short story/old | ナノ
パンプキンマンの憂鬱
心が軋んで、どくどくと波打つ。
嗚呼、僕は恋をしてしまったようです。

月の綺麗な夜、彼女は何より光り輝いて見えました!

くるくるの金髪はふわふわ揺れて、空色の瞳はきらきら光って、白い肌はつやつやしていて。

まるで少女はお人形のようだった。

あの日、小さな体を真っ黒なマントで包んだ彼女は小鳥のような可愛い声で、「お菓子をくれなきゃいたずらするよ!」と言って表の通りを駆けて行った。

その無邪気な姿に心を奪われてしまった僕は、煤けた窓からずっと彼女を目で追った。

そして運命のあの瞬間!
彼女はあの可愛らしい手で僕の家の扉をノックした。
その瞬間僕は飛び上がって驚いたけれど、そっと扉を開けた。

ああ、美しいあの顔が月の光を受けて輝いている!

そしてその笑顔が僕だけに向けられているのがわかって、脳天から爪先まで痺れてしまった。

「トリック・オア・トリート!」

満面の笑みを浮かべて、彼女はさえずるようにそう言った!

なんという幸福!
なんという快楽!

ガラスのような瞳に僕の心臓は射抜かれて、壊れたように鳴りだした。

「あら?あなたは一人なのね?」

いつもは怖がられるばかりの僕を見ても、彼女は怖がりもせず、逆に僕の乾いた泥のような手を握った。

「今日はお祭りよ?一緒に行きましょう!」

そう、あの日僕は初めて心からハロウィンを楽しめた!

月光に光る道の真ん中で、彼女の手をとり踊った!
甘いお菓子を両手に沢山かかえて食べた!

そして、疲れて眠った彼女を背負って歩いた。

血の通った温かな人間に触れたのは初めてだった。
魂の輝きを感じた僕は、一層幸福な気分になった。

ああ、だけれどこれは叶わぬ恋!
僕は異形、彼女は人間!
恋が実る訳がない!

だって僕は、ハロウィンだけしか動けない、滑稽なかぼちゃ男。

神様は何て残酷なんだ。
一日しか動けないのなら、恋心なんていらなかったのに。

来年のハロウィンはまだ遠い。
そして僕はうなだれたまま、その日を静かに待つしかないんだ。



パンプキンマンの憂鬱
(ああ、今日もまた)
(夜が長くて悲しくなるよ)


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Thanks/パッツン少女の初恋


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