ソリダスター



「泉くん!和食と洋食、どっちが好き?」

「和食ですね」

「卵焼きは甘い派?しょっぱい派?」

「出汁巻きが好きです」

「じゃあじゃあ!揚げ物は好き?」

「好きですよ」

「「「きゃー////」」」


「すごいね、あの人気っぷり」

「ね。あの積極性、ちょっと羨ましいかも」

「優雨!あんたも泉くん狙いなんでしょ!?泉くんの選ぶお弁当No.1になりたくないの!?」

「そりゃ…なりたいけど…」


はじめまして。北別府優雨です。
今、学園の女子たちの多くは、燃えています。
なぜなら、この学園のアイドル的存在である、ダンス部のアルスマグナさんたちによる、お弁当No.1グランプリが開催されるからです。

お弁当No.1グランプリとは、女子が思い思いのメンバーにお弁当を作り、一番気に入ったお弁当を作った女子が、メンバーと学園祭のダンスパーティーで一緒に踊ることができるというもの。

そして今、私のクラスであり、メンバーの内の2人が在席する2-Aには、他クラスからも女子が大勢やってきているというわけです。


「でも、泉くんに負けず劣らず神生くんもすごい人気だね」

「…まぁ、神生くんの選ぶ女子なんて決まってるけど」

「え?誰々?」

「……(優雨、神生くんに好かれてるって気づいてないのね…ドンマイ神生くん)」

「?」

「まぁとにかく!あんたも泉くん狙ってるなら、がんばんなさいよ!」

「う…うん…」








「とは言ってもなぁ…」


泉くんはメンバーの中でも特に人気だし…。
クラスで目立たない私のお弁当なんか、選んでくれるわけないよね…。

泉くんに想いを寄せ始めたのは、2年生になってから。
ダンス部を立ち上げて、初めてのダンス披露の時、私は魅せられてしまった。
しなやかに動く長い手足。揺れる銀髪。キリッとした目元…。
そのどれもが、美しかった。


初めて意識し始めた時のことを思い出しながら、私はサックスを吹いていた。
音楽家である母の影響で始めたサックスは、私の大好きな、大切な趣味。
とても人に聞かせられるものじゃないけど、演奏している時の不思議な空間が、私は好き。
今日も気ままにサックスを吹いていた。
その時だった。


ガチャッ


「っ!?」


扉の開く音がして、驚いて扉の方を見た。
そこに立っていたのは…


「い、ずみ…くん…」

「…とても、上手でした」

「え、あ…ありがとうございます…」


ドクン。ドクン。

だんだん近くなる泉くんとの距離に比例して、だんだん大きくなる私の心臓の音。
ぎゅ、と目を閉じると、泉くんの気配が横を通り過ぎる。
パッ、と目を開くと、泉くんはピアノの前
の椅子に座っていた。
そして、スッと手袋を取ると、鍵盤に手をやった。


「いい音楽を聞かせてもらったお礼に、何か弾きます。何がいいですか?」

「え…と…じゃあ…泉くんのオススで…」

「わかりました。では…ソリダスターという曲にします」








「あ…素敵でした…っ!ありがとうございます…っ!」

「いえ…北別府さんのサックスの音も、素敵でした」

「っ、私の名前…知って…」

「っ、こ、これは、その…同じクラスですから…」

「あ、そ、そうですよね!あ、あはは…」


少しでも、自分を知っててくれたことが嬉しいのに、それを知ると、もっと知っててほしかったという想いが心を支配した。
なんて欲深い人間なんだろう私は。

そんなことを思っていたら、泉くんが真剣な顔で私に尋ねてきた。


「北別府さんは…お弁当グランプリ、誰かに渡す予定ですか?」

「え!?あ、いや…」

「俺にください」

「っ…」

「…さっきの曲、ソリダスターとは、花の名前なんです。
花言葉…調べてみてください」


そう言って、泉くんが私の耳元で次にこう呟いた。


「お弁当、待ってます」


そして、私の心臓を高鳴らせるだけして去ろうとする泉くん。
でもその動きはピタリと止まり、また私の方を見てこう言った。


「ちなみに俺、お弁当は洋食で、卵焼きも甘いのが好きです」

そう言って笑って、今度は本当に去っていった。








家に帰って、ソリダスターの花言葉を調べた。
その花言葉を知って、私はお弁当を作る決意をしたのです。


〜グランプリ当日〜


「優雨!泉くんにお弁当作ってきたんだって?」

「う、うん…」


ついに、この日がやってきた。
お弁当は、実行委員の人たちが、朝回収していて、もうすぐ結果が出る。
そして、放送が流れた。


『今回、メンバーが選考した結果、ついにお弁当グランプリNo.1が決定しました!発表は、メンバーが選んだお弁当を作った女子の所に行き、跪いて手の甲にキスを落としてくれます!その時をお楽しみに!!』


ザワザワとなる校内。
今回はお弁当だけで選ぶらしいから、誰が作ったかということは、選んでからわかる形にしたらしい。
だから、確実に泉くんが私を選ぶ保証はない。
ドキドキしなから目を閉じていると、クラスの入り口がガラッと開く音がした。
そして…。


「北別府さん」

「泉くん…」


泉くんはスッと姿勢を落として、私の手を取り、そして私の手の甲に口付けた。


「北別府さん…いや、優雨」

「はい…」

「ダンスパーティーだけじゃない。ずっとずっと、俺と一緒にいてください」

「っ…////はい、喜んで…っ////」




ソリダスター
(花言葉は、私に振り向いてください)

 

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