oh happy day...
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とても天気のいい、小春日和。
招待客控室であるホールには、これでもかというくらい大勢の人間が集まっている。みな、一様に笑顔だ。まあ、そうだな、こんな日くらいは浮かれていてもいいのかもしれない。
「お!ヤマケン、忙しいとこわりーなっ!」 「ふん。先週から散々付き合わせといて、いまさら。」
目の前ではバカどもが、あの頃と何も変わらない様子で騒いでいる。
「ハア!?お前、来年ウチ来んの!?」 「だってかっこいいじゃない。バキューンってっ。」 「ぎゃっはっは!オマエ子守り決定だなー。」 「マジかよ!?うえー、マジ勘弁してくれよ、、、」
隣を見れば、ハルが白いタキシード姿でなぜか小脇に鶏を抱えている。
「なあ、まさかそれ、会場まで連れてくわけ?」 「おおっ。こいつと雫と3人で入場だからな!」 「あっそ。」
こんな日でも、ハルはやはりバカだ。 手持ち無沙汰な腕を組むと、綺麗に磨かれた窓枠により掛かる。
「そんなことよりよー、スピーチどうなった?」 「は?誰に言ってんだ?非の打ち所のない、模範的なスピーチってやつを見せてやるよ。」 「ははっ、なんだそれ。気合入ってんなー。」 「オマエの親族からもいろいろ頼まれてるんでな。うちのオヤジ経由でも言われてんだよ。まったく、面倒ばっかかけんな。それより新婦側は夏目だろ?そっちの心配しろよ。」 「あー、、、そっちの方はもう無理だな!今更どうにもならん。オレも雫もあきらめている。」 「確かに。」 「そういや、こないだ渡したヤツは読んだ?」 「ああ、こないだの雑誌の?あの論文、桐谷教授と共同名義だけど書いたのハルだろ?」 「そうそう。どうだった?」 「専門分野外だからな、どうとも言えないけど。まあ、悪くない。」 「ふーん。」 「なんだよ。」 「いや?嬉しいな、と思ってよ!」 「あっそ。」
背後に揺れるレースのカーテンから、ユラユラと溢れる木漏れ日。
幸福の匂い。
こんな話がしたかったわけじゃないのに、もっと言いたいことが他にあったような気がするのに、と思いながらもオレの口は重く。ヘラヘラとした顔で辺りを満足気に見回すハルの横で、黙って腕を組んでいることしかできなかった。
「そういや、さ。」 「ん?」 「ありがとなー。」 「、、、ああ。」
何が?と聞きたいような気もするし、そんな無粋なことをしなくても全てわかってるような気もする。
まあ、なんにせよ。
「おめでと。」
小さく呟いたそれが、ハルに聞こえたのかどうかはわからない。
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