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いつもと変わらない帰り道。
そのはずなのに、愛美の言葉が何度も頭の中をリフレインして、私の心は少しずつ沈んでいく。
そんな私を察したのか、精市は心配そうな目で私のことを見つめてくる。
「渚、大丈夫?」
「えっ?! な、何が?」
「オレに隠し事する気?」
やっぱり、精市には、お見通しらしい。
「…ごめん」
「やっぱり何かあったんだね」
「まぁ、それなりに…でも…」
「でも…何?」と精市は私の目の前に来て立ち止まった。
「これは、私の問題だし、自分で片付けたいの!」
その言葉を聞くと精市は、大きなため息を一つこぼし、「全く…」と呟いた。
「ま、全くって何なのよっ!!」
「いや、渚は本当に頑固だなと思って」
「なっ!?」と、私は一声もらすと精市はフッと微笑んでいつものように、私の頭を撫でてくれた。
「でも、本当に辛くなったら言うんだよ。オレだって、彼氏らしいことしたいしさ」
「う、うん」
私が頷いたのを確認すると精市は「さぁ、帰ろうか」と言い、私の手を繋いだ。
いつの間にか、心は軽くなっていた。
そして、私は明日、愛美に自分の気持ちをはっきり言おうと、決心した。
******
「愛美、ちょっといい??」
放課後、私は帰る準備をしている愛美に声をかけた。
「…いいよ〜愛美も渚に話があったの〜」
愛美は「行こ!」と、私の手を引っ張って、歩きだした。
着いたのは、誰一人居ない屋上。
「さってと…」と愛美は私の方を見てニコニコと笑っている。
「やっと幸村君と別れる気になった?」
その表情は可愛らしい愛美そのもの。
そして、恐怖を覚える笑顔。
でも、そんな笑顔にも、もう慣れたような気がした。
「…別れ…ないよ」
自分なりの力強い声ではっきりと愛美にそう告げた。
「…あっそ!別にいいけど、困るのは渚だし!」
「?どういう意味?」
自分でも、恐がってる顔してるってわかる。
そんな私を愛美は面白そうに見つめてくる。
「知りたいよね!でも、今は教えない!!」
まるで、子供が新しいオモチャを貰ったように、愛美は笑顔を見せている。
「渚には、一杯傷ついてもらわないと!」
愛美はまた、嬉しそうに笑ったんだ…
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