02


「おっ帰り〜」

陽気な声に合わせてウインクが飛んだ。紙という名の絨毯の城の主、我らが室長、コムイ=リーだ。今日は椅子に鎖で縛り付けられている。
そんな彼を目掛けて報告書が投げつけられた。憐れにも間抜けな声を出してそれを顔面で受け止める。バサッと音を立てて視界が開けば、そこには絶対零度の鬼の姿。

『AKUMAしかいない場所に私を差し向けておいて、お前は書類から逃走したのか』
「ご、誤解だよ!僕はコーヒーを取りに行っただけで、リーバー君達が大げさなんだよ!だからそんな顔しないでっキレイなお顔が、」
【コムイ】

女が名を呼ぶと彼の表情が一変、体も石像の如く硬直した。

「…ごめんなさい」
『判ればいい』

不機嫌を露に丁度書類の山を持って来たリーバーと擦れ違う。彼のおかえりの声に無言で答えた。
女の名は新藤月精。黒の教団で神田と同様、冷徹・非道・無愛想で恐れられるエクソシストだ。女の中では一、二位を争う長身である。
月精はリーバーに仕事を追加されて泣き叫ぶコムイの城から抜け出した。

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