「笠松先輩好きです結婚前提に結婚しましょうぜ」
「断る」
「断るっス!!」
「お前は黙れ黄瀬ぇ…」
「しまってる…」


笠松先輩に告白する事二十八回、断られる事二十八回、黄瀬の首を締める事二十八回。連敗記録見事更新だ。


「笠松先輩なんで駄目なんですか幸せにしますからせめて目を見てくださいせめて距離を縮めてください」
「むむ無理だ!!それ以上近寄るなよ!!!!」
「まるで私達ロミオとジュリエットじゃないですかあああああ!!」
「いやいや田中っち、付き合ってないし成立してないっス!!」
「黄瀬、お前に今朝昼晩セロリしか食えない呪いをかけた」
「最低だ!!」


私は笠松先輩が好きだ。付き合いたい、結婚したい、一軒家に娘と息子の四人家族で住みたい。私は笠松先輩が大好きだ。
大好きなのだが笠松先輩は違う。笠松先輩は女の子恐怖症で写真の女の子とも目を合わせられないらしい。


「私はこんなに笠松先輩が好きなのに…」
「うっ、ぐ、そ、それは悪いと思ってる!!でも俺はバスケに集中したいし、なにより、じょ、女子苦手だし…」
「そんな誠実な所も好きですよ!!」
「だから俺は」
「叶わなくてもいいんですっ…」
「…田中…」
「笠松先輩と私は結ばれないんですよ…」


ううっと体育館に崩れるように座り込む。ちらりと笠松先輩をみればボールを持ちおろおろと忙しない様子だった。黄瀬はまた嘘泣きか、こんなんに騙されないでほしいっスと目が死んでいたが。


「…田中」
「すんすん…」
「田中…」
「一応いっておくと田中っちは嘘泣きっスよ!!」
「黄瀬ぇ!!嘘泣きとかいうんじゃねぇよ!!田中が可哀想だろ!!」
「そうだよ可哀想だろお前のピアス引きちぎるぞ」
「物騒な事いってるじゃないっスか!!」


黄瀬がぐわあああめんどくせえええと叫んだスキにすすすと笠松先輩の足元に近寄る。うおあっ!?と変な叫び声を上げた笠松先輩の足元に座り込んだまま鼻を啜る演技をして口を開いた。もう一推しだ。


「せめて先輩が一緒に買い物にいってくれてご飯とか一緒に食べてそんな事が何回もあると先輩を諦められるかもしれないのにな…」


ぐっ、と息を詰まらせた先輩が少し間を置き溜め息を吐いた。これはひっかかった。


「…それでお前は諦めがつくんだな?」
「っはい!!」


…ちょろい。このちょろさは誠実真面目なスポーツ少年笠松先輩のアイデンティティーといってもいいだろう。

それただの交際じゃねぇかと呟いた黄瀬を尻目に先輩に抱きついた。きっと今の現状を把握したら先輩は気絶するだろう。そんな所も可愛い所である。