秘密
色々と疲れた。
そう思い、机に突っ伏した。
転校初日はクラスの人達から色々質問されて大変。転校生は慣れているはずなのに、流石にこればっかりは慣れても疲れる。
特に多かった質問は、綱海さんとはどんな関係なのか。と言うこと。
確かに、初登校で二人で仲良く(?)手を繋ぎながら来たのはまずかったと思い、後悔。
おまけに、綱海さんはモテるらしく終始、女の子達は羨ましがっていた。
確かに、綱海さんは優しくて面倒みがよく外見だってかっこいいし、モテるって言うのは、何となくわかる気がする。
誰も居ない教室で一人そんなとこを考えていたら、突然、教室の扉が開く音がした。その方向を見るとそこに立って居たのは綱海さん。
「綱海…さん?」
よっ!と綱海さんはわたしの方に近づいてきた。
「お前、まだ慣れてないだろ?一緒に帰ろうぜ!」
「は、はい。」
その言葉でわたしは急いで帰りの支度を始めた。
「おいおい、まだ支度してなかったのか?」
「は、はい。すみません。」
「別に気にすんなって!準備何かゆっくりでいいからな!」
そう言うと綱海さんは窓の外を眺め始めていた。
ゆっくりでいいとは言われたものの、待たせるわけにもいかないので、わたしはなるべく早く支度を済ませた。
「すみません、お待たせしました。」
「それじゃ、行くか!」
そう言うと綱海さんは歩き始めた。
わたしもその後を追う様にして歩き始める。
「また海でも見に行くか!」
「えっ?わっ!」
その言葉と同時に、綱海さんはわたしの手を掴み走り出した。
―――――
綱海さんの足の速さのおかげなのか、はたまた、学校が海に近いおかげなのか、わずか10分足らずで海に着いた。
「疲れたな!」
ハハッと笑いながら話す綱海さん。
「疲れたなって…全然…そんな、風には…見えませんよ!」
息切れをしながら話すわたしに綱海さんはわ、わりぃと頬をかいた。
「それにしても、綺麗ですね…」
「だろ!でも、もっと綺麗に見えるとこが有んだぜ!」
来いよ!と綱海さんは再び手を差し出した。
わたしはその手を掴んだ。
しばらくすると、わたし達は小さな洞窟のような場所に着いた。
「ほら、綺麗だろ!」
「本当だ…」
「なぁ、此処、オレ達の秘密の場所にしようぜ!」
「わたし達の?」
ああ!と綱海さんは力強く頷いた。
「でも、わたしなんかでいいんですか?」
「ああ、つーかお前じゃなきゃダメだ。」
真っ直ぐに瞳を見つめられ、思わずドキッとしてしまった。
ほら、約束!と一言だけ言って、綱海さんは小指を差し出した。わたしもそれにつられて小指を差し出す。その瞬間、わたしの小指は綱海さんの小指と絡まっていた。
「ゆーびきりげんまん、嘘ついたら針千本のーます、ゆびきった!」
その声を合図に小指が離された。
綱海さんは、よし、帰るか!とわたしの手を引いて歩き出した。
その帰り道、わたしはあの場所の景色が頭から離れなかった。何だか、あの場所を知ってる気がしてならなかったんだ。