自分はコドモで、彼はオトナで。やっぱり歳の差の分だけ彼は私より知ってることが多くて、余裕があって。
どうしようもないのは、その吐いて捨てるほどある余裕で私を翻弄するのをこの人が酷く楽しんでいることだろう。
「ふぁ……っ、ダイゴさ…」
「逃げないで」
入り込んできた舌の感覚に、背筋どころか首の後ろの方まで肌が粟立った。
幼少期は全身が性感帯だと唱えたのは確かフロイトだっただろうか。
「舌、出して」
甘やかな命令が耳朶をくすぐる。あぁ駄目だ、身体に力が入らない。多分今立っていられるのはダイゴさんが支えているからだ。
「んぁ……」
びくびくとスーツに縋りながら言われた通りにするとちゃぶ、という鈍い水音と共に唾液の海に沈む舌。良い子だね、とキスとキスの合間に吐息交じりの台詞がサンドされて、もぅ泣きたい。
手のひらの真ん中の、薄い皮膚をなぞられるだけで私なんかはもう耐えられない。あまつさえ今は指が絡んで、乾いた皮膚が指の間を通っている。その上壁に追い詰められて慣れない深いキス。性的快感がキャパシティオーバーになって、寒気に変わる。
「ダイ、ゴさ……も、私っ」
本気で泣きそうになって私は限界を訴える。ダイゴさんは一際深く舌を絡めてから唇を離した。
「泣きそうな顔してる。そんなに気持ちよかった?」
キスが終わった瞬間ぶるりと身体を震わせた私を見てダイゴさんは意地悪に目を細めた。違うと反論したつもりだったけれど声えすら満足に出せなくて、私の唇はただ吐息ばかりを溢した。
「たまらないね、その顔」
「……っ」
耳の下の辺りから顔の輪郭に沿うように左手で頬を包まれる。それにまた身体が震えるが、ダイゴさんは別段気分を害さない。寧ろ私のその反応を楽しんでいる。
「そうやっていつも、僕の加虐心を煽るような顔をする。その顔が見たくて僕は君から離れられないんだ」
くつくつと喉の奥で笑って彼は私の首筋に噛み付いた。
アリアドネの髪先に罠を仕掛けた
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鬼畜というより酷い人。