つないだ手と手
別に、小さい頃は手をつなぐなんてこと普通だって思ってた。
実際、思い返せば、小さい頃は毎日のようにアイツと手をつないでた。わたしより一つだけ年上でお兄ちゃんみたいに大きくて温かいアイツの手が大好きだった。
「ねぇ、手つないで散歩しようよ。」
わたしの目の前で盛大に飲んでいたジュースが吐き出された。相手の丸井ブン太はゲホゲホとむせっていて、見ていて大変辛そうだった。
「おまっ!いきなり何言ってんだよ!?」
「ん?だって、最近さっぱり手つないでないからさー、いいじゃん少しぐらい」
「お前…もう子供じゃねぇんだぞ」
「中学生はまだまだ子供ですー」
ね、行こうよ。と、お願いするわたしにブン太は渋々、立ち上がった。
「き、今日だけだからな!」
「うん!」
外に出ると、顔を真っ赤にしてブン太は手を差し伸べてきた。
わたしはその手をゆっくりと握る。すると、ギュッとブン太は手を握り返してきた。
久々の手の温かさに、わたしはドキドキした。
「ブン太の手、大きいねー」
「こ、こんくらい普通だろぃ」
「そうかな?」
「あぁ、そうだ。」
恥ずかしいのか何なのか、ブン太はこっちを向こうとせず、歩き続けている。
やっぱり、わたしは彼の手が好き。そう思った。
「ねぇ、ブン太。」
「何だよぃ?」
「この先も、ずっと手つないでてもいい?」
気が付けば、そんな言葉を口にしていた。
ブン太はと言うと、歩くのを止め、顔を真っ赤にさせながら、わたしの方を見つめた。
「お前っ…それっ!?まぁ、いいや」
何やらボソボソと呟いていたブン太は、わたしの方を向き直して、口を開いた。
「オレでいいなら、何年でも、何十年でもつないでてやるよ!」
ありがとう。
わたしがそう言うと、ブン太は再び手をつないで歩き始めた。今度は何だか嬉しそう。
何でなのか、よくわからない。
とにかくわたしは、ブン太の手をいつまでも繋いでいた。
つないだ手と手
(それはとても温かかった)
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