へにゃりと笑いながら携帯の液晶に笑いかける彼女を苦笑いで眺めた。


「可愛いーでしょ」
「すげー猫だ猫、黒猫!意外とでかい、そしてすげーイケメンキャットじゃん!!」
「島田アンタたまに馬鹿みたいな喋り方するわね」
「三好さんひでえ」


猫をはじめ、愛玩動物というのはやはり凄い。あっという間に雫ちゃんどころか島田も虜にした。

あの後お父さんと戦争(という名の電話)をした所、勿論反対された、大反対だった。
しかし、「お父さんのばかばかわからずや!いいもん高尾君家で一緒面倒みるもん!!」と叫び、雫ちゃんは見事勝利をおさめた、俺の話がでてすぐお父さんは許したらしい、畜生、俺信頼のしの字もない。


「三好さんも見てみなよ、イケメンキャット」
「あたし犬派なの」
「いいからいいから」
「あのねえ…」


ちょっと、大人しくしなさいよ。と睨む三好をみる辺り周りにも段々慣れてきたみたいだった。いやまあ島田は死ぬほどフレンドリーという所もあるだろうが。
雫ちゃんのパステルイエローの携帯が島田から三好に移る、液晶をみて、三好は眉を潜めた。


「…可愛くない」
「ええええなんで美亜ちゃん!!」
「三好さんおかしい!!」
「可愛くないわね、あたしならこいつの尻尾踏む」
「ひっでえ!!」


三好さんおかしいおかしいと騒ぐ島田が崩れ落ちた、押さえている部分をみるに脛を蹴られたのだろう、うわ凄い痛そうすっげー痛そう!!


「なんか気にくわないのよ、特に目、この猫の中でもつり目気味なこの目が気にくわない」
「可愛いのに…かっこいいのに…イケメンさんなのに…」
「雫ちゃんの口からはじめて聞いたイケメンが猫へとは」
「でかしたわ猫!!」
「おい三好てめえ」


いきなり掌返しやがって、やっぱりミス秀徳のミス腹黒は掌返しの速さが違う。
…だけど、まあ、何故だか少しだけ同意できる。この橙がかかった金色の目、たまにする勝ち誇った様な目は少しイラッときていた。

不服そうに携帯と睨めっこする雫ちゃんと島田を見つめていたら艶やかな黒髪が視界の端に映る。


「あ、鶴ちゃん」
「ういっすー、なに、どうしたのよ」


珍しく長い髪をおろした鶴ちゃんが片手をひらひらと降りながら携帯を覗き込む、花があしらわれた髪止めは彼女の彼氏からのプレゼントだろうが、それは雫ちゃんが怒れるに違いないのでとどめておこう。

パチパチと瞬きしながら液晶をしばらく見つけ、鶴ちゃんは少しだけ眉を潜める。


「…猫?」
「猫!!私の!!」
「へえー雫飼いはじめたんだ」
「可愛いじゃ………ん?」
「?どうしたの鶴乃ちゃん」
「…どうしよう、あたしこいつどこかでみた事ある」
「えっ、なんなの、美亜ちゃんも鶴乃ちゃんも!」


もう!と困惑しながら慌てて携帯を自分に寄せる。


「んー…なんだろうなー…何かに似てるんだけどなぁ、何なんだろ…」
「…確かに、何かに似てる気がしないでもないわね」
「ええなに…なに…」
「なあ緑間!何に似てると思う!?」
「ひっ、やめろ!!」
「真ちゃんびびりすぎ」
「画像だっての、画像」


いつの間にか島田の携帯にも届いていたらしい、島田が自分のターコイズブルーのスマートフォンを緑間に押し付けいた。相変わらずのゆるゆる締まりない言動に真ちゃんが眉を潜めながら大嫌いな猫が映った画面を見つめる。


「確かに、似てるな、何かに」
「なんだっけ、なんかいつもみてる様な……ああ!」
「…ああ、わかった」


鶴ちゃんが声をあらげて手を叩いたのと真ちゃんの声が綺麗に重なった。


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