手を握って、優しく呟くの


『返事はいつでもいいよ、ただ、赤崎君にわたしの気持ち知って欲しかっただけだから…それじゃ、また明日ね!』


そう言って、オレの気持ちも伝えないまま名前と別れたのはほんの2、3時間前。今でもはっきり覚えている。
でも、今、現在進行形で俺の目の前に居るのはベッドに横たわる名前。
寝ているだけならまだましだが、その体には見慣れないチューブや機械やら、色々繋がってた。まるで、漫画とかに出てくるワンシーン。俺は何も口にすることが出来なかった。
看護師のヒソヒソと話す声が聞こえてきた。
どうやら名前はあの後、道路に飛び出して車にひかれたらしい。

全く、コイツはバカだ。
ふと、キラキラ光る物が視界に入った。それは名前の手に。
その手の中に有る物を見た。


「っ!?これ…」


それは、いつか名前にゲーセンで取ってやったケータイのストラップ。
初めてアイツにあげたプレゼント。最近ケータイに付けて無いと思ったら、自分で持ってたのか。

でも、何でストラップが綺麗に残ってるんだ?と疑問が浮かんだ。嫌な推測をしてしまった。


「すみません。」


その推測が正しいのか気になったオレはたまたま、近くを通っていた看護師に声をかけた。その看護師はにこやかに「どうしました?」と立ち止まった。


「コイツ、何で道路に飛び出したか分かりますか?」

「え?ああ、何でも、何かを拾おうとして、道路に飛び出したらしいけど…もしかしたら、ケータイを拾おうとしたのかしらね!」


ケータイが綺麗に残ってたもの。とほほえみながら言う看護師にお礼を言ってその場を去った。
やっぱり、オレの推測は正しかったらしい。


「バカかお前は…」


ベッドに横たわる名前に呟いた。こんな何処にでもあるストラップの為に、アイツは事故にあったのか…
オレはそっと、アイツの手を握った。


「まだ、オレの気持ち伝えてねぇよ…」


握った手に力を込めた。


「オレは…お前のこと…」


"好きなんだ"


オレ達以外誰も居ない病室で、優しくそう呟いた。




手を握って、優しく呟くの


(だから、生きて、オレの傍にいてくれ)




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