お父さんにお世話してもらう僕 | ナノ


▼ 9 隠せぬ欲情

妻の墓参りを終え、息子との穏やかな日々が続いている。
家を改装してからロシェは車椅子を使用し始めたため、多くの事柄において俺から自立するようになった。トイレや部屋の移動はもちろん、洗濯などの家事も積極的に手伝ってくれている。

ただ唯一以前から変わらず介助を求められることはあった。それは、今では毎週末共に就寝しているときに行われる、息子の自慰の件だ。

「ロシェ。今日、するか?」
「うん……お願い」

寝室のベッドで向かい合うと、こくりと恥ずかしそうに頷かれた。
普段は金曜日に頼まれることが多いが、向こうから言われなければ土日のうちに俺から尋ねる。息子は体質的に夢精をしてしまうことが時折あり、それを避けるための手段だった。

利き手の左手は麻痺で動かないため、自慰をするにはやりにくいロシェの右手の代わりに、俺が触ってしごいてやる。体を抱き寄せて抱え、下着を脱がせて勃ち上がったぺニスを愛撫していると、か細いあえぎが胸元から聞こえてくる。

「んっ…お父、さん…きもち、い…」
「……ああ、もうちょっとしてやろうな」
「あっ…んあっ……だ、めっ…」

感じている声が頭に響いてくるが、落ち着いて刺激を与える。この行為に慣れてはきたものの、相手は大切な息子だから、ただの作業ではなく毎回愛情を込めてしている。

正しいか正しくないかといえば、親として許される行為ではないだろう。だが今では答えは出せなくなった。余計なことでロシェが悩み続けるぐらいならば、俺はそれを出来るだけ取り除いてやりたい。

「はぁ、はぁ、もう、お父さん」
「……ん? そろそろイクか?」
「ぅ、うんっ……あっ…んあぁっ……いく、出ちゃう…っ」

淡く紅潮するロシェの顔が俺の口元を見る。
もう何度もしているから分かるのだが、片手がきゅっと腕を握ってきて、キスを求める仕草をする。この時に広がるのはいつも、愛しいという感情だ。

頬を撫でてやりながら唇をつけ、何度か食むように繰り返す。ビクビクとしなる腰を押さえ最後に口にもしてやる。軽く押し付けただけだが、長めにキスをするとロシェは下半身を細かく跳ねさせ、やがて俺の腕の中で力が抜けていった。

「……どうした、大丈夫か?」
「ん……大丈夫…じゃないよ」

小さく呟いて胸で息をする子を、優しく撫でた。瞳は俺をぼうっとした眼差しで見つめ、放心状態になっている。いつも少し心配になり胸に手のひらを当てると、鼓動は速いままだ。撫でていると怒るため、手を肩や腰に移動させて体を落ち着かせようとした。

仰向けで寝そべるロシェの体を綺麗に拭き取り、また隣で顔を眺めて、ときどき額にキスをする。俺は密かにこの時間が好きで、きっと求められているものを与えることが出来た充足感に包まれているのだと思う。

息子は腕の中でうとうとし始める。しかし自分はまだ高揚しているのか、あどけない寝顔を見下ろし髪を撫でていた。

「……お父さん、もう一回キスがいい……」

下から言われて指を止める。いつの間にかうっすらと開いた青の瞳に見つめられ、静かに喉を鳴らす。顔を近づけて唇が触れるぐらいまで来たとき、少し傾けてキスをした。小さな唇が震え、俺の寝巻きの裾をつかむ。同じく目を閉じた俺は、一度離したあとにもう一度重ね合わせた。だがそれが、失敗だった。

自分でも何を思ったのか分からない、いや何も考えてなかったのかもしれない。頬にするのと同じようにロシェの唇を食み、数回キスをした。その時、唇を少しだけ開けて舌でなぞってしまった。

「ん…っ」

当然ロシェは驚いて体を強張らせる。俺はすぐに口を離し、しばらく動きを固まらせた。

「……あ、すまん。わざとじゃ、ないーー」

言いかけて視線を外す。さっきと変わって目をぱっちり開けている息子の様子が気になったが、ごまかすように上から抱き締めた。それは不意に親子だという状況が抜け落ちてしまった為だから問い詰めないでくれという願いをこめてだったが、息子は信じられない反応をする。

「大丈夫だよ。気持ちいい……」

そう言われたときに、俺は赤くなった子の顔を見て、また同じことをする自分というのを想像してしまった。体が勝手に動き、吸い寄せられるように唇を近づけようとした。

しかしなんとか寸前で踏みとどまる。不自然な表情で動かないでいる父親を心配したのか、ロシェは俺の腰に手を伸ばし、また掴まってきた。

「お父さん…?」

あどけなさの残る、だが甘い音色をのせる声。今、息子と体を密着させていることにようやく気がついた。体重はかけないようにしているものの、俺の真下にロシェの華奢な体がある。

体を触っていたときは考えないようにしていたが、少しずつ子供の体型からウエストが締まり、細身のしなやかな形に変わってきていた。さっきまでの暗がりで下は何もつけておらず、上半身の寝巻きだけをはだけさせた裸体が突然思い浮かんでくる。

「…………ッ」

その瞬間、あってはならないことが起きた。下から熱が集まり、腰回りが熱くなる。俺は混乱に陥るよりも先に反射的に上体を起こした。

「わっ、どうしたの…? お父さん…?」

完全に体から離れ、膝をついた体勢になる。若干前屈みになるが暗がりなので気づかれてないと思いたい。

「悪い、ちょっと用足してくるな」
「……う、うん。行ってらっしゃい」

素早く起きてベッドから降り、寝室の扉から出た。廊下を進みトイレに直行する。
便座に座り、そのまま頭を抱えてやり過ごそうとしたが、まったく治まらない。何故だ何故だと、脳内が疑問符で埋め尽くされる。

ロシェ相手に、大切な息子に対して、反応してしまった。介助の他に口づけなどしてしまったから生理的な影響が出たのだろうと、冷静に考えればいいのだが、そんなにすんなりとはいかない。胸に抱えきれないほどの罪悪感が怒涛のように押し寄せる。

「……俺は、何を考えてるんだ……」

故意ではなくとも、子に欲情などしてしまったらそれはもはや介助ではない。最初からもっと慎重に線引きをすべきだったと、自責の念に駆られる。

その後どうにかして昂りを静め、寝室に戻った頃にはロシェは眠っていた。体をこちら側に向けて、寝息を立てている。安堵する一方で、余計に罪の意識に苛まれた。

だがせっかくの週末に、離れて寝るということはしたくない。俺は息子の体に腕だけをかけて、あまり密着しすぎないように目を閉じることにした。




週末にロシェと眠るようになり、ようやく不眠から救い出されたはずだったのだが、その日はすぐに寝つけなかった。結局また寝坊をし、情けなくも起こされる。
でもロシェは笑っていていつも通りで、昨夜のことは気づいていないようだったから、密かに胸を撫で下ろした。

問題はその次の週だ。
介助のことを考えると、言い様のない不安が襲った。もしまた同じように自身が反応でもしたら、そう思うと気が気でなかった。

俺はこれ以上親失格になるわけにはいかない。妻の存在も常に心の中にある。ただでさえ介助の時は妻のことを考えないようにしてきた。全てのことに申し訳がたたないのに、父親として今の姿をどう説明出来るのか、出来るわけがない。

「ねえお父さん、今日してもいいかな」

こんな心理状態の時に限って、ロシェは可愛らしく俺の隣に寄り添ってきた。ソファに座り二人で映画を見ている最中で、一瞬思考が止まった。
黙っているのも変だと思い「ああ、大丈夫だよ」と優しく肩を抱く。照れた風に笑む息子が俺の鎖骨あたりに頭を預け、鼓動が聞こえないか心配になった。

その後の映画の内容も、まったく頭の中に入ってこなかった。
映画が終わった後、俺は息子の耳元に口を寄せる。

「なあ。今日はここでしないか?」
「……えっ?」

驚くのも無理はない。自分でも何を言ってるのかと考えたが、ベッドでするのは危険な予感がした。しかしロシェは首を縦に振らない。

「恥ずかしいよ、ここ明るいし……だめだよお父さん…」
「このぐらいの明かりならいいだろ? 見えないよ」

優しく言い聞かせて頬を撫でる。
本当に、俺は息子相手にどんな台詞を投げかけているのだと頭痛がしたが、自分本意ながら、背に腹は変えられない。

座ったままで少し離れていれば、万が一自分が勃起しても隠せるだろうと考えた。
ロシェは恥ずかしそうにソファの背もたれに背を預け、隣に座る俺の膝をぎゅっと離さないでいた。

前より控えめに頬や髪に口づけを落とし、リラックスさせてから脇腹あたりを撫でる。風邪を引かないように俺の上着を羽織らせて、下肢を露にさせた。

「んあっ……やっぱり恥ずかしい…あんまり見ないで…」
「見てないよ、ほら…ロシェ……ここ、してやるから」

勃ち上がったものを撫でてやると、わずかに腰をよじらせる。上下に擦っていると段々感じてきたのか薄目になり細かく呼吸をし始めた。
だが俺はやはり考えなしで愚かだった。テレビがつけっぱなしの中照明が落ち、ぼんやりと白い肌が浮かび上がり、寝室でもないのに色めく息づかいが響く。

また内側からせり上がる妙な感覚と罪悪感が入り交じり、息子と同じく自らの額にも汗が滲んだ。

「あ、あ、お父さん、いっ…イッちゃう、僕イク…っ」

ロシェはいつもより早く腰を跳ねさせ、俺の手の甲にべたりと白濁液を濡らした。
「大丈夫か?」と丁寧に声をかけながら、肌の上を綺麗にしていく。

俺は息子のはだけた部分が気になり、暖かくなるように服を着せた。そして上から抱き締める。膝を乗り上げていたため、わずかだが距離は取れている。頬にキスしたあと、そっと口づけもした。

顔を離すと、ロシェは少しだけいつもと違った表情に見えた。ぼんやりとはしてるものの、どこか瞳に戸惑いを宿している。何か言いたげなのも気になったが、俺はただゆっくり髪をといたり、腕の中に寄り添わせていた。




結局その時も、自分には男の生理現象が現れた。介助はなんとか出来たものの、このままではまずいと本気で落ち込み、苦悩は深まった。

そもそもの話だが、俺は事故以来、ほとんどこういう現象を忘れていた。言葉を濁さず言えば、不能になったと思っていた。とくに事故の当初は妻を失い、生きる気力は息子の存在のみに支えられていたため、精神的なものからか男としての性的欲求は消え失せていた。

年もあると思うが、興奮もしないし、出さなくてもとくに不便はなかった。身体的にはよくないことはわかっている。息子にも偉そうに教えておいてだ。

だが今、何が起こっているのか。俺は久々に、けっして対象にしてはならない自分の息子に対して、こういう事態を引き起こしている。
見つかってはならないし、絶対になんとかしなければならない。なぜならロシェとの関係が壊れるからだ。愛する子供に、幻滅されたくない。それだけが自分の願いだった。

「ロシェ、今日はこのままするか。いいか?」
「う、うん……」

翌週は寝室のベッドの上で、クッションを多めに上のほうに置き、座ったまま出来るように準備した。密着することを避けながら、しかし愛情を持って愛撫を行い、息子の射精を促す。

いつものようにそばで達するのを見守った後、頭を撫でているとロシェは俺を見上げた。

「ねえお父さん……」
「ん? なんだ」
「……ううん。なんでもない」

そう言って俺の胸に潜り込んできた。それ以降口をつぐみ、様子がおかしいのは感じていた。きっとこの体勢でするのはあまり好んでないのかもしれない。

でも俺は自分の我を通さざるを得なかった。また体をくっつけてロシェに触ったりなどしたら、今度こそ伝わる恐れがある。その時の息子のショックを想像しただけで、胸が痛んでどうしようもなくなる。

「おやすみ、お父さん」
「ああ。おやすみ、ロシェ」

眠るときも若干腰を引いて体を抱いた。近くにいるとロシェの細身の曲線が目に浮かび、している時の甘い声が耳に甦る。
それでも俺は、一人で寝たくはない。邪念を頭から振り払いながら、息子を抱き締めて眠りに落ちた。



夜中、突然肩を揺すられた。そんなことは最近なかったから、まぶたをこすって徐々に開ける。
また寝坊したのかと思えば、部屋はまだ暗い。目の前には、少しむすっとした顔のロシェがいた。

「お父さん、トイレ行きたい」

そう一言だけ発する。久しい台詞に驚いた俺は、すぐに体を起こした。

「……俺でいいのか? 抱っこするか?」
「うん」

布団にくるまり頷く息子を見て、鼓動が鳴り始めた。喜ぶべきではないのだが、俺は明らかに頼られたことを嬉しがっていた。
立ち上がり、ロシェの体を持ち上げて横抱きにした後、手洗いへ向かう。

車の乗り降りなどの際には抱き上げることはあるが、こうして廊下など少し距離のある場所を移動するのは久しぶりだ。ロシェは片腕を俺の首に掴まらせ、胸に頭を預けていた。

個室に入り座らせて、また扉の外で待つ。
なんだか前のロシェを思い出して、懐かしくなる。こうして息子の世話をすることが、自分はなんら苦ではなく、むしろ喜びになっているのだと改めて呑気に考えていた。

それからまた寝室に運び、二人でベッドに潜る。俺は眼鏡を置いて明かりを消し、目を閉じようとしたのだが、息子はやたら近くに寄ってきて、ぐっと俺の胸のシャツを握りしめていた。

「おい、眠くないのか?」
「眠いよ」
「じゃあ、どうしたんだ。ああ、トイレならいつでも起こしていいぞ。俺がまたーー」
「……トイレは大丈夫。お父さん、もっと僕の近くに来て」

視線を伏せたまま、だんだん尻すぼみになっていく言葉が引っ掛かった。俺が顎をそっと取りこちらに向かせると、ロシェの瞳はじんわりと潤んでいて、ぎょっとした。

「なっ、どうした、ロシェ。おい」
「ねえ。本当は僕と一緒に寝たくない?」

唇をわずかに震わせて、すがるように尋ねてくる。俺は訳が分からなかったものの、すぐに首を振って否定した。
少し考えれば、俺の不可解な挙動が息子を不安にさせていると、分かったはずなのに。

「そんなわけないだろ、違うよ」
「……でも、やっぱり、嫌なことさせてたらごめんね。僕の、介助のこと……自分のわがままに付き合ってもらってるって、本当は分かってるんだ。でも、僕、いつもお父さんに甘えちゃってた。……あのね、もう頼んだりしないから、また一緒にくっついて、眠ってくれる…?」

自信がない様子でじっと見つめてきて、完全に勘違いさせていると焦る。反省すると身を引きそうになる息子を、俺はすぐに引き戻そうとした。

「いや、違うロシェ、誤解だ。俺はお前と一緒に寝たい。どんな時よりも安心できて、心が安らぐ。それは本当だ、嘘じゃない。いくらでも俺に甘えていいし、甘えろよ。それに夜の介助だって、まったく嫌とかじゃないんだよ。お前が気にすることは何もなくて、これは自分の問題でーー」

必死になって普段の自分とは違う情けない姿を晒し、がんじがらめになっていく。

「本当に……? ……でも、問題ってなあに? どうしたの、お父さん。何かあったの?」

俺の言葉を素直に受け取り、心配をする純粋無垢な瞳に喉が詰まる。
言えるか?お前に対して反応したなんて……。

だが俺に似て少し頑固なとこがある息子に理由をせがまれると、正直に話すしかなくなった。
するとまたもや意外なことが起こり、俺はさらに狼狽することになる。

「えっ。お父さん、勃起しちゃったの?」

思わず耳を疑った。自分が言うなら構わないのに、息子の口からは聞きたくない生々しい言葉が出た。

「……ああ。実はそうなんだ。すまん」

逃れられない状況を踏まえ、俺は潔く謝った。謝って済む問題ではないが、人として頭は下げるべきだと考えた。
しかしロシェはさらに俺の想定外の反応を見せる。

「そうだったんだ……でも、別に大丈夫だよ。だって、お父さんも僕と同じってことでしょう? ……僕はちょっと嬉しいけどな」

台詞に愕然としたものの、その照れたような微笑みで俺は確信した。
13才になる息子は男の性や欲望がまだよく分かっていない。一連の行為も、おそらく父親への愛情と恋情が混ざっているのだ。

それを正しく導かなければならない親の自分が何をしている?
理解していながら、求められていることにはこれからも応えたいという、ジレンマが消えずに苦しめてくる。

「いや、こんなこと、良いわけがないんだよ、ロシェ。お前はもっと俺に怒ったほうがいいぞ」

言いながら体が脱力していく。ロシェはそんな俺を見て、不思議そうに首を傾げた。

「どうして怒るの? 僕なんか、いつもお父さんにしてもらう時、気持ち良くてすぐにそうなっちゃってるのに。だから気にしないで、大丈夫だってば」

励まされれば励まされるほど、息子の考えがよく分からない。
しかし父親を途方に暮れさせる発言はまだ終わらなかった。

「ねえねえ、でも、どうするの。お父さんがそうなったら、大変だよね。だって僕のはお父さんがしてくれてるし、誰が……」
「いや誰がじゃない。余計なことに頭を使うな、ロシェ」

無邪気に考え始める息子を遮ろうとするが、こいつは俺の想像以上に奔放な面があったのかもしれない。

「分かった! 一緒にすればーー」

冗談なのか何なのか、常軌を逸したその提案を、俺はとっさにロシェの唇を塞ぐことによって黙らせた。

「んんっ」

寝ている息子を覆い尽くし、強く唇を押し当てる。そのキスも久しいもので色んな思いが駆け巡るが、中々すぐに離すことは出来ず、しばらく触れさせていた。

「……お父さん、熱い……」

再びうっとりした青い瞳で見つめてくる。
ああ、また、これは良くない兆候だ。

「ロシェ、変なこと言うな。考えるな。分かったな。もう寝ろ」

ぽんぽんと頭を触り、また横に向かい合って抱き寄せる。
別に許しを得たからではないが、俺は開き直ってロシェを強く抱き締めた。

「このまま寝ていいの? お父さん」
「ああ。仕方がない。おやすみ。明日起こせよ」
「……仕方がないってなに? もう」

さっきまでの泣き顔は消え、息子の楽しそうな笑い声が響く。
俺はこれ以上おかしな反応をしないように祈りながら、まぶたを閉めた。一方で大事な温もりにまた触れられたことに、実際に大きな安心を得ていた。



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