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「それならさっき俺からその…キ…キスを…したみたいに言っていたのは…」
「え…あ…そうだったかしら?あの…自分で何を言ったのか覚えていないから…」
「…」

呆れて溜息も出ない神田は近くの気の根元に座り、地面に視線を落とす。

(自分より他人の心配か…。…今の話じゃアイツが俺に好意を持っているかどうか、分かんねぇし…)

昔からどことなく月精の漂わせる雰囲気が好きだった。
それがつい最近“月精自身”に己は好意を寄せていると気付いたばかり。
苛めたのは気にする故か。

「あ、あのぉ…?」

しかし…この女、どうしてくれようか。
食堂で叫ばれてはあの兄妹に知れるのは時間の問題である。ましてや本人など、

「神田―!」
「神田く〜ん!」
「…チッ」

噂をすればなんとやら..。

「あら、リナリーちゃんと室長さん?」

目の前には元凶。
騒ぎ・元凶・追手を組み合わせて成立する式は、

「え?」

体が宙に浮いている。どうやら担がれているようだ。

「訂正しろ。“俺から”って所」
「えぇっ!?」

この騒動は食堂で人質にした元凶の弁明と睨みで無理矢理終息させた。
彼女への想いは否定せずに。

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