優しい陽光が包み込む。

連絡を受けた教団からの応援部隊がレイガンを連行していく。
伏せた眼差しに家族の姿が映ったのだろうか。一度天を見上げるとアレン達に微笑みを残した。
方舟で教団に戻ると鴉部隊が出迎えた。双子には鴉部隊から二人が監視として側に付き、今後の処分の詳細を言い渡している。
二人の存在を報告すれば彼女達は極刑になってしまうだろうと覚悟していたが、予想に反して二人の意志を買った教団は命令を遵守することを条件に受け入れるらしい。
一週間ほどは逃走・命令違反を理由に謹慎処分として軟禁されるらしいが、軟禁といっても二人の家族が監視に付くのだからそれほど苦でもないかもしれない。


『ウォーカーさん達にはご迷惑をおかけしました』

『ごめんなさい』


移動の準備が出来るまでの間時間を得た二人が駆け寄ってきて先ず伝えた言葉。しゅんと萎れる双子にアレンとラビは微笑むと、二人の頭を軽く撫でてやる。彼女たちの周りをティムキャンピーが飛び回ってちょっかいを出し、くすぐったいと双子は笑った。その様子をアレン達の後ろで興味の無さそうに腕組みをしながら見下ろしている神田と何処か優しい目で二人を見守るリンクが並ぶ。本来はコムイも此処に来られるはずだったのだが、生憎決済待ちの書類とフェイに捕まったらしい。二人には後日面会すると無線越しに泣きながら言っていた声がまだ耳に残る。


『あの、ミネルヴァさんとサイモン警部には…』

「大丈夫。ちゃんと説明と謝罪、してあるから」

『ごめんなさい...』


俯く二人を元気づける。きっとこれから先はもっと、辛いだろうから。


『あと、コムイ室長に伝言をお願いできますか?』

「なに?」

『室長の眼鏡、新調してくださいって』

「あ、もしかして盗聴器さ?」

『カメラ付きですよ』

『仮眠を取られている間に失敬しました』


多少の影はあるものの、にこやかに言う二人に苦笑する。ブローカー情報の漏洩はあろうことかコムイからだったとは。いくら非戦闘員とはいえ、司令官としてはいかがなものか。といっても双子の能力を考えれば致し方ないのかもしれない。


「謹慎処分の後はどうなるか決まったんですか?」

『まだ詳しくは決定していませんが、鴉部隊に混ざって要人護衛の任務などが言い渡されるだろうとのことです』

「そっかー、二人は強いもんな。護衛される側も女性だったら女同士のほうが気は楽だろうしな」


ラビの言葉にはにかむ二人は、顔を見合わせて笑った。
その彼女たちを見て、アレンが「そういえば…」と言葉を漏らす。


「君達の名前って何ですか?二人とも“シー”ではないでしょう?」

『はい、違いますよ』

『でも内緒です』

「えー、ケチさ!」


ねー、と見合って笑う二人にラビは唇を尖らせて不満の声を上げる。後ろにいるリンクを振り返ると『駄目だよハワード!』『内緒だからね!』と声が飛んだ。それに彼は何故か溜息交じりの承諾の意を返す。
アレン達が首を傾げていれば準備が出来たのだろう。監視の鴉が双子を呼んだ。返事を返した二人はお礼と別れの言葉を残し、彼らの元に戻っていく。
挟まれるように並んで歩いていく後姿に、もうあの影は滲まない。
次はいつ会えるのだろうか、そう感慨に浸っていればゲートの光に飲まれる直前、双子は何か思い出したような声をあげて振り返った。


『エクソシストの皆さんに、』

『言っていなかったことがあります!』


ん?と疑問符を浮かべた三人に、“彼女”達は極上の笑顔を残した。悪戯に成功した、その笑顔を。


『“僕”達は、』

『男でーす!』

「へ?」
「え?」
「は?」

ケラケラと笑いながら消えた影を呆然と見やりながら、エクソシストは暫く立ち尽くしていた。



堕天の黒翼
(天から堕ちた黒翼無き鴉は、地上で新たな翼と共に謳うのだ)


「え、ちょ、リンク!本当!?」
「私は言いかけましたが。」
「宿でのあの馬鹿騒ぎを遮ったのはわざとか」
「教えてくれたってよかったさ…!」
「何度か“彼ら”と称しましたが。」
「theyってそっちだったんかい!」
「え、というか何であんな女の子みたいな…。声とか仕草とか!」
「彼らはまだ十二歳で声変わりもしていませんし、仕草くらいどうとでも出来るでしょう」
「マジか」
「マジです」
「…それよりラビ、ストライクって言ってませんでしたっけ」
「……!!」
「ハッ、流石ウサギ」
「いい趣味ですね」
「それ以上言わないでくれさー!!」

END.
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墮天の黒翼

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