RPG及び御伽噺的ハッピーエンド


「好きです!付き合ってください!!」

「えっ...?!」








「あっ、つっこだ」

「ほんとだ。夜久先輩だ」


星月学園でのとある昼下がり。
男子生徒が、学園のマドンナである夜久月子に告白をしていた。
そして、木陰で休んでいた宇宙科1年生木ノ瀬梓と、神話科2年の東谷昴。
たまたま告白現場に居合わせた2人は、立ち去るタイミングを逃したのか、木陰からずっと告白現場を見つめていた。


「さーすが私のつっこ。モテモテだね」

「ですねー」

「まぁつっこは、学園のお姫様だからね」

「先輩はお姫様じゃないんですか?」


梓がふとした疑問をぶつけた。
それを受けた当の本人は、お前の目は節穴かと言わんばかりの表情で梓を見ていた。


「梓少年や。人々を魅了する人をお姫様と言うのだよ。わかるかい?」

「.....(じゃあこんなに僕を魅了する先輩はお姫様にはなれないんですか...?)」


この2人、実は学園では有名なペアなのだが、なぜ有名かと言うと、弓道では百発百中である梓から昴へのラブアローが全く掠らないことで有名なのである。
傍から見れば、それはそれはお似合いなのだが、如何せん昴が鈍感過ぎるのである。


「まぁ」

「?」

「私はお姫様なんかとてもじゃないし、RPGで言えば、せいぜい野良猫ぐらいなんじゃないかな」

「野良猫ですか?」

「そ。雨に濡れるのは嫌だから誰か拾って欲しいにゃん」


そう言いながら、手元にあったタンポポの綿毛をふぅと吹きかけた。
空には白い綿毛がふわふわと浮かんでいく。

まるでこの綿毛みたいだな。

梓は心の中で、目の前の昴をそう思った。
ふわふわしてて、掴めなくて、するりと手から抜けて、いつかほかの人のものになってしまうのではないか。
梓はぐっと拳を握ると、空に飛んだ綿毛から昴に向き直った。


「じゃあ、僕が野良猫の先輩を拾います」

「あれ、ありがとさんよ」

「実は僕、魔法使いなんです。だから、野良猫の先輩を変身させられるんです」

「へぇ、そりゃすごいね。なにに変身させてくれるの?」

「人間にするんです」

「あら、召使にでもするつもり?」

「違います。恋をするんです」

「...」


ピタっと、昴の手いたずらが止まる。
そして、目線を梓に向けた。
その目は、大きく見開かれている。

あぁ、さっきの告白にあてられたのかな。こんなこと、言うつもりなんてなかったのに。

梓は、真っ直ぐ見つめてくる昴の視線から、逃れたくてしょうがなかった。
これ以上見つめたら、きっと抱きしめてしまう。

梓が目を逸らそうとしたその時。


「ありがとう」


ふわりと、昴が少し頬を染めて微笑んだ。
梓がドキッとして顔を赤らめていると、そのうちに視界は昴でいっぱいだった。




RPG及び御伽噺的ハッピーエンド
(お姫様になれなくても)
(誰でも恋は出来るのです)

 

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