「ほら、着いたぜ!」


そう言われ、目線を下から上にもっていけば、視界を埋めたのは久しぶりに見た沖縄の海。
潮の香りが鼻をつく。
足元も一面に砂浜が広がっていて、久しぶりの感触に少しぐらついてしてしまった。


「おいおい、大丈夫か?ほら!」


そう言って差し出されたのは彼の手。
これは、手につかまってろと言う意味で捉えて良いのだろうか?と、疑問符を浮かべながらも恐る恐る彼の手に掴まった。
その瞬間、自分の手がギュッと掴まれたのを感じた。
彼は何食わぬ顔で海に向かって歩きだした。
波打ち際までたどり着けば、彼は着ていたTシャツを脱いだ。
その行動に思わず、クルッと後ろを向いた。


「ん?あぁ、わりぃわりぃ!もう大丈夫だぜ」


その言葉を聞くと、わたしは彼の方を向いた。
彼の脇には、サーフボードが抱えられていて、サーフィンをする気満々だった。


「オレ、海行くけど、お前は?」

「わたしは…いい…いかない…」

「そっか…じゃあ、ここにいろよ。しばらくしたら戻ってくっから!」


綱海さんは勢いよく、海に入った。
わたしはその様子をジッと見つめているだけ。
でも、知らない間に綱海さんと小さい時の自分を重ねていた。
まだ海が大好きだったころの自分。
キラキラと輝く水面を見つめながら、わたしはゆっくりと目を閉じた。








人魚の海


(戻ってきたんだ…)




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -