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あれから数分後には神田の体から痺れも無くなったようで、今はむすっと拗ねたまま私が手当てをしている手の甲を睨んでいる。多分薬にオマケが付いていたら、暫くは口を利いてくれなさそうな機嫌の悪さだ。ウォンが手当てをすると言ったのも睨みで拒否。
それでも私の我が儘には付き合って、もう治りかけていたその手を診せてくれたのは少し自惚れてもいいのだろうか。

救急箱をしまってから彼の隣に腰掛ける。バク達はルベリエから通信が来たらしく、あからさまな嫌悪を顔に浮かべて戻って行った。同行していったフォーはきっとバクのストッパーだろう。二人しかいない封印の間は静寂そのもの。
心地好い静寂に目を閉じ、身を委ねていると隣から視線を感じた。彼の目を見て首を傾げれば、その鋭い瞳が細められる。

「俺の目、手合わせするまで見なかったな」
『あー、まぁ…』

やはり気になってしまったかと思わず顔を逸らしてしまえば、突き刺さる視線に鋭さが増す。これは流してもらえそうにない。諦めて向き直れば、先に彼が口を開いた。

「バクにデータや憶測を俺に話されるのが嫌だったのか?」
『え?』
「…違うのか」
『あぁ、うん、違う。そんなのすぐに割り切ったから』

そんなの、という言葉で眉間に皺を寄せた彼の心中の疑問を察し、思わず笑みが零れそうになる。

『発作のことを知られてしまった時点である程度は諦めていたし、あの日から多分神田には遅かれ早かれ伝わるだろうとは思っていたから』
「だったらあの態度はなんだ」
『それはあの日の後悔』

ぐっとさらに彼の眉間に寄った皺。それを伸ばすように指先でなぞると、下から顔を覗き込む。

『キスの主導権を取られた自分が不甲斐なかったもので』

一瞬呆然と私を見下ろしたままだったその顔が言葉の意味を理解した瞬間の変わりようといったら。本当に飽きないやつ。こみ上げる笑いをどうにか抑えよう。

『神田が任務で出た後に我に返ってな。いくら精神的に参っていたとはいえ、主導権を取られるなんて、絶対いつもの私ではないし』
「っ…」
『今日会いに来てくれたときはお前のことだから真っ赤になっているんじゃないかと思ったのに、別にそういう感じもなかったし。だから余計にこっちが、』
「もういい!言わなくていい!」
『今更自分のしたことに気付くお前も凄いよ』
「うるせぇ!」

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