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どこか疲れたような表情で眠った月精が穏やかな呼吸を繰り返している姿を見て安堵していると、カーテンの向こうにある扉が静かに開いた。彼女の眠るベッドの周りに引かれたカーテンが揺れるものの、一瞬躊躇うような間。
布地の重なりからそっと入って来たのは任務から帰還した、表情を無理矢理殺した顔をする神田だ。月精が倒れた五日前からずっとこの表情である。

「もう少し早ければよかったんだが…。新藤の意識が戻ったよ」

僅かに驚きに見開かれた瞳は彼女が疲れて眠ってしまったことを告げると、また表情を隠してしまった。代わりに視線は眠る彼女の顔を覗き込む。
バクはサイドテーブルに広げていた書類を纏めると席を立ち、カーテンに手を掛ける。

「今日はもう起きないと思う。体力が回復するまで数日はそっとしておいてやってくれ。それと、先日言ったことには気をつけてくれ」

返事はせずにバクの使っていた椅子に腰掛けた神田に苦笑し、彼はそっと部屋を後にした。

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