「田中。今日は俺から離れるな」
「…はい?」


カルガモって可愛い。カルガモの親子って本当に可愛い。親の後をべったりをひっついて歩くのがカルガモの子、すりこみってやつは可愛いんだ。


「緑間」
「なんだ」
「おしるこ頂戴」
「…仕方ない奴なのだよ、一口だけだぞ」

「……どういう事なのだよ……」
「私もわけわからんのだよ」
「田中、高尾となんか話さず俺と喋るのだよ」
「え、あ、うん、」
「う、うわあああああん!!真ちゃんが真ちゃんじゃねえええええ!!」


高尾がガンガンと悲鳴をあげながら頭を机に叩きつけるのは理由がある。簡単だが不思議すぎる理由だ。
緑間がカルガモになった。
私が歩けば後ろをひょこひょこひっつく様に緑間も歩く。
私が友達と話せば熱い視線をあびせたのち「こっちむけ」という。
私が頼み事をするば高尾ばりの気前のよさで引き受ける。
うん、明らかにおかしい。普段の緑間と百八十度ぐらい違う。どういう事だ。


「え、真ちゃんどうしてしまったの?」
「うるさい高尾田中との時間を遮るな下僕風情が」
「あ、俺の扱いは変わらないの……」


新たな発見。高尾に優しくしない。これはあれだ、おは朝が「蟹座の貴方ー今日は女下僕に優しくしてね」とかいったに違いない。朝から女下僕という単語は聞きたくねーな。
カルガモ緑間は今は私の右手の爪を磨いている。爪はツゥルツゥルに変化していく。ちょっと怖くなってきた。


「なんか俺には手に負えないから星子ちゃんに任せるわ!じゃ!!」
「おいこら高尾まてアンタこの前ツイッターで『うちのエース様くそかわwww』とか呟いてたじゃねーかエース様の面倒はお前がみろよ!!」
「田中……高尾を優先するなんて酷いのだよ……」
「あーもう!!」


じーっと見つめる緑間に何も言えなくなった。爪磨きが左手にかわる。右手をみれば作り物かと疑うぐらいに綺麗になっていた。うおーすげー


「緑間凄いねー、めちゃめちゃ綺麗じゃんかー」
「……田中、それは俺を褒めているのか?そうなのか?」
「うえっ!?、まあ、」


びっくりした、いかなり左手がっしりを掴んでくるもんだから本気でびっくりした。一体なんだってんだ。


「緑間、今日やっぱおかしいよ、一体どうかしたの?」
「別に、おは朝のいう通りにしているだけだ」
「それがおかしいっての、今日はどんな占い結果だったのよ」
「……」


眉間に皺を寄せ口ごもった後緑間は溜め息をつき口を開ける。


「……今日は、好きな奴に優しくしたらいいと言われたのだ。お前に褒められたくてな、素直になっただけなのだよ。明日からはいつも通りでいく」
「へえー、そうなんだ、」


つまり緑間は私が好きな奴で私に褒められたくて、いつも私が緑間は素直じゃないなあというから素直になっただけなのか、でも明日からはいつも通りにいくのね。
そうか、


「……緑間」
「なんだ。今日はお前の頼みをなんでも聞いてやる」
「質問。それは私が自惚れていいって事なの?」
「……今日は嘘はつけない。つまりはそういう事なのだよ。別にふるだの引くだのしてくれて構わない」
「じゃあ私も好きです。付き合ってください緑間」


緑間はびっくりしてたけど「これがおは朝のご加護なのだよ」といっていた。
確かにおは朝って奴は凄い。