美術部の貼り紙が貼られた扉をがらがらとひく、美術部の部室だからかとても広い。中に部員は三人しかいなかったが、床にも絵が沢山散らばっているのに狭さや散らかりを感じない。


「あの、寿さんは…」
「…ああ、緑間か、はじめまして、美術部部長の東雲繭です。寿がお世話になっています」


綺麗に九十度の礼をした部長東雲さんに違和感を覚える。誰かがその名をいっていたような…


「宮地から色々聞いてます。ほんと寿が迷惑をかけてるようで…」
「(ああ宮地さんか)いえ、あの、寿は…」
「第二です。第二美術準備室」
「…第二美術準備室…?」


聞いた事すらない。授業に必要な道具は全て美術室か準備室にある。まさか第二まであるとは知らなかった。


「ここ三階にあるから」
「そうですか、ありがとうございました」
「寿のアトリエみたいなもんだ、あそこは」


ひらひらと手を降られて階段を上がる。北校舎の三階なんて上がった事すらない。物置になったその階の一番奥に第二美術準備室という貼り紙があった。
全体的に古びた校舎だがここは特に酷い、暴れたら壊れてしまいそうだ。


「寿」


扉へ声をかけても返答は無い。鍵はかかっておらず、古びてはいたががらがらと扉は開いた。

そして、目を見開いて、息をのんだ。

色、ただただ美しい、色、


「寿」


天井には澄みきった青空から、美しい夕焼け、濃紺の星空へとかわっていく。地面には芝生を描いた絵が敷き詰められている。
部屋中に貼られた絵の中、息をして立つ彼女に声をかける事すら忘れ、別次元の様な空間をただただ見つめた。


「真ちゃん」


ぼんやりした意識の中、寿の声が響き部屋の中心を見る。
キャンバスに宛がわれた画用紙には大木が、その前に立つ寿が、まるで絵のように綺麗で少し怖くなった。

この部屋は絵の部屋。そして彼女の作品。



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