何もかも失った―…

仕事も婚約者も

『オレ達…やっぱり結婚するの止めよう…』

まだ彼の言葉が耳について離れない。

もう嫌だ―…

頭には暗く、否定的な言葉しか浮かばない。

もう…いっそのこと死んでしまおう。

そう思い、クビにされた会社の屋上へ一歩一歩、確実な足取りで近づいて行く。
そして、ゆっくりと屋上のドアノブをひねり屋上の縁へ立つ。

何の未練もない…

目を閉じ、地から足を離した。

感じるのは空気の抵抗。ただそれだけ。

どうしてこうなってしまったのだろう。

考えても答えは出ない。

途切れていく意識の中、私はまだ答えを探していた…








「渚…渚!」

懐かしい声がする…

人って…死ぬと幻聴まで聞こえるんだ…


「渚!!!」

「ん…幻聴ぢゃ…ない?」

「そうだよ、ねぇ渚、あと5分すれば昼休み終わるんだけど?」

「えっ!?」

驚いて目を開ける。

「全く…」

そこに立っていたのは紛れもない彼、幸村精市…
でも、その姿は10年前の…

(どういうこと?)

確かにあの時、私は会社の屋上から飛び降り自殺したはず…

「?渚どうしたの?」

「な、何でもないよ!」

これが…噂の…タイムスリップってやつ!?
いやいや、ドラえ〇もんぢゃあるまいし!

私の頭がおかしくなったとか!?







見えない答え







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -