イケメン、運動神経抜群、気配り上手、偏見を持たない、足が長い、筋肉がちゃんとある、声がかっこい、


「…高尾ちゃんの良いとこなんて上げたらキリないわ」
「先輩にそういって貰えるなんて和成感激ー」
「あざといねぇ」


あたしよりでかいしあたしより可愛い事をするこの後輩はめんどくさい。今日もあたしに「俺の良いとこ教えてください」なんていってきた。
そんなもんあたしに聞かれても困る。きっとこいつはあたしに好きといってほしいのだろう。実にめんどくさい。彼氏でもないのに一体なんだってんだ。


「ねぇ先輩っ」
「なに?」
「俺の事好きですか?」


遂に核心をついてきたかーめんどくさいなー高尾ちゃん自体良い子だからあんまり手放しなくないんだよなー…
にっこりと笑って「好きだよ」といってやれば高尾ちゃんも笑顔になり「本当ですか!?」と嬉々として叫んだ。喜んでもらえたら光栄だ。

高尾ちゃんはあたしより二つ下で見た目は彼の方が年上に見える。まぁどれだけでかくみえても所詮は年下だ。こういう時は使いがってがいい。

そしてそんな事を思いながら、紅茶を口にしようとペットボトルに触れたまさに時だった。

ガタンッと激しく椅子が倒れて何事かと思う前に高尾ちゃんは目の前でにっこりと笑っていた。机に片足をかけて身を乗り出しているしなにより後頭部に手を回されちゃあ逃げるに逃げれない。


「一応聞くわ、これは?」
「先輩が嘘つきだからいけないんです」


優しくしたら懐かれるなんてそんな簡単な事に俺は捕まりませんよ。なんてこれまた笑顔を崩さずに言う。逃げたくても逃げれないこの状態じゃあ全ての決め事は彼にかかっている。
しまった、完全に油断してた。


「…飼い犬に噛みつかれた気分だわ」
「酷いなぁ、先に飼い犬の尻尾を踏む方が悪いんですよ」
「あっそ、で、逃がしてくれないのかしら?」
「逃がす?なにいってるんですか」


本当にあっという間もなく唇を噛まれる。ちくりとした痛みがしてからぺろりと舐めてから離された。


「キスでもすると思ってましたか?」
「まあ思ってたけど、大分と痛い物を選んできたわね」
「そうですね。一番効果があるんで」
「で、あたしは唇から血を流しても逃げれないの?」
「いつまで逃げるなんて馬鹿みたいな事いってるんですか」


また唇をひっつけられるが今度は歯をがちりと当てられる。別にキスが下手なわけじゃなさそうだがとことん痛い物をセレクトしてくる。
まぁ、全てが高尾には筒抜けだったわけである。勘が鋭いにも程があるわ。


「…俺から逃げられると思わないでくださいよ、先輩」
「っは!優しくないわね!」


以上があたしが後輩に捕まった話である。