神様ってなんて愚かなんだろう。

聖書の概要を掻い摘んで説明されたとき。
アダムとイヴがエデンの園を追放されたという件の箇所で、私はそんなことを思った。
アダムとイヴは善と悪の実を齧った。生命の木の心配をする前に、どうして二人に対する罰が、両人楽園追放なんて『罰』になり得ない罰なのだろうって。
彼らを共に地に降ろすだなんて、果たして原罪に値するのか。
何不自由なく生を全うしていたアダムとイヴにとって、与えられた贖罪は確かに厳しいものだったろう。働くことを知らなかったアダム。痛みを知らなかったイヴ。一挙に課せられた試練。決して豊満とは言えない大地との邂逅。
けれど、それはあくまで厳しいだけであって、重くはない。

二人は同種だったが、エデンにおわした神は、二人にとっては異種だったから。

二人が知恵の実を口にしていなかったら―――いつまでもいつまでも永久に、神とアダムとイヴは手を取り合って楽園での日々を謳歌できた。
だが、二人は自覚してしまった。二人だけが同種で『他』の神は異種なのだと。
自覚してしまえば一線は現れて、真実それは神と人間を別種に隔離した。
二人っきりの人間と。一人っきりの神様と。
お互いがいる。同じ人間がいる。そして子孫を残す術を携えている。仲間を増やせる。
だからアダムとイヴは地上に落とされても、不幸ではない。
だって、最もその別離に苦しんだのは独り残された神の方だと思ったから。
神は何故、自身を裏切った二人を引き裂かなかったんだろう。楽園の扉を開けてまで、その鍵を捨ててまで。
アダムとイヴはそれこそ、真実神に愛された最初の人間で、神は彼ら以外に愛でるものを知らなかったに違いないのに。



愚かな神は結局独り
(片方だけを地上に降ろせば、すべてが解決したのに。少なくとも、一人残っていれば自分の淋しさは紛らわせたのに)
(唆されたイヴも勿論愚かだけど、神様はそれを上回って莫迦だよねって話。だって一人は辛いよね?)



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