約束=契約

 ルーシィの家が決まったとミラジェーンから聞いたシーナは、商店街に近い家に向かった。
 家の前でベルを鳴らそうとした時、ゴシャ、とすごい音が聞こえた。

「……あぁ。ナツとハッピーが不法侵入したのか」
「あー……あの人たちならやりそうですね」

 何となくわかったシーナと、呆れるミア。
 溜息をついて呼び鈴を鳴らすと、しばらくしてからルーシィが出てきた。

「おはよう」
「シーナさん!? ミアも……。どうしたんですか?」
「家が決まったって聞いたから、お祝いにと思って。ちなみにガトーショコラ」

 すっと箱を出すと、ルーシィは目を輝かせる。

「わぁ!! ありがとうございます!! よかったらお茶していきませんか?」
「じゃあ、おじゃましようかな」

 箱を受け取ったルーシィが中に案内する。
 白い壁に木の香り。ちょっとレトロな暖炉に竈(かまど)があるいい家。
 その部屋に、ナツとハッピーが寛いでいた。

「おっ、シーナも来たのか!」
「誰かさんと違って不法侵入じゃないですよ」

 ミアが釘をさすと、ルーシィはうんうんと頷く。
 ちゃんとした常識人や常識を知っている猫がいるだけで心強い。
 ルーシィは紅茶を出し、シーナたちはソファーの方に座った。

「まだ引っ越してきたばっかりで家具もそろってないのよ。遊ぶモンなんか何もないんだから、紅茶飲んだら帰ってよね。シーナさんたちは一緒にケーキ食べましょう!」
「残忍な奴だな」
「あい。それよりシーナのケーキ、オイラたちに分けてくれないなんてずるい」
「紅茶飲んで帰れって言っただけで残忍…って…。そもそもこれ、あたしがシーナさんから貰ったんだから!」

 肩を震わせて怒るルーシィに、ナツはあることを思い出す。

「あ! そうだ。ルーシィの持ってる鍵の奴等全部見せてくれよ」
「いやよ!! すごく魔力を消耗するじゃない。それに鍵の奴等じゃなくて星霊よ」
「あぁ。だからハルジオンの店で……」

 思い出したシーナに、ルーシィは頷く。

「ルーシィは何人の星霊と契約してるの?」
「6体。星霊は1体、2体って数えるの」

 ハッピーに答えて、テーブルに銀と金の鍵を三つずつ並べる。

「こっちの銀色の鍵がお店で売っているやつ。時計座のホロロギウム。南十字座のクルックス。琴座のリラ。こっちの金色の鍵は黄道十二門っていう門(ゲート)を開ける超レアな鍵。金牛宮のタウロス。宝瓶宮のアクエリアス。巨蟹宮のキャンサー」
「巨蟹宮!!! カニかっ!!?」
「カニー!!!」
「うわー…また訳わかんないトコにくいついてきたし」

 額に手を当てて溜息をつくルーシィ。シーナとミアも子供っぽいナツとハッピーに呆れた。

「そーいえばハルジオンで買った小犬座のニコラ。契約するのまだだったわ。ちょうどよかった! 星霊魔導士が星霊と契約するまでの流れを見せてあげる」
「おおっ!!!」
「血判とか押すのかな?」
「痛そうだな、ケツ」
「なぜお尻……。血判とかはいらないのよ。見てて」

 怖がるハッピーに変な方向へ勘違いするナツ。
 また呆れたルーシィは気を取り直して、銀色の鍵を出して目の前に突き出す。

「我…星霊界との道をつなぐ者。汝……その呼びかけに応え門(ゲート)をくぐれ」

 鍵の先端が光を放つ。

「開け、小犬座の扉――ニコラ!!!」

 眩い光が迸ると、ぼふっと煙が立つ。そして現れたのは……。






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bkm
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