え、俺は話題を変えようとした。

「そんなことないよ。俺だってお前に触れるの好きだし、むらっとくーーいや、なんでもない。そうだ、マッサージでもするか」

なるべく明るい声で提案した自分が、どれだけ阿呆なのかとすぐに悟る。そんな事をしたら余計に思考が飛躍する恐れがある。

俺は以前息子に告げたように、いつか本当に息子のことを抱きたいと思っていて、求めてくれたロシェに対し、約束もした。
それはきっと止められないだろうし、具体的に想像することもある。

だが、いつどんなふうにというのは、自分でも分からないでいた。
心も体も絶対に傷つけたくない、傷つけてはならないという気持ちと、この愛する存在に自分のすべてを埋め込みたい、刻み付けたいという相反する思い。

その中でまたがんじがらめに陥りそうになっていた。

「……いや、そうだ。マッサージは力の加減とかあるから、素人があまり行うべきじゃなかったな。……そういえば、レイさんはどんな感じなんだ? 力の具合とか、大丈夫か」

話を変えると、少しだけ悲しそうな顔をした息子に、強引に尋ねた。
初めての男性の療法士のため、実際に気になっていたことではあった。

「うん、レイさんはマッサージすごく上手だと思う。マーガレットさんもだけど、弱すぎす強すぎずって感じで。すごいんだよ、あと手が大きいから、優しくてもダイナミックなんだ。美容院もそうだったけど、男の人の手って結構いいね」

興奮気味に話す息子を見ながら、徐々に俺の熱も引いてきた。
別になんら奇妙でもない感想なのに、複雑に響くのは受けとるほうの自分がおかしいのだ。

「ねえ、お父さんもマッサージしてみて。大丈夫だよ。僕好きなんだ」

息子にせがまれて、俺は生返事で承諾した。
のり気になったロシェがうつぶせに寝転んだため、無意識に強くなりがちな力の入れ方に気をつけ、してもいい部位を揉んでいく。

そしてあることに気がついた。
ロシェの体つきが成長するたびに、俺の目にはさらに魅惑的に映るようになっていることに。

毎週のように抱きしめているからだろうか?
この体がすでに自分にとって、気持ちいいものをもたらすことを知っているからだろうか。

「ねえねえ、お尻も揉んで。お父さん」
「……えっ? お前な、まさかリハビリでもそんなこと頼んでないよな?」
「するわけないでしょう、ばかっ」

なぜか怒られて仕方なく息子の言うことを聞く。
小さいが形のよい尻を両手でわし掴み、無心でマッサージをした。
繰り返していると、前方から細かい吐息が聞こえてくる。

これは何の罠なんだと思いつつ、冷静に手を動かした。
もしかしたら、誘っているのかとも思ったが、俺はもっと大事にロシェに触れたい。

説得力の薄い思考で頭が疲れてくる。深呼吸をしたのち、そのまま息子の上に倒れ込んだ。体重はかけてないが、我慢の限界がきていた。

「あっ……お父さん……」
「嫌とか言うなよ。してほしかったくせに」

ほんの数秒前の決意を翻し、上から抱き込む。
頭上にあった片手の甲を握り、クッションに沈んでいたロシェの横顔にキスをした。

そこからはもう体の勝手な動作に身を任せる。
後ろからTシャツをまくりあげ、胸を手のひらで包み弄った。マッサージとは異なり甲高い声が耳をつく。

弾む尻に腰を押しつけ、高ぶりを躊躇なく分からせた。
そのまま振ってやると「あ、あ、あっ」という叫びが下から漏れだしてくる。

「ロシェ、触ってほしいか?」
「う、うん、触ってお父さん」

くぐもる声に誘われ、ショートパンツの上からまさぐる。すでに勃起したものを撫でていると、息子は動く方の足を少しずつ上げた。
後ろから見ると尻の形がはっきりと浮き出たその淫靡な姿に、俺は息を詰める。

ズボンを脱ぎ去り、また覆い被さったあとにそこに押しつけた。ロシェの下着に手を突っ込み膨らみを触ってやりながら、自らの腰も動かした。

「あっ、んあっ、あぁっ!」
「…はっ、…っ……くっ、ロシェ…っ」

そのまま互いの糸が切れるまで待とうと思っていたのに、俺は自分の意思でロシェの短いパンツも下着ごと脱がした。
弾力のある白肌が現れ、割れ目に硬くなったペニスをねじ込む。
間に擦りつけているだけで興奮が増し、もっと手にいれたい、近づきたいと前のめりになった。

もう理性は飛んでいて、ときおり指で淡く色づいた窪みを確認しながら、せわしなく腰を動かし息を切らした。

「ひぅ、あぁっ、おとうさんっ、気持ちい…っ」
「ああ、俺もだ、悪い、止まらん…ッ」

間もなくして、腰がびくびくと震えた。そんな風に直接意識して達したのは初めてだったため、今までになく自分本位だったことに射精をしてから気づく。

二人の息づかいが部屋に満ちる中、だらりとうつぶせになったままのロシェも達したようだった。俺の手の中が液まみれになっていたことで知る。

「んあ……きもち、よかったぁ……」

枕に半分顔を埋めながら呟いた、息子の声で目が覚める。
上体を起こし、手をついたまま自分がしでかした光景を眺めた。
すぐにティッシュを取り、濡らしてしまった場所を綺麗に拭いとろうとした。

「ん、くすぐったいよ」
「こら、動くなって、こぼれるだろ」

揺れる柔い肌からまだ瞳をそらせないまま、ロシェの表情を読み取ろうとする。
恐ろしいのはどこか嬉しそうに恥じらう俺の息子ではなく、自分の中で罪悪感よりも満たされた感覚が広がっていくことだ。

正確にはまだ満たされていないが、ロシェを求める気持ちに拍車がかかっていく。
再び息子の服を整え、自分も同じようにしたあと、横に寝転がった。

もう俺の謝罪も聞き飽きたと思い、こちらを大きな青い瞳で見つめるロシェのほっぺたを優しく撫でる。

「キスしていいか、ロシェ」
「うん。いいよお父さん」

答えは分かっていたが、しばらく見つめ合えなかった時間を埋めるように唇を触れ合わせた。
眠そうだが満足気な息子が小さくあくびをし、俺の胸にもぐりこむ。

俺達はそれから無駄口を叩くことなく、しばらく互いの温もりに体を預けた。



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