「………」 「似てるわ」 「似てるわね」 「似てるな」 「似てんね」 「に、似てる…!!」 …生まれてはじめて、雫ちゃんに笑われた。 「黒い毛並みと黒い髪」 「橙かかった琥珀色でつり上がった瞳」 「雫になついて、雫さんがとられると異様に怒る」 「そして三好さんが嫌い」 「高尾君だ…!完全高尾君だ…可愛い…猫可愛い…!!」 「そんな、似てないと思うんだけどなー…」 そう、雫ちゃんが拾った黒猫に似ている人物、それは俺だったのだ。島田をスマートフォンを顔の横に並べて溜め息を吐いた。 自分では似てる気はないのだが昨日の行動は確かに俺似だ、もし雫ちゃんが知らない男にちゅーされそうになっていたら俺は全身全霊で相手を殺す事になるだろう。 「そう思ったらこの猫、さーらーに憎たらしいわ、早く去勢させましょうよ」 「正しいけど三好ひでえ!」 「猫の金玉ってなんであんな可愛いんだろうな」 「この展開でその話題ぶっこめる気合いは尊敬するわ」 「猫自体、可愛くないのだよ」 俺と携帯を見比べつつ口々に思いを発する、雫ちゃんは常に笑いを堪えようとして堪えてなかった。そんなにツボにハマったのか雫ちゃん。 「ねえ雫、名前は?」 「決めてないよ」 「決めてないのか」 「なるほどなるほど」 いきなり静まりかえり、約三秒の沈黙を破ったのは島田だった。 「……和成二」 「却下」 「まだ全部いってねーし!!」 「言いたい事わかるっての!!」 「クロかタマか和成か高尾にしましょう」 「だから三好!!………おい二号忘れてんぞ!!」 「やーね、こっちが先よ」 「クロかタマかを予定してたな…」 「…雫、古典的ね」 ああもうあっちからこっちから勝手に喋りやがって。混乱するわ馬鹿。 あーでもない、こーでもないと人の猫の名前を皆で考える中、少し考えこんでいた雫ちゃんが思いたった様に口を開けた。 「…和成」 「は!?」 「だめ?和成二号、和成」 いい名前だよ?ね?と手を合わせて俺に返答をねだる。情けなく「あ」とか「え」とか返せない俺に島田が野次を飛ばしたり三好が舌打ちをしたり、相変わらず真ちゃんは眉間に皺を寄せ鶴ちゃんは溜め息を吐いた。 「…いいと、思います」 「!!和成二号!!」 神様、安易に答えた俺ば馬鹿でしたか? ←|→ ⇒top |