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「…! っあっあああ! …晢士ッせい、じっ…!」

晢士がまだ帰ってこない部屋で俺はもう1時間以上その名前を呼び続けている。衣服はすべて剥ぎ取られた状態で、後ろ手に手錠をかけられて、ベッドの脚にくくりつけられている。

後ろの穴ではちょうどイイところに当たるように入れられたローターがひっきりなしに振動を与えてきて俺はもう身体中どろどろになるまで感じていた。

さっきから何回も絶頂を迎えているけど、貞操帯をはめられて充血した陰茎はずっとほったらかしのままで、後ろの穴で空イキを繰り返すたびにとろとろと精液を吐き出し続ける。

延々と続く射精感と、そこを直接さわれないもどかしさがじわじわと俺を追いつめていく。このまま晢士が帰ってこなかったら俺は狂ってしまうかもしれない。

「晢士、せえ、じ、あっやああぁ! またイくっ…イクッ!」
「―――ただいまー。うわ、すごい臭い」

何度目かわからない絶頂を迎えた瞬間、ようやく晢士が帰ってきた。身体をビクビク震わす俺を見ても顔色ひとつ変えずに、代わりに俺の汗とか熱気とかで精液とかでよどんだ部屋の空気に顔をしかめる。

「チンコぱんぱんじゃん。痛くないのか、これって?」
「晢士…お願い、っチンコ触、って――、あっあ、ん!」
「でも一応出ることは出るんだね、うわ、辛そー」

恥も何もなく晢士におねだりするけど、まるで俺に意思なんてないみたいな口調で無邪気に笑う。なぜなら俺は玩具だから。ボタンを押すと声をあげて、ビクビクと動いて、精を吐き出すだけの玩具。だから俺が何度も何度も晢士の名前を呼ぶ声は届かないし、晢士も俺に話しかけたりなんかしない。

「っあ゛ 、せい、じ…おねが、いじって――」
「ほったらかしてたの1時間くらいだっけ? このままにしたらどうなるかな。…壊れるかも」
「―――!やっ、っそれだけは、やっ…だ、ぁ――っ!」

昔近所に住んでいたクソガキ、力の加減を知らずに玩具をすぐに壊してしまうヤツがいたけど、今の晢士はそいつとおんなじ目をしている。

俺はただの無機質で、壊れてしまったらすぐに捨てられて取り替えられてしまう。だから俺がこのまま放置されたときの事を考えて恐怖していても晢士にはひとつも関係ない。俺の正面にしゃがみこんで、無造作に乳首をつねったりチンコをつついたりする。
「――い゛っ! ――あ、お、願い、せいじ――っせいじ!」
「ローターの電池もそろそろ切れるかな?――あ、電話」

突然の着信に俺を弄くりまわす手が中断されて、晢士は立ち上がりながらポケットから携帯を取り出して俺に背を向けてしまう。

「何? え、今から? どうしよっかなー」
「――っん、くっ…ぁ、」

電話の相手に声を聞かれないように声を押さえながら、遊びに誘われている様子の晢士に懇願するような目を向けるけど、相変わらずあっちを向いたまま部屋をぶらぶら歩きまわって全く気づかれない。そうこうしているうちに後ろの穴に入ったままのローターが、俺にまた快感の波を送り込んでくる。

「ッッ! せ、い……っんあっいっちゃああっああああ!」
「あれ、またイッちゃった」
「んっ、ひ、――っああ゛っやぁあっああっ!」

我慢できずに声をあげた俺に驚いて、ようやく晢士が俺を見る。解放を求めていきり立つ陰茎に、晢士はつまらなそうな視線をよこす。

受話器を耳に当てたまま俺の前にしゃがみ込むと、片手で貞操帯をはずしにかかる。ようやく解放されると思ったのも束の間、片手では流石にやりにくいらしく、なかなか外せずにもたつく手元が俺をますますじらしていく。そんな俺にはお構いなしに、晢士はのん気に電話越しの相手と会話をしながらのろのろと作業を進める。

「あ、っあ、せいじ、はや…く」
「ん? いやこっちの話――あーうん、まあね」

ごとり。

ようやく貞操帯が外され、重い音を立ててフローリングの床に落ちる。同時に、飽和していた精液が、ぴゅ、と吐き出されてわずかな開放感にため息のようなあえぎ声が漏れた。

だけどそれも一瞬のことで。すでに何者にも邪魔されることのない状態になった身体が、あとは射精のきっかけをみっともなく求めて熱を上げていく。だらしなく口を開けて、また子供のようにねだる台詞を吐き出しかける。

「っん゛! っあ、あ゛…っ! っああッッ!?」

立ち上がった晢士が突然足を伸ばしてきて、ぐりぐりと竿を踏み潰すみたいに刺激された途端、目の前に火花が飛んだ。俺は望んでいた快感と唐突な痛みにもう声なんか押さえられない。

「あっやめ゛っぁあ゛、足…っ! やめて――!」
「そーそー、あ? 趣味悪いとか言うなよ」

器用に足の親指と人差し指で先っぽをくちゅくちゅとなぶられて、ようやく射精感がせり上がってきたところで、容赦なく根本と袋をかかとで踏みつけられた。俺は苦しいやら気持ちいいやらでこんなにも泣き叫んでいるのに、晢士はのんきに電話の相手と話を続ける。

「なに、声聞こえてんの? まあこんだけ大声で喚いてりゃ聞こえるか」
「やだっあっああっもっ、―――ッッッ! んああああっあ゛ぁ、ああ! っあ! ん゛っ」

吐精を押し留めるように圧迫していた踵をようやく離してもらった瞬間、俺は一気に達した。絶頂感に戦慄く間も晢士に足の裏全体で陰茎を扱かれてさらに背中をひきつらせながら俺は呼吸を忘れる。

「――か、は…っ、――っ! ―っッ、!」
「あはは、足コキでイッたー。ビクビクして超面白いよ。――…は、何言ってんの?」

完全に出しきってすっかり縮んだそれを、それでも晢士はねちねちと足を使って踏みつけたり握り込んだりする。後ろの穴に入ったローターはほとんど電池が切れかけていて中途半端な刺激を与えるから、俺は、あ、あ、って声を漏らしながらピクンピクン反応する。

辛くて苦しい快感に身を任せながら、それまで楽しそうに会話していた晢士が電話の相手に急にトーンを落としたのをどうしたんだろうとぼんやり考える。

「…だめだよ、お前には絶対やらねーし、指一本も触らせない」

そう言いながら足の愛撫をやめて俺の後始末をするためにかがみこんでくる。手錠をはずずために右手を俺の背中に伸ばしてきて、晢士の顔が近づいた。

「だって『これ』は俺だけのおもちゃ、だからね、」
「――――ッッ!」

右手が俺に触れて、耳元でその台詞を聞いた瞬間、もう残ってないはずだった精子がしぼりだされて、俺は幸福感に包まれながら気を失った。





(次:あとがき)
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