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「陸上部の合宿、2週間」

ユキにそう告げられて、俺はすでに自分の中で決定事項となっていた夏休みの予定がガラガラと崩れていく音を聞いた。

2週間て長すぎだろ、とか、俺もとっとと帰宅部なんか退部するべきだった、とか、その間俺はどうすればいいわけ、とか、そんな恨みつらみをぶつける相手も見つからないうちに、ユキはバカでかいスポーツバックひとつで長野へと出発してしまった。

だからこの2週間、特にナニをする気も起きず、俺は無意味に夏休みを消費しながら、出張の夫の帰りを待つ主婦の気持ちをすっかり味わうこととなったのだった。

合宿の最終日。たぶん疲れてるから遊べるのは明日かなあ、と俺に告げた昨日のメールにもはや焦点を合わせる気にもならず、その向こうに見える天井の節目を眺めていた。

ユキと一緒に行きたかった祭りの終わりを告げる花火の音が遠くから響いてくる。

大きくため息をついて、寝転がっていたベットから上体を起こす。同時に来客を告げるチャイムの音。聞き流しながらなんとなく窓を開けると、玄関で母さんのはしゃいだような声が聞こえた。

母さんは楽しそうでいいなあ、と考えていると、ドアの閉まる音に続いて誰かが階段を上がってくる。

夕飯はもう食べたんだけど、とノックもなしに開いた部屋の扉に声をかけようとした瞬間、その向こうからユキが現れた。

「ナオ!」

俺の名前を呼ぶ眩しい笑顔に、遠くの花火の音が重なった。

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