kiss未遂事件








本当、今日はついてない日だなと思った。
思ったようにプレー出来ないし、達海監督からは、会議室に荷物を運ぶように指示されたばかり。
まぁ、こういうのをぱしりって言うのかもしれないけど…
しかも、荷物はやけに重たい。
荷物で塞がれて手を器用に使いながら、会議室の扉を開け、近くのテーブルに荷物を置いた。
静かな会議室に誰かの寝息が聞こえてきた。
びっくりして、恐る恐る後ろを向いた。


(えっ!?名前?)


後ろにある机に突っ伏して眠っていたのは恋人の名前。
名前はそのまま起きる様子が無い。このままでは風邪を引いてしまうと思って、オレは着ていたジャージの上着をゆっくりと名前にかけた。


(か…可愛い…)


ジャージをかける時に見えた名前の寝顔にドキッとしてしまった。
いつもなら逆な立場なだけに、こういうのは何だか新鮮だった。


(今なら…キス…出来るかな?)


何でそう思ったのか自分でもわからない。
でも、気が付けば体が勝手に動いていて、既に、名前の顔が近くにあった。
名前の唇までもう少し…
というところで、閉めていたはずの会議室のドアが勢いよく開かれた。
びっくりして、ドアの方を見れば、そこには、ワナワナと怒りのオーラを出している黒田さんと、軽蔑な視線を送っている王子。そして、面白そうにこっちを見つめている達海監督の姿。その中で先に口を開いたのは黒田さんだった。


「椿っ!てめぇ、何コイツにキ、キスしようとしてんだよ!」

「…バッキー、君だけは、そういうヤツだとは思って無かったのに」

「あ、あのーその…」


どこからどう見ても、怒っている二人。
監督に助けを求めようとしても、監督は面白そうに笑っていて、助けてくれる見込みはないだろうと、絶望感を覚えた。
そんなオレをよそに、名前は呑気に目を覚ました。
まぁでも、名前の寝顔見たし…二人に怒られるのも、別にいいかな?って、思う自分がいた。






kiss

(椿、てめぇ何ニヤニヤしてんだよ!)
(いや、別に…)










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