いつもと変わらない朝…
でも、一つだけ変わっていたことがある。

それは…


「…ない」


私は自分のロッカーや机の中を隅々まで探した。


「?渚、何がないの?」

「…教科書…」


えっ!?と、精市は驚きの表情を浮かべていた。
次第に、クラスの皆が探し始めてくれたが、さっぱり、見つからない。


「どこ〜?」

「渚〜!」


誰かが、私の後ろから抱き付いてきた。


「ま、愛美!」

「渚、どうしたの?」

「あ〜教科書探してて…」

「私…見たよ!渚の教科書!」


それだけ言うと、愛美は案内するように私の手を握り、教科書の場所まで引っ張って行った。

****


「何…これ…」


目の前に広がっているのは、無惨に切り刻まれたり、落書きがされている私の教科書。


「ひど〜いっ!!何で渚の教科書がっ!?」

「私にも…何が何だか…」


静かに、教科書を拾いあげる。
見るからに、もう使えそうにない。


「渚!気にしちゃダメだよ!」

「うん…教えてくれてありがとね愛美…」


「どういたしまして!」と愛美は微笑んだ。


「渚…酷いなこれ…」


ハッとして後ろを見つめるとそこには、精市の姿があった。


「精市…」

「…大丈夫だよ。渚には、俺がついているからね」


ポンポンと精市の手が頭に触れるのを感じた。


「ありがとう…精っ!?」


刹那、愛美の表情が憎しみの色を浮かべていたのを、私はみてしまった…

この時、初めて気付いた。
愛美は精市のことが好きなんだって…

そして、この教科書のことも愛美がしたのではないかと、私は疑ってしまった…






疑イ




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