帰還







ガタンッ、と大きな振動が体に伝わってきた瞬間、わたしは重たい瞼をゆっくりと持ち上げた。
窓の外は懐かしい景色。
ああ、帰ってきたんだな…と、思い、頭を起こした。
車の窓から広がるのは、懐かしい、大好きだった海。今は、嫌いになってしまったけど…。
すると、車は急にスピードを下げ、いつの間にか、止まった。


「海穂起きた?ほら、ついたわよ」


「降りなさい」と、お母さんに促され、車を降りた。
懐かしいにおい、懐かしい風景…
全てが懐かしく感じた。
着いた所はおばあちゃんの家。


「おばあちゃんの家?」

「そうよ、早く来なさい」


まだ寝ぼけている目を擦りながら、お母さんの後ろをついて歩く。

そうだ、今日から一人暮らしのおばあちゃんと一緒に暮らすんだ…
と、ここに来た目的を自分で理解しながら、家の居間まで行った。

居間には、先に着いていたお父さんとおばあちゃんが、何か話をしていた。
二人はわたしとお母さんに気付いたようで、こっちを向いた。


「おばあちゃん久しぶり!」

「おや海穂かい?懐かしいね…ほら、こっちに座りなさい」


わたしはおばあちゃんが指定した所に座った。
そこから、いろんな話をした。
前の学校のこととか、稲妻町での生活のこととか本当に色々。


「そうかい…まだ、海が怖いのかい?」


その言葉にわたしは何とも言えなかった。
別に、小さい頃に比べれば、海を見るのは大丈夫になった。
だが、問題は、海に入ると言うことで…
わたしは曖昧に首を傾げた。


「そうかい…」


おばあちゃんはそれだけ言うと、しばらく話さなくなった。


「おーい、ばあちゃん!海行くけど、一緒に行くかー?」


ふと、玄関から聞き慣れない声が聞えた。
声の高さからして、男の子だと思う。
その声をおばあちゃんが聞くと、その子を、ここに呼んだんだ。





人魚の帰還
(男の子の…声?)






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