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「そろそろ退室してちょうだい。今日はそっとしておいて」
「…分かった」

新藤の意識の戻らないまま、婦長に促されて集中治療室を後にする。
気が付けば月も大分空から落ちて、日付も既に変わっていた。
流石に眠れるときに眠っておかなければ、そう考えた後の記憶は無い。気付けば自室のベッドに横たわっていた。大分長くなってきた髪はしっとりと濡れていたから、シャワーは浴びたと思う。
寝返りをうち、窓から差し込む月光に照らされた天井をぼんやりと眺める。

「俺の、ため…」

バクの話に驚愕の声をあげたコムイと違って、俺は何の反応も出来なかった。
直後細かな閃光がバクの体を囲み、そのまま呻き声を漏らして座り込んでしまった彼が咳き込んだため、コムイが続きを話すことは止めさせた。彼女の、イノセンスの力にあれ以上逆らってまで、話をさせるわけにはいかない。
いつになるか分からない彼女の意識が戻るまで、彼女の思いには触れることは出来なくて…。
闇に視界を放り、あの満月の日を瞼の裏に描き起こす。

あの時、新藤は、俺がセカンドエクソシストだから、“人”ではないから拒んだのか。
それとも友を殺めたからか…。
泣かせたのは、変えられない俺の過去(こと)か。

「新藤は、君のために今まで、生きてきた…っ。そして恐らく、この先も…」

彼女の心に、届かない

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