あたしの持論だが、花宮真という男は外道だと思う。出会った時は少しばかり性悪な猫被りで許せたが、現在は普通に外道だ。…普通、というのもおかしな話だが。

例えば、彼が取り組むバスケットボールではもうゲスの極みだし、日常でもそのゲスさは変わらない。
結局相手が悔しがったり怒ったりするのが見たいだけだ、正に外道、これは酷い。
まあそんな花宮も、彼だって人間なのだ。
あたしはそんな、ある意味ギャップに近い感じで惚れてるんだけど。

ただコレは別だ。


「……えっと、一応聞くね、合鍵渡してくれたのは嬉しかった、ほんとに、でもさ、あたしの気のせいかな?」
「気のせいだろ」
「いや、あたしまだ言ってないからね?多分気のせいじゃないよ?どんどんあたしの物花宮の家に移動してない?」
「気のせいだろ」
「とりあえず本読むのやめて」


どうみても聞き流しつつソファーに凭れて白々しい顔してる花宮から本を引き抜く、いやいやどうみても移動してる。というか今まで何故つっこまなかったのか、浮かれていたからか?
まず本やらが花宮の家にいって、いつの間にか日常に必要なあたしの物はほとんど花宮の家に移動していた。というか一室にはタンスごと移動してる。


「もうあたしの家に制服とか以外ほとんど無いんだけど?というかいつの間にこんなに移動したの!?」
「お前が勝手にこっち持ってきてお前が勝手に置いていったんだろ?何いってんだ?」
「見事なまでに知りませんみたいな顔しないでよ!!タンスとか持ってこないし!?」


というかここまで来たらもう花宮の方に引っ越した方が早い、電車通学になるけど大した距離じゃないし…
そこまで考えてハッと気づく、今あたし凄いナチュラルに死ぬほど恥ずかしい事を考えてた。一気に顔に熱が溜まるのを感じて顔を覆った。


「とにかく、全部家に持ってかえるから、特にタンス!!」
「合鍵渡しただろ」
「渡されたけど!?」
「じゃあこっちに住めばいいだけだろバァカ」


ばさり、と本が落ちた。何をいってるんだこの人、あたしまだ高校一年生、正直若いというかまだ学生。よくもまあそんな簡単に住むだなんていえる物だ。
クツクツ笑う花宮に苛立ちつつ本をひろった。


「い、いや、絶対住まないから、住めないから!!」
「そのうちこっちが家になるだろ」
「ないから!家帰る!」
「家具は業者に頼むから荷物まとめとけよ」
「だから住まないから!!」


とはいいつつ、あたしの家に帰った所で本はこっちあるし、元々趣味が狭いのもあって暇潰しなんてできやしない、精々勉学に勤しむぐらいだ。
ああ、あたし本当につまらない女だ。これなら花宮の家に住んだ方が利口だし、楽しい。


「元々荷物少ないだろ、早めに捨てるもの区別しておくんだな」
「……いってきます」


はいはい、逃げないし逃げれないしついていきますよ。
とりあえず重い教科書から持ってこよう。家具は業者に頼むらしいから、あとは小物とかそこらへんだ、今日からはじめたら明日で終わってしまいそう。
あたしが部屋の契約を切るのはそう遠くない未来になった。


「で、あたしの荷物はどこに置けばいいの?」
「お前のタンスが置いてる部屋まるごと使え」
「…は、はかったな!?」


これだから、花宮真は外道だとか言われるんだ。