Je vous souhaite







サッカーが大好きで、馬鹿みたいに正直で、諦めることを知らない。真っ直ぐすぎるくらいの君の背中が私は大好きで、ずっとずっと追いかけて来た。
君が悲しんでるのに無理に笑顔を浮かべてること、気づいてた。だけど私は何1つ君に出来ることが思いつかなくて、そんな無力な自分に落胆して泣いた夜もあった。

―だから、君が夢に向かって決心した時は本当に嬉しかったんだよ。
また君の本当の笑顔が見れるって思ったら、嬉しかったんだよ。





「将くん。」

「那華先輩、……あの、僕…」

「…馬鹿。なんて顔してるのよ、将くん。」



知ってるよ、将くんが…―怪我を治すために、ドイツに行くこと。



「那華先輩…先輩に相談しないで、勝手にドイツに行くこと決めちゃってごめんなさい。…でも、僕っ」

「…将くん、私前にも言ったよね。私はサッカーをしてる将くんが好きだ、って。」

「…はい。」

「だったら将くんが決めたこと、謝ることは1つもないよね?…ドイツに行って怪我を治して、またサッカーやるんでしょう?」

「…はい!」



真っ直ぐ見つめてくる将くんの瞳。―久しぶりに見る、将くんのこんな姿。
サッカーが好きで好きで、諦めることを知らなくて、とても真っ直ぐな瞳。そんな将くんの姿を見て、私はやわらかく笑顔を向ける。




「私は近くにいることは出来ないけど、誰よりも将くんのことを応援してるよ。…頑張れ、将くん!」




悲しいのに無理して笑う彼を、私はもう見たくないんだ。心なんてない空っぽな笑顔を、もう2度と見たくないんだ。
ドイツで怪我をしっかり直してきて、サッカーが出来るようにしてきて、
そして早くあの笑顔の君に会いたい。



「ほら、もうそろそろ時間でしょう。お兄ちゃんが待ってるよ?」

「あ、本当だ!それじゃ、先輩…」



彼の本当の笑顔を見ること、それが私の願いなんだ。だから私は悲しくない。―嬉しいんだ。
彼が生きる希望を再び見つけることが出来て、私は嬉しいんだ。

だから私は笑って見送ることが出来る。



「いってきます。」

「うん、いってらっしゃい。」



真っ直ぐと進む君の背中を見送れることが嬉しい。
嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい。

―なのに、



「…那華先輩!」



なのに、君はまたいつものように眩しい笑顔で、



「僕の病気を調べて、ドイツのお医者さん紹介して下さってありがとうございました。―いってきます!」



私の大好きな笑顔を残して、君は旅立ってしまうから、



「…お兄さん、将くんには言わないでってあれ程言ったのにな〜…」



嬉しいはずなのに、―寂しくて、ついに瞳に溜めてた涙が零れてしまった。



「将くん…!」



これから先、大変なこと、辛いこと、たくさんあるだろうけど頑張るんだよ。将くんなら出来る、乗り越えることが出来るって信じてるから。

暫く会えない日は続くけど、それでもまた会えるって信じてる。
強くなって元気になって笑顔の君にまた会えるって。



―だから今は少しの間、いってらっしゃい




Je vous souhaite