▼ 15 見せてほしい
雪かきをしたあとも窓の表面は霜が張り、外はまばらな雪が舞っていた。部屋の中は暖かいけれど、僕は大きな体のそばに普段よりくっついている。夜までドキドキが続いているのも、お父さんのせいだ。
「ねえお父さん」
「……ああ。今日しようか?」
「うん」
冬休みだからと頑張って誘ってみると、いいよって言ってもらえた。
眠る時間になり、車イスで父の寝室に入る。寝巻きに着替える父の背中をちらりと見て、また胸が高鳴り始めた。
「あれ、眼鏡つけたままだよ」
「え。ああ、忘れてた」
布団に潜り込んできた父に指摘すると、外した眼鏡をサイドテーブルに置き、僕に向き直る。腕枕をしながら、しばらく何かを考えるように黙っていた。
まだしないのかな?って不思議に思った僕は、父のパジャマを引っ張った。すると見つめられ、距離を詰めてきて、ゆっくり父の唇が僕の首に這わさる。
「あっ、んぁ」
驚いて身じろぎしても、きつめに吸われて離れない。口が動くのと黒髪がさわさわ当たってくすぐったくなる。
大きく武骨な手が僕の腰にふれた。「大丈夫か?」と聞かれて頷くと手のひらがパジャマの隙間から入ってくる。そのまま肌をなぞられて身悶えるのを我慢した。
「……んやっ…だ、め…っ…そこ…っ」
お父さんがズボンの上から僕のおちんちんに触る。包まれてゆっくり動かされ、すぐにビクビクする。
僕は半身を使って抱きついた。この前初めて一人でも出来たけど、可能なら一緒にしたかったからだ。
「お父さんも、して…」
間近の顔を見上げると、迷ったように茶色の瞳が揺れる。断られてしまうかも、そう不安に思ったけれど、僕の体はふわりと広い肩に抱きすくめられた。
真上にいる父が密着してきて、足の付け根に硬いものが触れる。
それが何かわかって、瞬時に顔まで熱くなった。ごりっとしたもの、僕と全然大きさは違うけど、お父さんのに違いない。
「お願い、一緒に脱いで、さわって」
勇気を振りしぼって目を見つめ、お願いすると、呼吸が浅くなっている父が僕を強く抱いた。
顔が見えなくて、僕の首筋に息がかかる。
父が二人のズボンを徐々に下げて、互いの熱くなったものを押しつけた。
衝撃が走ったみたいに、僕は力なくとろけそうになる。
重なる大人の腰が動きはじめたときに、もっと訳が分からなくなっていった。
「あっ…やぁっ…んぁ、……あぁっ…き、もち、いい…っ」
ぎゅっと大きな体に覆われたまま、父の腰が揺れている。
そうだ、今、お父さんがゆさゆさ腰を動かしている。なんて気持ちがいいんだろう。
このお父さんは、誰なの?
まったく僕の知らない姿だった。もっと男っぽくて、力強くて、息づかいからは色気みたいなものすら感じる。
「あ、あ、お父さん、お父さんっ」
「ロシェ、悪い、止まらん」
どちらとも分からない先っぽからくちゅくちゅ音が重なりあって、恥ずかしくていやらしい感じがする。
でも刺激が強くて気持ちよくて、止めてほしくなかった。
自分ひとりで触ってもらっていたとき以上の、何もかもが新しい感触だった。
それだけで十分なはずだったのに、僕は揺らされている間、父の肌が見たくなった。父の裸にも触れたくなった。
「んあぁっ、出ちゃうよ…っ!」
それなのに快感のせいで限界はやって来てしまう。でも嬉しいことが起きる。なんと父も僕と一緒に達してくれたのだ。
この前より直接的に触れたから、父にももっと刺激が伝わったのかな。
やがて僕のお腹に二人分の液がべっとりとかかった。
「はあ、はあ、はあ……」
遠い目で天井を見ていると、父が顔を上げた。してる時にまったく表情が見れなかったから、嬉しくなる。僕は口にキスをしてもらえるんじゃないかと思ったけど、頬に優しくちゅっとされた。
父が下半身をゆっくり離し、両手をついたままうなだれる。
僕が頭を起こそうとすると、「まだ寝てろ」と声をかけられた。少しぼんやりしていたから大人しく言うことを聞き、シーツの上でじっとしていた。
ティッシュを取って綺麗にしてくれているみたいだ。
「ねえお父さん、気持ちよかったよ」
「……俺もだよ。ロシェ」
言葉は優しいけれど、どこか焦りがにじんだような声だった。気になってまた様子を見ようとする。
すると今度ははっきり「駄目だ、まだ見るな」と言われてしまった。
……え?
もしかして、お父さんの見ちゃ駄目なのかな。
この前初めて一緒にしたときから何となく引っかかってはいたけれど。
父のおちんちんもだし、僕はまだ裸もあんまり見てない。
もちろん、お風呂は入ったりしてるから知ってはいる。
「どうして見たらダメなの?」
「教育に悪い」
きっぱり言われて唖然とする。
それはとりつく島もないぐらい、父のはっきりとした意見のようだった。
でもそんなの、僕は納得出来なくなる。
好きなのに。禁止されてしまうなんて……。
「終わったぞ、ロシェ。……おい? どうした」
「……なんでもないよ」
すごく気持ちよくしてもらったのだ。怒ってはいないけど、なんとなく腑に落ちない。
父に乱れた服を直してもらいながら、横を向いて見つめた。
「お父さん、まだキスしてくれてない。早くして」
「えっ。ああ、すまん」
また近くに来た体が背を丸め、顔を寄せて口づけをしてくれる。そのあとしっかり長い腕に抱き抱えられた。
結局すぐに安心した僕は、父の温もりに甘える。
でもやっぱり、目を閉じると少しだけもやもやした。
父はすっきりしてリラックスしてるのか、ほどなくして寝息が聞こえてきたので、さらに僕はモヤっとなったのだった。
自分でも気づいている。どんどん欲張りになっていってるって。
けど、あれからまた一緒にした時も、父は頑なに自身の体を見せようとしなかった。
僕だけいつも服がはだけていて、下半身も丸見えで恥ずかしいのに。それに好きな人の体が気になるって、自然なことじゃないのかな。相手はお父さんだけど…。
また新しい悩みに悶々としていた僕は、ある朝思いきったことをしようとする。
父の腕の中で目を覚ますと、自分の太ももに硬いものが触れているのを発見した。
これは朝勃ちというやつだ。ずっと前、自分のおちんちんも朝に変な形になっていて、父に相談したら教えてもらったことがある。
でも、父もそうなっているのを見つけたのは、ごく最近のことだった。
「お父さん……?」
一応起きないのを確認して、こっそり麻痺側じゃない方の手を伸ばした。
勝手に触るのはだめだから、パジャマのズボンをめくって、内緒で見ようと思ったのだ。
今日はゆるめのトランクスだからちょうどいい。僕は父のおちんちんが気になりすぎて、手をかけたーー
「おい」
もうちょっとという所で、突然父の声がして体がビクッとなった。
「……あっ、お父さんっ」
「何やってるんだよ。びっくりするだろう」
眠いのか目が据わったまま、行動を咎められる。僕は焦って弁解しながらも謝った。
「あの、ごめんなさい。僕どうしても気になっちゃったの」
正直に話してみるが、父の反応は鈍い。前みたいに僕から体を離してどこかに行ってしまうってことはなくて安心したけれど。
「駄目だって、怖がらせたくないんだよ」
頭をぽんぽん触って、向けられる目はちょっと険しいまま。
「どうして? 僕お父さんの勃起するとこ見ても怖くないよ」
「……あのな。勃起とか言うんじゃない」
ぴしゃりと注意されて口をつぐむ。
僕は小さい子供じゃないのに。親のだから触っちゃいけないのは分かるけど、興味は尽きなくて、父のことがもっとたくさん知りたいって思ってしまう。
もう学校は始まっていて、いつもと変わらない日常は過ぎていく。でも気がつくとお父さんのことばかり考えてる自分がいた。
前からそうだったけど、一人の秘密の介助が、二人の秘密の触れ合いになってから、それは顕著だった。
ああ、お父さんと色々したいなぁ。
もっと触ってほしいし、キスだっていっぱいしたいし、そういう映画で見たみたいな、大人っぽいことがしてみたいーー。
他のことは上の空で勝手に考えていると、こうも思った。
なんだか、えっちな自分がやだ。
僕、いつの間にこんな人間になっちゃったんだろう?
知らなかった幸せに包みこまれる反面、その中で悩みも一緒に膨らんでいく。
そうだ。正直に父に相談しよう。
この胸のもやもやは、とても自分一人じゃ解決できないという、また自分の甘ったれ精神が顔を出した。
「お父さん、話があるの」
「なんだ」
今日は夕食のとき、あえて父の真横に座ってみた。真正面だとなんとなく尻込みしてしまうからだ。
隣で新聞を畳み、こちらに向き直る父が眼鏡をスッと直す。
僕が中々話さないのでグラスの水を口に含んだりしていた。
「僕ね、えっちな自分が恥ずかしいんだ」
意を決して告げると、父が飲み物を吹き出した。
咳き込んだあと口元を拭い、真剣な僕の話を無言で聞いている。
「どうしてお父さんは僕とくっついてくれたりするの? 触ってくれるの? 僕のお願いだから?」
率直な疑問をぶつけ、答えを求めた。
この前父から好きだって言ってくれたし、お互いに愛情も伝えあっている。でもそれは親子だからで。
「それだけじゃないよ」
言い聞かせるように、父の優しい声が降る。
どういう意味だろう。
自分がそれだけじゃないのはわかる。でも父の場合は信じられない。僕は子供でしかないからだ。現に子供扱いされてるし。
「お前も大きくなれば分かるよ」
父は半分諦めたような口調で、僕のほっぺたに指先で触れた。
親指で撫でられて、ドキドキする。
「だから本当は今、こういう事しちゃいけないんだけどな」
椅子を動かして身を乗り出した。
顔が迫り、キスをされる。重ねられた唇はやや深めになり、舌が差し入れられる。
「お前に触れると、止まらないんだ。これは俺の問題だな…」
口を離して、目を見つめたまま呟かれた。
そしてもう一度僕にキスをする。食卓の前でこんなことをされたのは初めてで、舌先を舐められた僕は全身が感じてしまうみたいになる。
「だから、お前がやらしくなったのなら俺のせいだ。すまん」
潔い表情だけど、どういう言葉なの、お父さんてば。
混乱を極めながら、気持ちを伝えてくれた父に自分も応えたくなった。
「僕、僕ね。もっとって思っちゃうの。お父さんのこと、大好きだから。僕も、どんどん止められなくなってーー」
全部伝える前に体が抱きしめられる。
「……ああ。分かってる。俺もそうだよ、ロシェ」
分厚い肩に囲われた僕は、その言葉の優しさに安心し、目を閉じた。でもすぐに開けることになる。
「抱き上げてもいいか? 寝室に行くぞ」
連続して聞こえた台詞に一瞬思考が止まった。僕が顔を上向けると、すでに父は椅子を引いて立ち上がっていた。
「えっ? 今?」
父が真面目な顔で頷く。
積極的に誘われたのも初めてで、まだ眠る時間でもないのにと、頭がぐらぐらする。
でも、断る理由が見つからない。体が、すでに火照ってしまっていたから。
「俺の裸が見たいなんて変わってるな、お前」
寝室に着くと、父はベッド端にちょこんと座る僕の前で、長袖の服に首をくぐらせた。
僕より少し日に焼けた肌で、横から見ると胸板が厚くがっちりしている。仕事がら体を動かすためか自然体の筋肉質だけど、腰回りは引き締まっていて、やっぱり見惚れるような体格だ。
「これでいいか?」
上半身裸になった父は、すぐ隣のシーツに乗り上げて座り、僕の襟元をなぞった。
なぜだろう。今は見てもいいはずなのに、逆に恥ずかしくて見れない。
でも背中に父の手が添えられ、ゆっくりベッドに押し倒されてしまった。
なんだか手順がいつもと違うから、ぎゅっと握る手に力が入った。
「おい、緊張してないか」
真上の父が笑う。その笑顔にも僕はときめく。
眼鏡がない父も素敵に見える。お父さんなのに、大人の男の人って雰囲気が増す。
「お父さん、格好いいんだもん」
「それはもっと言っていいぞ」
からかわれながら、服が少しずつまくられていく。お腹より上のほうで止まり、父が若干迷う手つきで撫でてくる。
「ねえ。全部脱いじゃだめなの?」
「いや、全部はちょっとまずい」
そっか……。
答えにしょんぼりした僕を見て、考えた父が「…まあ、上だけならいいか」と僕の服も脱がしてくれた。
「なあ、寒かったら言えよ。あと体勢が変だったら教えて」
布団を被せ、僕の上に父の大きな体が迫る。こくこくと頷くと、上から体重をかけないように抱き締められた。
「わ、わあっ、待ってぇっ」
「なんだよ。お前がこうしたいって言ったんだろ?」
そう言うけど裸で抱き合うのなんて、初めてなのだ。一気に熱が布団の中に満たされ、身動きが取れなくなる。
肌と肌は好きって気持ちが増すんだなって、すぐに分かってしまった。
「もっと教えてやろうか?」
でも今日のお父さんは、今までと違った。
声も手のひらも優しいけど、興奮した顔つきに見えるし、少しずつ自分の感情が押し出されてるみたいに、僕に触れてきた。
「あ、んぁっ……だめぇ……っ」
「……嫌か?」
「んっ……や、じゃ…ない……け、ど…っ」
脇腹あたりを掴んでいたはずの手が、胸に伸ばされる。さするように手のひらに撫でられてるだけなのに、胸がじんじんする。
驚きはそこで終わらなかった。なんと父の顔が下のほうにいく。首筋をちゅっちゅっとされたかと思えば、乳首が口に含まれたのだ。
舌先が這って舐めたりしてきて、反対側の胸も柔らかく揉まれる。
僕、男の子なのに。
そんなところを触られてキスされて、感じてしまいそうなのもびっくりした。
「やっ、なに、してるのお父さん…!」
「……ああ、分からん、悪い…ロシェ、」
お父さんはなぜか謝りつつも愛撫を続けた。僕の声が止まらなくて、腰もびくびくして、片手でぎゅっと太い腕を掴むと、ようやく顔を上げられる。
目が合った途端に、今度は唇を重ねられた。見つめる瞳から逸らせずにいると、前髪を優しい手つきでとかれた。
「やだ?」
「……やじゃないけど、恥ずかしいよ……っ」
だんだん父の行動が性急になってる気がして、合間の息づかいも響いてきて、のぼせそうになる。
全然いつもの雰囲気と違うから、すでにいっぱいいっぱいなのだ。
「だって僕、変でしょう? ……そんなとこが気持ちいいの」
「変じゃないよ。大丈夫だ、ロシェ」
頭を撫でて、父がおでこに軽くキスをしてくれる。
「こういう反応とか、俺のせいにしておけばいい、気にするなよ」
クールに言われるけれど、僕はもう父の手や唇に、感じすぎちゃっていた。
大人って、こんなことが出来るんだ。全然知らない世界に衝撃を受ける。
父がわずかに体を起こした。僕も自分の快感に忙しかったけど、本当は父の高ぶりにも気づいていた。
あんなに余裕そうに触ってくれてたのに、急にぎこちない動きで離れようとする。
僕は、父が離れるような素振りは、一番寂しくなるのだ。
「ねえ僕、起きたい。お父さんの上に乗せて」
頑張って告げると、父が目を丸くする。
この前の続きじゃないけど、僕も父のことを見たかった。どうしようもなく気になっていた。
躊躇していた父にお願いすると、やがて折れてくれた。ベッドの上のほうで、重ねたクッションを背にした父にまたがる。
片側は動かせないけど、上半身裸の父に腰をしっかり持ってもらって、痛みも不安もない。
「なあ、本当に見るな」
「やだよ。見たいもん」
「嫌になっても知らないぞ。……俺だって怖いんだよ、お前に嫌われるの」
小さく囁かれた言葉に顔を上げた。父は珍しく、恥ずかしそうに視線を逸らす。
「どうして僕が嫌うの? そんなこと、絶対ないよ」
そうだよ。あり得ないよ。
強く訴えると、父の喉仏がごくりと動いた。
僕のしつこさに負けたのか、力弱く抱き締めてきた。また唇を塞がれて、次第に勢いが強まる。
父は僕を抱えて、二人の下着を下ろしていく。自然に行われたからあっという間で、大きさの異なる性器がぴたっとくっつき、同時に擦られた。
「あっ、んあ、あぁっ」
「……っく、ロシェ……っ」
父に名を呼ばれて鼓動がさらに加速する。大きな手に包まれて上下に動かされるたび、断続的な刺激に感じ入ってしまった。
「お父さんっ…あぁっ、気持ちい…っ」
「ああ、もっと、こっち来て、いいぞ」
体勢を気遣われて、さらに体重を父に任せる。手は丸まって動かないけど、一生懸命開いて、背に回した。
自由に動けたらいいのにって思うけど、快感のせいでもう多くを考える余裕もなかった。
「んっんっ」
同時にキスしてもらう。
しながら擦り合わせると一気に押し寄せてくる。
こんなに気持ちいいことがあるの? 大人は皆こんなことをしているの?
「い、いっちゃうよ、だめぇっ」
逞しい体に掴まって、互いの汗ばんだ肌を感じながら、達しそうになった。
すると父の腕がさらに僕の体をぎゅうっと抱いてくる。
もしかして、お父さんもーー。
「ねえ、一緒に、イク…っ?」
「……ああ、だめだ、もう……い、く……ッ」
その言葉が聞こえた瞬間、ビクビクっと大きく父のおちんちんがしなった。
驚いた僕も刺激に勝てず、腰を敏感に震わせイッてしまう。
「ん、ああ、ぁ」
ぼたぼたと溢れる液に、股と太ももの間が濡れていく。
その時も父に強く抱き締められたままだった。
達したあとはいつもぼんやりするけれど、ハッと意識が戻る。
お父さんのおちんちんを見るの忘れた…!
馬鹿だ、僕、結局また自分の気持ちよさに勝てなくてーー。
肩には父の額が乗り、はあはあ言っている。
僕は少しだけ体をよじり、視線を落とした。
そこで見たものに驚愕する。まだ硬そうな、大人のペニスの姿に。
大きくて長いのは知っていたけど、太くて少し血管が浮き出ていて、綺麗な色に白い液がたくさんかかっていた。
「うわああぁっ」
「な、なんだっ」
焦って顔を上げた父に僕は何度も頭を下げる。
「だって、僕の出したのがたくさんお父さんのにかかっちゃった。ごめんね」
「…………なんだよ、そんなことか……なあ、本当にびっくりさせるな……」
父は頭を抱えて何度か左右に振っている。
「すまん、ロシェ。結局俺も出したし見せてしまった。……ショック受けたか?」
見つめてきた顔は、父らしくない不安げなものだった。
僕は真っ先にそれを払拭したくて、身を乗り出す。
「もう、何回も言ってるでしょう、全然大丈夫だよ。お父さんのおちんちん、僕好きだよ」
伝えると父が動きを止めた。硬直したまま反応がない。
何を言ってるんだろうって自分でも思ったけど、それ以外に言いようがないのだ。
他にも色々ポジティブな感想はあったけれど、父は今繊細になってるみたいなので止めておいた。
「ねえねえ。お父さんこそ、大丈夫? 僕のこと、嫌になってない?」
またわがまま言ったから。こうしてどんどん父の懐に甘えて、許してもらっているのだという自覚は誰よりもあった。
父は衝撃から返ったように、僕の台詞に耳を傾けていた。
戸惑う仕草で、唇を指にたどられる。
「いや……なるわけないだろう。……お前が考えてる10倍はお前に触れたいって思ってるぞ。俺は」
真剣な顔つきで告げられて、今度は僕がすぐに反応出来なかった。
そんなに?
知らなかった。もしかして、僕も期待してもいいの…?
「じゃあもっと触って。好きなときに、今日みたいにして」
「……いや、だからな……そうやって急に甘えた声出すな……」
体を寄せるとほっぺたを撫でられて、困惑した顔に、口づけを落とされる。
ふわん、と幸せが舞った。
しかし父は視線を僕らの下のほうに移し、一瞬絶望的な表情になった。
「おい。大変なことになってるぞ、ロシェ」
「えっ、本当だ、どうしようお父さんっ」
父は眼鏡をかけ直し、冷静な顔で「綺麗になるから大丈夫だよ」と言ってくれた。
ああ、僕は、自分の願ってたものがまたひとつ分かった。
僕の知らなかった、父の本当の姿を見せてほしかったのだ。
そしてそれはついさっき、叶ったのだった。
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