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「あれ…?」
最近、風紀委員会の会議で取り付けられた開閉式の下駄箱。
それを開ければ、いつも履いている靴が見当たらない。
もしかして、自分の下駄箱を間違ったのではないかと思い、もう一度下駄箱を確認する。
それは当然の如くわたしの下駄箱で、考えた結果、だいたいの検討はついていた。
「渚、どうかした?」
後ろから突然聞こえてきた精市の声に驚き、反射的に下駄箱を閉めた。
「せ、精市…いや、ちょっと教室に忘れっ!」
わたしの声を無視して、精市は下駄箱の蓋を開いた。
案の定、精市は驚いた顔をして、「渚、自分の靴は?」と聞いてきた。
「き、教室に忘れたのっ!」
「ふーん、じゃあ、俺も一緒に取りに行ってもいいよね?」
「え、あ、いや、」
精市はまたまた、わたしの声を無視して、教室までの道のりを歩きだした。
*******
「で、靴は?」
わたし達以外誰も居ない二人きりの教室。
夕日に照らされた精市の笑顔はいつも以上に綺麗だったのに、何か黒いオーラをまとっていた。
「えっとーそのー」
わたしは精市と目を合わせないように、顔をそらした。
しかし、それは精市には逆効果らしく、ますます黒いオーラをはなった。
「もしかして…いじめ?」
「う…うーん…」
「どうだろう?」と言おうとしたのを、精市に止められた。
止められたって言うか、精市のはなっているオーラにうん、と言わざるをえなかった。
「誰に?」
「誰って言うか…」
「もしかして、愛美ちゃん?」
ずばり言い当てられてしまい、どうすることもも出来なくなってしまった状況を察したのか、精市は「愛美ちゃんだよね?」と、確認してきた。
「う、うん、多分。」
「多分って…渚達は仲良かっただろ?」
そう、仲が良かった。
わたしが愛美の好きな人が精市だって気が付く前は。それよりも、何で愛美の気持ちに気付いてあげられなかったのだろうと後悔の念が込み上げてくる。
今も、そして、10年後も…
わたしは、鈍感すぎたんだ。
紛失