1.
『紙袋の中身を見てごらん』
僕は携帯電話の向こうから聞こえてくるおじさんの声に、言われるがまま従った。
そして紙袋の中を覗いて息を呑んだ。
ひらひらのレースが紙袋の中にいっぱい詰まっている。恐る恐る取り出すと、それはワンピースだった。
袖も、裾もなんだかひらひらしていて、肩の所には大きなリボンが乗っかっている。スカートのところは水玉模様の布がテカテカしていて、その上にレースのカーテンみたいな透け透けの生地が重なっている。
上も下も水色で、でも僕が持っている靴の水色とは全然違う、女の子の水色。手に持っているだけでふわふわと飛んでいってしまいそうだ。
何も言えないでいる僕に、携帯の向こうのおじさんが追い打ちをかける。
「さ、着てごらん」
「───え?」
これを、着るの? 今ここで?
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